日本総研ソリューションズのコンサルティングは人材育成効果も期待できるベストパートナー

スバルグループのエンジニアリング会社として自動車、航空機、環境機器などの設計や実験、CAE解析などの受託業務を行う富士テクノサービス(FTS)。製造業の開発競争が激化するなか、「頼りになるパートナー」としてのスペシャリスト集団を目指す同社は6年前、「CAE室」を開設して衝突解析や剛性解析の強化に着手した。さらに日本総研ソリューションズ(JRI-SOL)のコンサルティングを導入して解析能力の向上に取り組んでいる。その狙いや効果、今後の展開などについてCAE室の木下昌裕室長と山本裕之氏に聞いた。

CAE室を開設し、解析能力を高める

CAE室を開設された狙い、CAE室の果たす役割はどのようなものですか。

スバルグループ 富士テクノサービス株式会社 CAE室 室長 木下 昌裕氏

スバルグループ
富士テクノサービス株式会社
CAE室 室長
木下 昌裕 氏

木下室長:
製造業は企業間の開発競争がますます熾烈になり、激しい技術競争を展開しています。どの製造業でも、頼りになるパートナーとしてのアウトソーシングの存在が必要不可欠になっています。そうしたニーズに対応すべく、当社も単に顧客に技術支援をするだけでなく、社員一人ひとりがそれぞれの分野で専門性を身につけ、スペシャリストの自覚を持って対処できることを目指しています。それがCAE室開設の背景にあります。

富士テクノサービス(FTS)の主要な業務内容は、自動車の開発設計、衝突実験など研究実験をサポートするほか、CAEも重要な仕事です。自動車だけでなく航空宇宙機器、環境機器などFTSのエンジニアが関わる領域は広がる一方です。そこでCAEのエンジニアをCAE室に集約し中核となる三鷹、群馬をはじめとする事業所にエンジニアを配置しています。ちなみに三鷹事業所はエンジンやトランスミッションなどのパワーユニットの開発設計、群馬事業所はシャーシーやボディの開発設計をしています。

解析業務の現状と目下の課題をお聞かせください。

木下室長:
自動車のボディについて言えば、自動車メーカーから多くの要請がきます。一番多いのは衝突解析で、次に振動や剛性の解析。衝突に関しては従来、試作車を潰して実験をしていました。しかし試作車は生産車よりも非常にコストが高い。従って衝突実験だけで莫大な開発費がかかってしまいます。そこで自動車メーカーはかなりの段階までCAEでシミュレーションをしてから試作車で試験をしています。全部をCAEで設計して、最後に確認のために試作車で実験をするのが理想ですね。振動解析や剛性解析では、静粛性の高い、しっかりした造りの車の開発を目指しています。その他、車体周りの空気の流れをシミュレーションして空気抵抗を少なくする、安全で快適な操縦安定性なども解析で行うといったニーズもあります。

課題は、エキスパートとしていかにもっと高い技術を身につけるか。CAE室は出来てまだ6年目で、当初は解析に経験がない新人を集めてスタートしました。従ってCAE室の社員は平均年齢27歳と若い。5年以上を経過してやっと形ができてきました。人材育成という点では、CAE室は他の事業部以上に重要になります。

仕事に役立ち、教育効果も抜群

FTSは今回、日本総研ソリューションズ(JRI-SOL)のコンサルティングを導入されました。きっかけは何だったのでしょうか。

スバルグループ 富士テクノサービス株式会社 CAE室 山本 裕之氏

スバルグループ
富士テクノサービス株式会社
CAE室
山本 裕之氏

山本氏:
主要顧客先である自動車メーカーが、それまで使っていた衝突解析ソフトをLS-DYNAに切り替えました。それに合わせてFTSのCAE室でもLS-DYNAへの取り組みが始まったわけです。顧客先への技術支援を強化するにはLS-DYNAのより深い技術を理解し、ノウハウを身につける必要があります。そこで、それらをオンサイトでコンサルティングをしてもらえる日本総研ソリューションズにお願いした次第です。

JRI-SOLのコンサルティングに対して、どのような点を評価していますか。

山本氏:
まず、LS-DYNA特有の機能について知らないことが多くあり、それらを教えてもらったことが非常に役に立っています。つまり、マニュアルには載っているが実際に使ってみないと分からない機能がいくつもあるわけです。それらを教えてもらったことで解析ノウハウはかなり向上したと自負しています。次に、自動車メーカーのCAE部の受託業務としての衝突解析だけだと、どうしても使う機能が限られてきます。衝突解析に当たって、プレス成形の加工硬化や衝突時の部材のスプリングバック効果がどう影響するのか知りたくなる。そういうところをサポートしてもらっている点も有益です。

木下室長:
仕事はやればやるほど能力はつきます。そういう意味ではOJTは非常に有効なのですが、それだけだと仕事に関わらないテーマに取り組むチャンスにめぐり合わない場合もあります。その一例が先述したプレス成形をすることによって加工硬化などの影響を受けた部品の衝撃特性の解析です。仕事の中では出てきませんが、技術者の育成ということで、それをLS-DYNAで解析するにはどうすればよいかに取り組みました。ソフトの使い方やソフトで用いられている理論の修得が一番の命題ですが、JRI-Solに期待したのは解析結果を一緒に考えてもらうということでした。若いエンジニアはコンピューターは使いこなせても解析結果について「なぜ?」というところまで考えが及びません。それが期待どおりだったことは大きな収穫です。

衝突解析に加工硬化などの影響を考慮するのはなぜでしょう。

木下室長:
プレス加工をすると、板厚が薄くなったり、材料の加工硬化が起きて物性が変わるからです。従ってプレス加工をした部品とそうでない部品では衝突特性が違う。それがクルマのどの部分でどれくらい起きているかはまだはっきり分かっていない部分もあります。しかし、誰もやらなければ前進はありません。そこで、先行的に研究を進めることで、どんな仕事がきても解析の専門家として対応できる能力を持った人材を育成したい。成果を学会誌に論文投稿することも視野に入れて、研究に取り組んでいます。

山本氏:
いま検証しようとしているのは、フレームなど衝突性能上重要となる部材についてです。簡易的な検証に有効なツールとして紹介されたHYCRASHを使用して予備調査をしている段階ですが、今後は、より詳細な手法による検討を予定しています。

左)フルビークルモデルを用いた操縦安定性の解析結果 右)車両周りの流れの解析結果

左)フルビークルモデルを用いた操縦安定性の解析結果
右)車両周りの流れの解析結果

左)車両の前面衝突の解析結果 右)車両の側面衝突の解析結果

左)車両の前面衝突の解析結果
右)車両の側面衝突の解析結果

CAE室のエンジニアが解析結果をJRI-SOLと一緒に考えることによって、人材育成効果にもなると大きな期待を寄せておられるようですね。

CAE解析の作業風景

CAE解析の作業風景

木下室長:
はい。そしてそういう場が多ければ多いほど、技術者の力はついてきます。仕事の場合は納期がくれば解析作業は終了しますので、継続して考えるという余裕もありません。しかし、仕事とは離れたオフ・ザ・ジョブ・トレーニング(オフJT)で、何か先行的な研究をやってみようという場合は、思う存分、好きなだけできます。

CAE室の技術者たちには、まず何か一つでいいから人に負けないものを身につけてもらうところからスタートしていますが、その後はその人なりに努力して、より広い専門性を獲得して欲しいと思っています。そのためには豊富な経験を持つよきパートナーの存在が重要になってきます。

例えば大学の先生などに教わるとなるとややもすると一方通行的になるのを、JRI-SOLの場合は教えてくれる技術者も当社のCAE室のスタッフとそれほど年齢の開きがない。指導を受けているのですが、共同で何かを研究している感じに近いから、コミュニケーションも良好です。

そうした人材育成に対する取り組みは、FTSの社風ということでしょうか。

木下室長:
社風ですし、CAE室長としての私の考えでもあります。技術者は若いうちにどれだけ知識や技術を修得したかが、その後に効いてきます。とくに20代のうちですと、分からなくても砂が水を吸収するように知識を吸収できます。私の経験では、30代になると理屈が分かって初めて吸収できるようになり、40代になると20代には砂だったものが粘土になり水を弾いて、新しい知識はほとんど入らなくなってしまう(笑)。ですから、詰め込みでもいいから知識や技術の習得を若いうちに大いにやるべきだと思います。

それはもちろん会社にとってもよいことです。なぜなら、個人のレベルが上がれば組織としての知的資産が増え、企業としての付加価値になり、収益向上に繋がるわけですから。したがって、会社としても人材育成には大いに力を入れています。

より広い技術を磨き顧客の拡大へ

FTSはJRI-SOLのコンサルティングを導入され、成果も上がっているようです。今後のJRI-SOLとの付き合い方という点では、個人的な立場も含めてどのように考えていますか。

山本氏:
社の業務は自動車メーカーが中心ですから、どうしても知識や情報は限られてしまいがちです。その点、JRI-SOLと一緒に仕事をすることによって外部との繋がりが生まれます。JRI-SOLは豊富な解析経験を持っているし、海外のソリューションベンダーの動向などに関する情報も豊富です。JRI-SOLと付き合うことによって、技術者として広い視野を持つとともに現在対象としている分野以外にもビジネスチャンスを見出したいと考えています。

最後にJRI-SOLに対して望まれるサービスやソリューションがあれば聞かせてください。

山本氏:
解析技術の最新トレンドとしてこういう取り組みがなされている、こういう機能がある、といった情報や関連ノウハウを提供して欲しいと期待しています。

木下室長:
同感ですね。中央研究所を持たない我々のような中堅企業にとって、中央研究所のようなスタンスで最新の知見が得られる頼りがいのあるシンクタンクでいて欲しいと思います。

富士テクノサービス CAE室のメンバー

富士テクノサービス CAE室のメンバー

Customer Profile


スバルグループ 富士テクノサービス株式会社 CAE室 室長 木下 昌裕氏

スバルグループ
富士テクノサービス株式会社
CAE室 室長
木下 昌裕 氏
Masahiro Kinoshita


1969年横浜国立大学工学部造船科卒業、同年富士重工業入社。主に自動車の車体構造や操縦安定性の設計、解析業務を担当。2002年富士テクノサービス入社、CAE室室長として現在に至る。


スバルグループ
富士テクノサービス株式会社
CAE室
山本 裕之 氏
Hiroyuki Yamamoto


2003年群馬大学工学部機械システム工学科卒業、同年富士テクノサービス入社。CAE室に配属され、主に自動車の衝突解析業務を担当。

スバルグループ 富士テクノサービス株式会社 CAE室 山本 裕之氏

企業情報

FTS

名称

富士テクノサービス株式会社

概要

1985年3月、富士重工業の全額出資で設立されたエンジニアリング会社。従業員514人、年間売上約36億円(2005年度)。富士重工を主要顧客に自動車、航空機、環境機器などの設計、実験、CAE解析などの受託業務を行う。三鷹事業所(東京都三鷹市)でパワーユニット(エンジン・トランスミッション)、群馬事業所(群馬県太田市)ではシャーシー・ボディに関する開発設計を行い、スバル車の生産に深く関わっている。そのほか宇都宮事業所(栃木県宇都宮市)で航空宇宙機や環境機器の開発、埼玉事業所(埼玉県北本市)では“ロビンエンジン”“スバル発電機”といった汎用エンジンの開発にも取り組む。

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連絡先

TEL:0276-26-3714 FAX:0276-26-3524

(2007年12月取材)


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