国内16社の経理会計システムを「Biz∫」で再構築
グローバル化展開を睨んだ国内ポテンシャルの強化に成功

業務用厨房機器の製造・販売会社であるホシザキ電機(愛知県豊明市)は、グループ経理会計システムをNTTデータグループが提供する「Biz∫会計」を基軸に刷新し、2013年12月期決算から新システムを稼働させました。親会社および国内販売会社15社のシステム連携を改善するだけでなく業務フローの標準化も実現し、将来的にはIFRSへの対応や内部統制の強固な基盤を構築するのが狙いでした。JSOLはBiz∫事業推進のパートナーであると同時にシステムインテグレーターとして、ホシザキ電機のプロジェクトと次なる成長への基盤整備を支えました。

業務用厨房機器のリーディングカンパニーの強さから出た課題

ホシザキ電機は、業務用厨房機器分野のリーディングカンパニーです。製氷機、冷蔵庫、食器洗浄機、生ビールディスペンサなど多くの国内トップシェア製品を擁し、海外でのM&Aにも積極的で、世界的に見ても製氷機でトップシェアを握るなど、グローバルリーダーへの成長を続けています。

ホシザキ電機の国内における成長を支えてきたのがエンドユーザーへの直接販売(直販)と、充実したサービス体制でした。当社の創業は1947年2月で、1957年には日本初のジュース自動販売機を開発し、製造販売を開始しました。自販機上部にボウル状の球体があり、ここにジュースが噴水のように噴き出している形の自販機で、年配の方であれば懐かしい記憶をお持ちの方も多いでしょう。

1965年には現在の当社の主力商品である全自動製氷機を日本で初めて開発し、製造販売を開始しました。当時はいわゆる「街の氷屋さん」が氷の供給を担っていた時代で、製氷機という機械自体が世間一般的なものではありませんでした。認知度の低い製氷機の販売に協力してくれる代理店は当時ほとんどなく、自分達の力で営業拠点やサービス体制を整備し、製氷機の販路を開拓していく必要がありました。この販路開拓努力の積み重ねが先述の直販と自社による商品の保守・修理といったメンテンナンス体制を創りあげました。そして、これが後の成長の原動力になっていきます。

現在、国内にホシザキ東京やホシザキ東海などの15の販売会社を持ち、その下に436カ所の営業拠点を置き、約2,900人の営業人員、約2,400人のサービス人員がエンドユーザーにきめ細かく対応するだけでなく、市場の徹底した深掘りにも力を注いでいます。

しかし、経理会計システムに限っていえば、皮肉にもこの15販売会社体制がシステムの効率化と業務改善の大きな課題になっていました。旧来の経理会計システムは、2006年から1年ほどの期間で構築されたものですが、「使用する経理会計システムや勘定科目体系などは共通化することができたものの、個々の販売会社に特有な業務処理の統合にまでは踏み込めず、結果としてシステム間連携に乏しく、各社での業務フローが複雑化するという重大な課題を抱えていました」と小林靖浩取締役(経理・総務担当)は説明します。

ホシザキ電機株式会社 取締役 小林 靖浩 氏

ホシザキ電機株式会社
取締役 経理部・総務部担当
兼 経理部部長
小林 靖浩 氏

小林取締役が「相当複雑」と自嘲するほどで、例えば経理会計システムの上流に位置する販売システム(債権管理システム)上で債権情報を登録し、会計システム上でも債権伝票を登録するといった二重作業を実施していたり、債務の内容によって支払を行うシステムが異なっていたり、社員の立替経費精算の処理方法についても、既にキャッシュレスを実現している会社もあれば、他方で現金を封筒に詰めての手渡しを続けている会社もあるなど、経費精算の方法について各社での処理がバラバラの状態となっていました。

経理会計システム及び周辺の関連システムとの連携が乏しいこと、会社間の業務フローが異なり複雑であることが、業務負荷として経理部門に集約される形になり、社内では経理部門が最も残業が多い部門の1つになっていました。

確かに旧来の経理会計システム導入当時は、販売や製造といった上流システムからデータを連携していなくても、属人的な運用で賄うことができていたと思います。しかしながら、ここ最近の業績伸長に伴って精度の高い数値をこれまで以上に短期間で作成する必要性から管理業務工数も増加してきており、旧来のシステムや属人的な運用での対応では困難となってきていました。当然、属人的な処理部分や各社個別運用では、時間・処理の面から非効率が目立つようになります。その非効率をどうするかを考えた結果、今回のシステム構築に踏み切ることとなりました。

日本的商慣習に適合しながらも優れた標準化をもたらす
Biz∫の導入を決断

ホシザキ電機株式会社 経理部 企画課 安田 貴志 氏

ホシザキ電機株式会社
経理部 企画課
安田 貴志 氏

経理会計システムの刷新を決断したホシザキ電機では、まず「グループ会社共通経理システム構築方針」を決め、開発テーマを具体化していきます。

「方針」では、(1)グループ全体での決算早期化・業務効率化を支援する「使い勝手のよい会計システム」を構築する、(2)グループ全体で資源の有効活用を図り、効率的なシステム構築ならびにシステム運用を実現する、(3)事業環境の変化や法規制等の変更に柔軟に対応できる会計システム基盤を構築する、の3つが示されます。

次に、旧来の経理会計システム及びその周辺システムとの連携において抱えている課題について、「本社と販売会社の経理部門が共同して約200項目にのぼる『会計システム改修に関する要望事項』を作成し、これをシステムインテグレーター5社に提示して、同項目の改善が実現できるシステム提案を求めました」(ホシザキ:安田担当)。

その結果、導入パートナーにJSOL、導入ソリューションにBiz∫が決まります。小林取締役は、「標準機能とのマッチングやコストなどでJSOLとBiz∫は断トツの評価でした。Biz∫は、ユーザー中心型のERPで、ワークフローと業務アプリケーションが一体化しており、国産パッケージならではの日本の商慣習への高い業務適合率があります。またJSOLは、当社の予算管理システムを構築してくれておりましたが、その強力なプロジェクト推進力や自社の一員として取り組んでくれる姿勢には、私たちも強い信頼感を持っていました」と語ります。

旧来のシステム配置としては、経理会計システムは「Oracle EBS」、ワークフローシステムは「Exchange USE」、その他システムとして「オフコン(支払・前払按分システム)」の主に3つで構成されていましたが、新システムでは、ワークフローと一体型の経理会計システムとしてBiz∫に一本化しています。具体的には、Web統合基盤ソリューションで導入社数が3,300社を超える「intra-mart」、会計ソリューションの「Biz∫会計」、データベース検索ツールの「DataStudio」で構成されています。

「旧来のシステムでは、Oracle EBSやExchange USEにさまざまなアドオン機能を追加することで課題を解決していました。また、オフコンについても長い年月をかけて当社の業務処理に適合させるように改修を重ねており、そういった旧来システムでの処理に慣れたスタッフからは『旧来システムと同じようなものを作って欲しい』という要望もありました。

しかしながら、旧来システムと同様の機能をすべて備えるということは、新システムのアドオン機能が増えることを意味しており、これは保守料等のランニングコストの上昇であったり、将来のシステムバージョンアップ時のコスト増につながります。このため、新システムでは可能な限りアドオン比率を下げ、Biz∫会計が持つ標準的な機能で業務処理がうまくできるように業務フローの見直しまで踏み込んでいきたいと考えました。プロジェクトの責任者としては、それらのバランスをどのように取るかが重要な判断ポイントであり、JSOLの力を最も頼りにしたいところでした」(小林取締役)。

さまざまな課題にシンプルかつ強力な解決策を示した新システム

システム刷新に当たっての具体的な業務改善テーマは、主要なもので6つありました。つまり、(1)債権の一元管理、(2)債務の一元管理、(3)経費精算のキャッシュレス化、(4)経費申請一括承認機能による効率化、(5)WF(ワークフロー)電子承認機能による内部統制強化、(6)帳票出力、データ検索の効率化、です。

これらは、まさにグループ会計システムの構築における重要なテーマばかりで、Biz∫は日本的な商慣習に適合したワークフロー基盤(intra-mart)を具備しつつ、充実した標準機能と高い連携性、グループ経営管理サポート、Web基盤による情報活用などのソリューションを提供します。

システム全体図

イメージ図

まず、債権の一元管理では、旧システムでは販売システムと会計システムに別個に二重入力を余儀なくされていましたが、新システムではすべてBiz∫への自動連携へと変わりました。債務の一元管理では、旧システムでは販売会社の商品購買(買掛債務)についてはOracle EBSへの自動連携ができていたものの、販売会社の未払債務及びホシザキ電機の原材料購買(買掛債務)、設備購買・経費購買(未払債務)はオフコンの支払システムを介してOracle EBSに自動連携していました。Biz∫導入後は、上流にある各債務管理システムで計上した債務情報を、Biz∫に自動連携するようにシステムフローを変更しています。

約7,800人にものぼる国内グループ社員の経費精算のキャッシュレス化も重要な課題でした。「ホシザキ電機はこれまで現金出納を実施していましたが、販売会社の中には既にキャッシュレスを実施している会社もあれば、販売会社の本社だけがキャッシュレスを実施しているものの、各営業拠点は現金出納を実施しているなど経費精算の処理がバラバラの状態でした」(小林取締役)。その状態を解消するために、すべてをBiz∫内の経費申請と支払承認・口座振込というシンプルなシステムに統一しました。

また経費申請の一括承認機能による効率化は、バーコードが付されている台紙をベースに行います。本社の経理部門ではまず、紙ベースの「経費申請書」と「領収書」をチェック。その後、台紙のバーコードを読み取り経理承認を行います。もちろんこれらはすべてBiz∫の電子承認データとして記録されます。

WF電子承認機能による内部統制強化では、すべての伝票処理が、現場入力、上長承認、経理承認、仕訳データとしての計上というワークフローに沿って進められ、すべての伝票が計上前に「システム上での承認者の精査」を受けるようになっています。つまり、内部統制を強化する一気通貫の申請・承認体制が構築されたのです。

アドオン装備の明確な判断基準を示し、プロジェクトの投資効果を高める

Biz∫を軸とするグループ共通経理会計システム構築で、最大の課題となったのが「アドオン問題」でした。

企業各社には、その企業ならではの仕事の進め方や処理方法があり、従来のシステム構築でもアドオンは、独自の機能として多く搭載されてきました。しかし、アドオンが増えれば増えるほどシステムの複雑性が増したり、連携性が悪くなるという課題もあります。

Biz∫会計は、ERPビジネスで培った充実の標準機能により高い業務適合率を誇っています。数千億円規模の売上高の企業において、90%を超える適合率の事例も存在します。

このためパッケージが標準機能として持つ業務プロセスを通して標準的な業務を確立する一方で、アドオンとなる機能に関しては標準機能とのメリハリを付けた要件定義をめざしています。言わば、「割り切り(標準化)」と「こだわり(差別化)」のバランスの決断が重要になり、小林取締役の決断ポイントも、このバランスにありました。

株式会社JSOL 製造ビジネス事業部 開発第五グループ チームマネジャー 住田 貴敏

株式会社JSOL
製造ビジネス事業部
開発第五グループ
チームマネジャー
住田 貴敏

JSOL側のプロジェクト・マネジャー(PM)に就任した住田貴敏(製造ビジネス事業部ITプロフェッショナル)は、プロジェクトとしての『アドオン追加・変更要件に関する対応方針』を示し、ホシザキ電機側とJSOL側の認識を共有化するようにしました。原則的にはアドオンは極力追加せず、必要と認められた場合も、スケジュール面でのプロジェクトリスクを最小限に抑えるため、システム稼働当初に必須の機能であるか、稼働後の対応とできないかを十分に見極めて判断すべきである。さらに、「なんとなく使いやすいから」といった判断ではなく、効果を明確に数値化する努力を重ね、それが明確でない場合は、さらに時間をかけて検証すべきだと訴えたのです。

「これは、私たちがアドオン機能の開発ができない、ということではありません。開発のためのコスト、スケジュール、保守性、バージョンアップ時の影響を睨み、さらに使い方の工夫の提案などを通して無闇にアドオンを増やすのは得策ではない、とご説明しました」(住田)。

ホシザキ電機の小林取締役も、「現場で働く人たちがアドオンを求める気持ちはよく理解できるのです。しかし、何もかもをOKとする訳にもいきません。住田さんをはじめとするJSOLの開発スタッフは、そこに改善効果の数値ベースでの把握など、明確な判断基準を提示してくれました。業務やコストへの影響などを総合的な観点からプロジェクトレベルで判断する、というアプローチがなされ、私自身の判断に道筋をつけてくれました」と語ります。

結果的に新経理・会計システムのアドオン率は18%で、「目標内に抑えることができました。アドオンを活用して、どのような業務フローを実現するかについては、さまざまな議論がありましたが、経理は管理部門であることもあり、業務の標準化に対する拒絶反応はそれほど多くなく、一挙に改善を図れたと考えています」(小林取締役)。

成功ポイントは、刷新意義の共有と緻密なプロジェクトマネジメント

新システムの開発は、2012年4月に始まり、2013年8月にまず、ホシザキ電機と国内販売4社の計5社が先行稼働を開始。同年11月から、残りの国内販社11社でもシステムが稼働を始めました。

導入スケジュール

イメージ図

システムの開発では、ホシザキ電機の他に、国内販売会社4社が要件定義段階から関わり、システムの全体像を詰めてきました。JSOL側は、プロジェクト期間中に延べ約80人の開発スタッフを投入したほか、Biz∫シリーズの供給元であるNTTDATAグループも支援を続けました。

2013年11月稼働の11の販売会社については、「販売会社展開の主担当を中心に、先行稼働で浮かび上がった問題点などを整理した上で研修プログラムを練り、新システム導入前後でやるべきことをまとめた『To-Doリスト』も策定するなどのサポート体制を整えることに注力しました」(安田担当)。

この間、JSOLは、独自の知見を蓄積して確立してきた「SAP導入論(J-Model)」や「Biz∫導入方法論」などを適用し、課題発生時にも迅速な対応を進め、プロジェクトを完遂しました。

Biz∫を軸とする経理会計システムの刷新で、ホシザキ電機グループは、業務フローが標準化された国内の会計管理基盤が整いました。将来的には、管理部門を中心に重複業務の集約化(シェアード化)を推進するめども立ったと言います。

ホシザキ電機は、2013年以降、アメリカの食器洗浄機メーカー・ジャクソン社、インドの業務用冷蔵庫メーカー・ウェスタン社、ブラジルのフードサービス機器メーカー・マコム社を買収するなどグローバル展開を強めています。まだ海外子会社とシステムを一本化していく時期にはなっていませんが、「新システムで、グローバル化を支える国内のポテンシャルを確保する体制が整ったことの意味は大きい」と小林取締役は語ります。

今回の新システム開発では、いくつかの成功ポイントがありました。

プロジェクトの目的を明確にし、プロジェクトメンバー全員のベクトルを一致させられたこと。ホシザキ電機・販売会社・JSOLが一体となってプロジェクトを推進できたこと。マスタ整備や教育展開などで、ホシザキ電機側に発生するタスクに対するスケジュールや体制面での計画的な取り組みができたこと。また先にも紹介したような、アドオンに絡む課題に対して、業務やコストへの影響などを総合的な観点からプロジェクトレベルで判断するアプローチがなされたこと等々。

「JSOLは、プロジェクトに割ける当社の資源などを考慮し、当社側の業務分担が最低限になる体制を実現してくれ、販売会社での稼働に当たっても教育・研修プログラムの実施で現場と一緒に汗をかいてくれました。そのトータルなプロジェクトマネジメント力があればこその成功であったと思います」と小林取締役は語ります。

JSOLのPMであった住田は、「プロジェクトを必ず成功させるという思いを、ホシザキ電機様とJSOLのスタッフが共有でき、高いモチベーションを維持しながら開発を進められたことが成功ポイントであったと考えています。今後は、メンテナンスなどを通じてホシザキ電機様のさらなる事業成長に貢献できるシステムとすべくご支援していきたいと思っています」と語ります。

日本のグループ経営を変え、支える「Biz∫」。その主要なパートナーであり、システムインテグレーターであるJSOLは、お客様の成長基盤の構築に新たな実績を残すことができました。

企業情報

会社名

ホシザキ電機株式会社
(HOSHIZAKI ELECTRIC CO.,LTD.)

本社所在地

〒470-1194 愛知県豊明市栄町南館3-16

設立

昭和22(1947)年2月

資本金

7,903百万円

従業員数

(連結)11,329名 (単体)1,198名

事業内容

全自動製氷機、業務用冷凍冷蔵庫、業務用食器洗浄機をはじめとする
各種フードサービス機器の研究開発および製造販売

ホームページ

(2014年10月現在)


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