複雑な出版事業の経理効率化と運用コスト削減を早期実現
Biz∫会計とAWSRの活用でクラウド型会計システムを構築

総合出版の株式会社徳間書店は、JSOLの支援のもとERPパッケージ「Biz∫(インテグラル)会計」とアマゾンが提供するクラウドサービス「AWS®」を活用したクラウド型の会計システム基盤を構築し、本格稼働を開始しました。Biz∫会計が備える日本の商慣習を熟知した各種の機能だけでなく、周辺システムとの高い連携性能、クラウド型サービスの利用によるセキュリティーの確保と運用コストの削減など、システム刷新効果の早期実現がもたらされました。

出版事業を取り巻く環境変化から求められた
各種の業務管理システムの連携力向上

徳間書店は、『週刊アサヒ芸能』『GoodsPress』など10数種の雑誌の他、文芸書、文庫本、コミックスなど数多くの書籍を刊行。『となりのトトロ』『風の谷のナウシカ』などのアニメーション映画で有名な(株)スタジオジブリは、徳間書店の事業部が分離・独立した会社であることでも知られています。

出版業では、経理にかかわるさまざまなシステムを必要とします。製作原価管理、印税・原稿料支払い管理、経費管理、宣伝・広告管理、電子書籍管理、受注製作管理、著作権管理、映像権利管理、物品販売管理、図書・雑誌の販売管理等々。

出版業は現在、電子書籍の登場などにより大きな節目にあり、出版事業そのものの高度管理が必要になっています。かつては担当者の"3K(経験・勘・根性)"で決められてきた刊行計画も、市場や世相の変化を踏まえた採算管理を徹底したものに変わり、その傾向はさらに強まっています。

株式会社徳間書店 取締役 経営企画室 室長 萩生田 誠 氏

株式会社徳間書店 取締役 経営企画室 室長 萩生田 誠 氏

今回、会計システム更新のプロジェクトリーダーを務めた萩生田誠・徳間書店取締役経営企画室長は、「そうした流れが強まるなかで、会計システム基盤につながる各種の管理システムとの連携をベースにした分析や予測が重要になり、同時にシステムに対する要求も高まってきています。編集の現場でも、採算重視を実現できるデータを求めており、早期の対応が必要だと感じていました」と語ります。

現状業務の課題としては、債権・債務の管理、セグメント分析、経費申請内容の精査など手作業で煩雑になっている業務領域について効率化が求められ、また月次決算の確定が遅く翌月になっていることが取り上げられていました。またシステム面の課題としては、旧システムを導入して以来10年を過ぎて稼働環境が古くなり、サーバーOSのサポート期限にも懸念があったこと、サーバーを自社で運用管理しているが災害時の事業継続性への対応も必要となっていることなどがありました。

「旧来のシステムでも、一部の管理システムからデータを取り込んで会計システムで分析したりしていたのですが、もっとスピードを上げたり、幅広く細かな分析を可能にしたいと考えていました。また、社員数(約110人)以上のライターやデザイナーが仕事をしており、その経費精算の効率向上も課題となっていました」

JSOLは、従来から会計系と販売系のシステムをサポートしていましたが、萩生田室長の問題意識に応えて提案したのが「Biz∫会計」と、「AWS(Amazon Web Services)®」によるクラウド環境上での会計系システムの構築でした。

短期プロジェクトで初期効果の早期実現をもたらすBiz∫
JSOLクラウド導入モデルの活用ポイント

Biz∫会計は、日本の商慣習に標準対応し、高い業務適合性とユーザビリティーを特長とする国産ERPパッケージです。パッケージの標準機能を最大限に活用することでノンカスタマイズでの早期導入が可能です。さらに、アマゾンのWebサービス(クラウドコンピューティングサービス)AWS®を利用した「JSOLクラウド導入モデル」を活用することで導入と運用コストを大幅に低減できます。

徳間書店の更新プロジェクトでは、Biz∫の他にも従来の会計システムのバージョンアップ版など複数のパッケージが検討されました。萩生田室長は、「JSOLが開催したBiz∫のセミナーに参加させていただいたいのですが、サービス内容は魅力的なのですが、先進的で十分に使いこなせるだろうかと感じました。それでも、Biz∫が会計パッケージとして備えている能力は確かに魅力的で、当社の業務との適合度が高いと感じました。例えば一般会計における仮払い等の残高管理や任意のグループ単位での帳票出力、取引に応じた請求書発行のコントロール、源泉税にかかわる支払調書作成の省力化などは、すぐにでも使いたいと思いました」と語ります。

最終的にBiz∫の導入を決断したのには、3つのポイントがありました。つまり、(1)JSOLクラウド環境導入モデルによる旧システムから新システムへの移行が短期間で可能であること、(2)周辺の各種の管理システムとの連携性能が高く、しかもシステムとして煩雑にならないこと、(3)AWS®の利用により「サーバーを自社ビルから出したい」という希望が実現すること、でした。

「出版社というのは不夜城のようなもので、常に仕事が動き、それに併せて会計も動きます。そのため旧システムからの移行は、短期で済ませるだけでなく、現場の日常業務への負荷をできるだけ小さくしなければなりません。結果的には、債権・債務領域が1日、その他については1日と合計2日間で移行することができました」

サーバーを社外に出すことには、BCP(事業継続計画)の観点から関心が高まる一方で、セキュリティー保持への不安から二の足を踏むケースも多く見られます。「当社でも、クラウドにすることには漠然とした不安はありました」と萩生田室長は語ります。

「しかしJSOLから、セキュリティー対策についての仕組みも含めた丹念な説明がなされ、役員会なども納得しました。他人にアクセスされる危険性では、自社ビルに置いても同じです。安全な場所にあり、運用コストを低減でき、BCPを実現できるクラウド型のメリットの方が大きいと判断しました」

AWS®の場合、料金は利用状況に応じた従量課金のためにサーバーを自社で保有するよりも運用コストは低減されます。

プロジェクトは、2013年12月から3カ月間の要件定義、翌14年3月からの3カ月間の設計・開発・テスト、さらに6月以降の移行・研修・稼働後フォローという短期間で実現しました。新会計システムはワークフロー市場分野で国内No.1シェアを持つWeb開発基盤「intra-mart」を統合基盤(Biz∫基盤)として、そこにBiz∫会計が構築されています。

また、販売系システムなど周辺システムとの連携については、「会計連携モジュール」を有効活用し、効率的なインターフェース開発が実現しました。

非常に短期間にプロジェクトを完遂できた背景には、Biz∫のクラウド環境への導入ノウハウをサービス化した「JSOLクラウド環境導入モデル」の活用があります。JSOLクラウド環境導入モデルは、プロジェクトを推進するために必要な決定事項を一覧化している他、業務ユーザーの視点での利用方法を紹介業務イメージの説明書を用意。さらに必要なマスターや残高データを作成する入力シートなどをあらかじめ準備することで、プロジェクトを効率的に推進し、プロジェクト成果を早期に得られるようにしています。

「私たちサイドで何をしていかなければならないのかが明確で、プロジェクトがホップ・ステップ・ジャンプしていくのを実感できましたね」

システム全体イメージ図

システム全体イメージ図

出版事業に役立つデータ解析手法の検討へ

移行・研修などを経て2014年10月に本格稼働が始まって約半年。萩生田室長は、「"日本の商慣習を熟知したERP"というBiz∫会計のキャッチフレーズを、心地よく実感しています」と語ります。

画面デザインやインターフェースが、初めて使うにもかかわらずまったく違和感がなく、さくさくと入力していける。伝票入力の時間は、「実感として大幅に早くなっており、システム側のレスポンスも極めて早く、想像以上のものでした。またマスターの設定で、支払い条件や回収条件を細かく設定できるのも優れた機能で、結果的に非常に使いやすい、ユーザーフレンドリーなシステムになっています」(萩生田室長)。

新会計システムの構築では、経理業務の効率化や決算の早期化を支援する新しい情報基盤としての新会計システムとするだけでなく、管理会計に必要なメッシュを会計システムに連携させ、経理データの高度な活用を支援する「自由に検索・分析可能なデータウェアハウスの構築」も重要なテーマになっていました。

本格稼働を受けて萩生田室長を中心に検討が始まっているのが、「出版に役立つデータ解析手法の検討」です。一口に採算管理と言っても雑誌と書籍では管理ポイントは微妙に異なっています。取材費や稿画料が多く発生して、より大きな視点から採算を見る必要がある雑誌に対して、書籍では制作料(紙代、印刷代等)と販売予測をベースにした採算管理がポイントになります。

「編集の現場に精緻なデータを提供したり、逆に現場の求めに応じて分析したりできるように基本的な分析項目の検討を4月から始める予定です。Biz∫は各種のデータの取り込みが容易なので、全社員が管理会計の意識を持って仕事に取り組むための土台はできました」

今後、さらなる経営管理の高度化に向けたテーマとして、販売系システムなどの周辺システムの見直しについての将来構想も検討遡上に上がっています。

「JSOLさんは今回、会計システムという基幹部分の更新をリードしてくれ、さらに周辺の管理システムも熟知してくれています。そうした経験をベースに、全体最適の実現に向けたご協力を頂ければ、と期待しています」

「使う人にやさしい導入と運用」に示されるJSOLの取り組み

徳間書店でのBiz∫会計システムの構築では、「使う人にやさしい導入と運用」という努力もなされていました。

萩生田室長は、「経理財務の担当者は、従来のシステムに通暁したベテラン社員。システムを刷新することへの抵抗感はあったと思います。まして高度なデータ分析ができるように、という方針には経験も乏しいためにさらに不安が募っていました」と語ります。

そのため萩生田室長は、JSOL側のプロジェクトスタッフには、「新しいシステムについてはなるべく全体像を分かりやすく説明してもらい、その理解を前提として業務フローの変化や操作方法について説明してもらうようお願いしました」

JSOL側のプロジェクトリーダーである濱本由佳里(製造ビジネス事業部開発第5開発グループ)は、「新しい業務スタイルを、どのように回していくかを常に一緒に考えながら開発を進めてきました」と言います。

「例えば要件定義にしても、単純にサンプルをお示しして説明するだけでは雲をつかむような話になってしまいます。そのため業務スタイルの流れの変化を現在の姿と比較した絵にしてみたり、運用イメージをつかみやすいような質問の仕方を考えました。JSOLが用意した操作マニュアルに対して徳間書店の担当者の方が自分の言葉で追記できるようなマニュアル作成の手法も使いました。自身の言葉、使い慣れた会社内での表現手法などを取り込むことで、システムがグンと身近なものになると考えたのです」

萩生田室長は、事あるごとに「へぇ、こんなこともできるのか。だとしたら、こんなことはできないのかな」などと、面白がるように担当者に話しかけたと言います。

その上で、「システムそのものを導入することと、担当者が業務効率化や新たな課題の発掘などの経営意識を持ってシステムを活用していくかは、まったく別の問題です。その点JSOLさんは、JSOLクラウド導入モデルをツールとして社員の立場で、日常のユーザー業務をきっちりと分析して課題を洗い出し、それを柔軟に変えていけるようにサポートしてくれました。こうしたサポートがあれば、Biz∫の導入は実にスムーズで、システムの刷新効果を早く得られると思います」とアドバイスします。

Biz∫会計の商慣習や業務フローに対する柔軟な対応力と、JSOLのノウハウを集約したJSOLクラウド環境導入モデルは、ユーザーが自立的にシステムを活用していこうとするメリットも生み出しているのです。

萩生田氏とJSOLメンバー

前列、株式会社徳間書店 萩生田氏
後列左から、JSOL 住田チームマネージャー、
濱本、遠藤グループマネージャー

企業情報

徳間書店

会社名

株式会社 徳間書店

本社所在地

〒105-8055 東京都港区芝大門2丁目2番1号

創業

1954年3月19日

資本金

100,000,000円

従業員数

117名(2014年4月1日現在)

ホームページ

(2015年03月現在)


  • Amazon Web Services、"Powered by Amazon Web Services"ロゴ、[および本資料で使用されるその他のAWS商標]は、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。

  • 本ページ上に記載または参照される製品、サービスの名称等は、それぞれ所有者の商標または登録商標です。

  • 当コンテンツは掲載した時点の情報であり、閲覧される時点では変更されている可能性があります。また、当社は明示的または暗示的を問わず、本コンテンツにいかなる保証も与えるものではありません。

リーフレットダウンロード