(2007年02月現在)

保険は「システムこそが商品」

金融事業本部 金融システム開発部 開発第三グループ
プロジェクトマネージャー/システムコンサルト
岩川 健二

「金融商品という言葉はありますが、実は金融は商品に形がないビジネス。保険も、契約者から保険料を預かり、必要なときに保険金を支払うというサービスで、そのサービスを今、支えているのは高度なITを駆使したシステムです。保険はシステムこそが商品と言っていい」そう語るのは、日本総研ソリューションズの金融システム開発部で保険業界を担当する岩川健二だ。

確かに金融は、今で言う「IT化」が早くから進んできた業界だった。銀行、証券、保険ともに、業務において求められるのは正確さと速さ。そして何より業務の量、ひいては扱うデータの量が膨大だ。製造業などと比べて、コンピューター化やネットワーク化のメリットが生まれやすかったことは間違いない。
だが一方で、IT化で先行したことは、日本の金融ビジネスにマイナス面ももたらした。大規模なシステムが導入され、それが日々の業務に欠かせない基盤となっているため、「そのシステムに手を入れることが難しくなってしまった」。そのため、保険会社が合併しても、システムの全面統合は行なわず、フロントレベルでの対応に留めるほどだ。

金融業務に大きな変化がなく、また、ITの進歩が現在ほど速くない時代なら、それでも深刻な問題が起きることはなかった。しかし、業務が激変し、ITが日進月歩ならぬ“秒進分歩”で進化するようになると、保険業界ではIT化の先行者ならではのデメリットも目立ってきた。
日本の金融分野で長らく中心的な存在となってきたのは、メインフレームを核としたホスト依存型の基幹系システムだ。この“古いシステム”のオープン化対応は、保険ITの世界で保険各社やSIer(システム・インテグレーター)のテーマとなっている。だが、もうひとつ、「マーケティングや内部統制など、保険各社さんが新たに力を入れなくてはいけない分野をサポートするシステム」の整備もまた、火急の課題として浮上している。

その背景にあるのは、保険の変化だ。生命保険と損害保険、いずれの分野においても日本の保険ビジネスはこの十数年、大きく変わり続けてきた。
超低金利と資産デフレによる運用難や財務体質の悪化。個人所得の低迷による新規契約と保険料収入の伸び悩み。保険大国と呼ばれた日本の保険業界で、企業の淘汰を含む再編さえ起きた。
こうした流れに、金融分野での規制緩和=日本版ビッグバンも拍車をかけた。保険業界も銀行や証券と同様、参入障壁や業際の壁が劇的に低くなったのだ。護送船団方式を前提とした横並びは過去のものになり、競争こそが日本の保険業界の基本ルールとなった。

激変期にある生保・損保を緻密にフォロー

岩川 健二

一方で、岩川も言うとおり、「ビジネスにおいては危機はチャンス」でもある。生・損保の両分野でも、明快な保障内容や低廉な保険料をうたった新商品が次々と登場し、業界内の勢力図は大きく変動した。外資勢などを中心とした新たな勝ち組は高成長を実現させている。

生き残るための変革、そして勝つための変革。日本の保険市場のプレイヤーたちは変化への対応を模索しつつ、自身の変革に積極的に取り組むようになった。
顧客層のニーズを的確に把握した商品開発、目指す対象層に効率よく商品を売り込むための販売促進、顧客の信頼に迅速に応える保険金支払い、そして、変わり続ける規制に対応するための内部統制や法令順守……。
いずれでも強く求められるのは、スピードと確実さ。ITによるソリューションなしでは、達成はまず不可能な課題ばかりだが、逆に言えば、適切なシステムを素早く導入できれば、競争環境において大きなアドバンテージを得られることにもなる。

その具体例は、日本総研ソリューションズがこれまでに手がけてきた案件にも見て取れる。たとえば、ある生保が求めていたのは、営業社員やコールセンターなど多岐に渡るチャネルを有機的に連携させ、有効活用することだった。
「営業社員や代理店など、従来からの販売チャネルを持つ保険会社は、その効率的な活用に心を砕いています。一方で、規制緩和により銀行や郵便局など保険商品のチャネルは増えていく。お客様が接するチャネルが増えるほど、お客様の行動は見えにくくなってしまいますから、CRM(カスタマー・リレーション・マネジメント)の整備が重要になるのです」
日本総研ソリューションズは、営業社員など対面チャネルとコールセンターなど非対面チャネルという異なるチャネルを横で連携させ、各チャネル間でお客様とのコンタクト状況を把握し、双方が効率的に役割分担し顧客に効果的なアプローチができるシステム構築を支援し、また、マーケティング戦略の変更に基づく各チャネル間の役割の変化などに迅速に、柔軟に対応できる仕組みを、独自のノウハウを活用して提供した。

CRMを支援するシステム

もっとも、こうしたソリューションを提供できるSIerは決して多くない。ここのところ保険金の不払いが、生・損保を問わず連続して発覚している。原因のひとつとして挙げられるのは、次々と登場する新たな商品や特約に対応した支払い処理に、システムが対応しきれていないことだ。「保険はシステムこそが商品」だ。にもかかわらず、保険ビジネスの元来の複雑さや最近の変化にシステム構築が追いついていないのだ。

目指すのは「クライアントのパートナー」

こうした現状の背景について、岩川は次のように明かす。

「保険分野を手がけているSIerには、大規模な基幹系システムの構築や定期更新という従来の環境に慣れているところが多い。ところが、今クライアントが求めているのは、これまでになかった多様な課題を迅速に解決できるシステムです」
必要なノウハウや技術は、従来の基幹系システム向けのものとは別。業務や商品ごとに高度に専門化・細分化している保険ビジネスの各業務についての知識がなければ対応は困難--難題ばかりだが、これをクリアしてることこそが日本総研ソリューションズの強みだと、岩川は言う。
「日本総研からの分社化以前も含め、われわれが保険業界に関わるようになってからの歴史は決して古くはないのですが、参入時期がちょうど、保険業界の変化の時期と重なり、逆に経験に束縛されなかったことが有利に働いている。当社の強い市場がどんどん拡大している形です。また、特定のハードやソフトを販売しなければならない立場にもないので、案件ごとに最適な環境を提案できます」

求められるCRM

ある外資系生保から複数ある代理店向けシステムの整理・合理化という案件を依頼された際も、日本総研ソリューションズは、エンドユーザーである保険代理店からみた操作性の向上と、生保本社が負担するメンテナンス・コストの低減を実現させた。その基礎になったのは、多くのハードやシステムに対応してきた経験と、複数のプラットフォームを活かしたままフロントエンドの操作性を統一できるだけの技術力だ。

岩川 健二

もうひとつ、クライアントとの距離感の近さも日本総研ソリューションズの特色だろう。保険業界の新しい要望に応えるには、「クライアントと常に対話して要望を汲み上げながら、開発をスピーディーに進められるプロジェクト管理能力が欠かせません」。規制や環境が変化するスピードが上がっており、開発中に要件が変わることも珍しくない。
岩川に言わせれば、「仕様変更はトラブルの元と言われます。でも、『システムは仕様書どおりにできましたが、業務には使えません』では意味がない」ということになる。クライアントとの密接な連携や、柔軟な開発体制が不可欠な理由だ。当然、システムが稼働した後も、その更新や環境の変化への対応などに機動的なサポートを続ける。

岩川は語る。
「目指しているのは、クライアントにとっての相談相手。保険業界が横並び体制から抜け出して、独自の商品、独自のビジネスモデルを追求するようになればなるほど新しい課題が生まれて、その解決が必要になる。『こんなことがやりたいんだけれど……』『こんなことで困っているんだが……』という話を、まず持ち込んでいただけるパートナーになれるように取り組んでいきたいですね」


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