(2015年12月現在)

ICTが、その戦略的なプレゼンスを高めている。業務の効率化を促すだけでなく、経営戦略や事業戦略の策定にまで深く関与していく。しかし、そうした体制をつくれている企業は少ない。JSOL認定ITプロフェッショナル(アプリケーションコンサルタント)で、ITコンサルティング事業部の長堀亨は、企業の戦略性を高めるICT部門の組織強化やICT戦略を支援するコンサルタントとして、中小企業診断士としての実力もフルに発揮しながら企業の明日をデザインしている。

JSOL認定ITプロフェッショナル
アプリケーションコンサルタント
長堀 亨

ICT部門に求められる機能が変わってきた

今や、ICTなくしてビジネスは成立しない。ICT部門は、経営戦略や事業戦略の実現を支援する不可欠な部門だ。
その一方で、ICT部門と、ユーザー部門・経営層には共通した悩みや望みがある。片や経営層は経営戦略や事業戦略の変革をICT部門にリードしてもらいたいと願い、ICT部門もまた変革に貢献したいと望んでいる。にもかかわらず、両社の思いを合致させられないケースが増えている。

長堀は、「簡単に言えば、ICT部門に求められる役割と責任が大きくなっているのです」と言う。
「コーポレート・ガバナンスコードの導入や内部統制の強化に対応するためにも情報の見える化を促し、ICT部門はもっと積極的に経営判断に関与するようにならなければならない、と迫られています」

なぜミスマッチが起きるのか。その背景には、ICT部門がユーザーや経営層にどのように評価されているかが不明で、どのように戦略の変革に関わっていけばよいのか分からないという事情がある。自社内だけでなく外部人材も活用した適切な体制、業務プロセスの策定が有効だとは感じるものの、その具体的な手法が見えていない。
それはある意味で、仕方のない事情もある。従来、ICT部門はシステムの導入や保守・管理の業務が中心だった。システム自体が競争力を左右する金融業界などは別として、ICT部門が直接、経営戦略や事業戦略に関わる機会や使命は薄かった。

こうした事態の打開を図るのが、JSOLのITコンサルティング事業部のコンサルタントたちだ。長堀の専門テーマは、「ICT戦略の策定/経営管理(管理会計)の立案/ICT組織強化」と紹介されている。メーンの仕事はまさにコンサルタント業務だが、その後のシステム改善に関わるケースもある。

「ICTの導入や運用には力を注いできたものの、ICT部門のあり方や成長の方向性には、あまり気が配られていませんでした。私たちは、ICT部門が経営戦略や事業戦略との連携性を高め、自立的に成長していける状態を創造するのが務めです」

経営層の事業構想を組み込んでシステムを見直す

ICTコンサルタントである長堀が、どのように仕事を進めているのか。
基本的にはまず、ICT部門だけでなくユーザー部門、経営層など幅広い関係者へのヒアリングを通じてICT部門や業務の現状を評価する。そこから見えてきた弱点について根本的な原因を想定し、検証し、対策を立案する。そして各対策について、効果の高さや実施するための容易性などを勘案して優先度を決め、実行計画を策定する。
ある教育産業系大手企業の基幹システム変更に伴うグランドデザイン・コンサルティングとICT部門強化のケースを見てみよう。

この企業では、少子化を背景に受験指導だけでなく個別塾、難関大学受験専門コース、資格受験対策塾などへと多角的な展開を図ってきた。その結果、生徒数は増加して業績は順調に拡大してきたが、一方で、当然ながら授業講座の数は増え、教師のスケジュール管理は複雑になり、さらに生徒の管理だけでなく保護者とのコミュニケーション活動による囲い込みの強化などの経営課題が明らかになってきた。

アプリケーションコンサルタント 長堀 亨

「例えば、生徒の学習到達度について親御さん自身がスマホなどを通じて確認したいとの要望が増えていたのですが、既存の基幹システムでは応えられません。現場の先生たちから上がってくる生徒との関係を強めるためのアイデアと、経営者が描く将来の事業像の両方を吸収してマッチングさせ、将来を支えられるシステムが求められていました」

長堀は、コンペへの参加を要望され、事前調査が始まった。関係者へのヒアリングを通して分かったのは、例えば次のような課題だった。
入学してくる生徒は増えているが、一方で退会する生徒もわずかずつだが増えていた。つまり生徒の能力差に対応した仕組みと、それを納得して生徒を送り出してもらうための保護者とのコミュニケーションが重要になってきていること。質の高い教師を確保するためにも適切な授業配分や学習到達度を把握できる仕組みが不可欠になっていること。テスト前の追加授業や時間延長・レギュラー授業の振替といったケースに対して、教師の手配や料金設定を柔軟に変更できない仕組みになっていること等々。

「私のコンサルティングの基本的なスタンスは、お客さまは課題も、その解決策も実は分かっている、というものです。ただ、それらの引き出し方が分からない。そこをリードして課題や解を見える化してさしあげる。そうすると、より細かな課題や解決策も自身で連鎖的に導き出せるようになります」

そこで多用するのがさまざまな思考ツールだ。ロジックツリー(戦略マップ)、VRIO分析、PEST分析、BSC(バランストスコアカード)、マインドマップ、3C分析、ICT部門向けにはUISS等々である。
「重要なことはまず、業務の流れを関係者が共有できバリュー・チェーンを見える化する作業」という。その上で、それぞれの業務フローにどのような戦略上の課題があるかを明らかにする。
例えばロジックツリーでは、重要な論点の前後関係が示される。ゴールに至るにはAとBの要素が必要であり、Aを実現するにはCとD、Bを実現するにはEとFの取り組みが求められる、といった具合だ。その結果、何がやりきれていないのか、何が足りないのかなどが明確になる。

「教育産業のプロジェクトでは、基幹システムの更新のために、特に経理部門の方が大きな不安を感じていました。そこでフロー解析の段階で、システム更新後の仕訳作業の実際の姿を提示して安心していただけるようにも配慮しました」

競合社は現場の不満を吸い上げるボトムアップ型の提案を行ったが、長堀はトップダウン型だった。その理由を、「経営の最高責任者は現場の人には分かりづらい事業構想や見通しがあります。それらを軸にして現場の課題を評価して優先順位を付けていくと、実はICT部門に期待されている戦略性も明らかになり、ICT部門の組織強化にもつながるのです」と語る。
結局、このプロジェクトでは長堀の更新案が採用され、基幹システムの開発はJSOLのグループ会社へと引き継がれた。

経営やICTの課題を見える化する診断ツールの開発

現在、長堀は、ITコンサルティング事業部の共同の取り組みとして、ICTをより効果的に、より戦略的に活用できるように支援するトータルサービス(ツール)の開発に力を注いでいる。それを「J-Concierge」と命名した。JSOLによる気軽なお世話係、という訳である。

アプリケーションコンサルタント 長堀 亨

「J-Concierge」には、3種類のツールが準備されている。即ち「IT Workshop(情報提供型サービス)」「IT Session(取り組み方針検討サービス)」「CIO-Dock(IT戦略診断サービス)」である。

「IT Workshop」とは、顧客向けのセミナーや勉強会である。最新の情報を顧客に提供して自社の課題を探るのを支援する。「IT Session」とは、ICT部門の組織強化やコスト削減対策といった、具体的なテーマに関する対応方針等を協議・策定するサービス。そして「CIO-Dock」は、ICT部門の課題発見を促すための簡易診断サービスである。

「特にCIO-Dockのブラッシュアップに力を入れています。これは言わば、人間ドックのICT版で、問診項目(検査項目)に答えていくだけでどこに問題があるかが簡単に見えるようになっています」

長堀はさらに、「CEO-Dock」「Business-Dock」の作成にも取り組んでいる。「CIO-Dock」と発想は同じだが、CEO版では経営層の経営や事業に対する認識と課題、Business版では事業戦略全体や業務フローなどについての課題などを、ICT部門の関わりを軸に探るものだ。つまり、会社全体の業務改革と連携できるICT部門やシステムのあり方を、手軽な手法で見える化するツールだ。
例えば、業務フローを変更したほうがよりダイナミックな動きをつくれるのに、システムがボトルネックになって変更できないでいるといった課題が、ツールの質問に答えていくだけで見えてくる。ICT部門の組織体制やシステムについての標準的なあり方と比較ができたりもする。

「先ほどもお話ししましたが、私のコンサルティングの基本的な姿勢は、お客様は自身で解を持っている、というものです。私たちは、それを導きだし、見える化してさしあげる。コンサルタントは言わば"コーチ役"です。コーチ役は伴走者で、最後は主役たる選手の頑張りで成果が生まれるように、お客さまにやる気さえあれば時間がかかっても解決に向かって取り組んでいけます。私たちは、それを早く、的確に取り組めるようにお手伝いしたい。そのためのツールがJ-Conciergeです」

さらに長堀は、JSOL全体のコンサルティング能力の向上にも取り組んでいる。システム企画や要件定義といったシステム・インテグレーションの上流工程に関わる開発者、営業担当者らのコンサルティング能力を高めようというのである。必要なスキルの取得も促す。そのために社内で連続講座などを開催してきたが、2015年以降は、スキルセットの定義や診断方法、強化プログラムの策定にも取り組み始めた。

「JSOLはそもそも、システムの開発部門でも業界事情や業務に精通した上で開発にあたるという顧客本位の開発思想があります。ですから開発者は皆、コンサル的な要素を備えて、その知見の蓄積が私たちコンサルタント部門の力量を底上げするというサイクルができています。またJSOLは独立系のシステム・インテグレーターなので、中立的な評価をしてくれるとのお客様の評価もあり、ICT部門の組織強化問題では、優先的にお声を掛けていただけるケースが多いですし、これをさらに『JSOLならば気軽に相談できる』と言っていただけるような状況をつくりたいと考えています」

漫画家志望だった個性から発揮される創造力

長堀は、1996年に旧日本総合研究所に入社した。当初はプログラミングなどを担当し、5年目ぐらいから要件定義やコンサルティング業務などの上流業務に関わるようになった。
現在のITコンサルティング事業部の前身となるミニコンサルタントチームが組織されたのが約8~9年前。その一員として民間産業部門向けのコンサルタントとして活動を始めた。

「コンサルティングは、お客さまのあらゆる部門の現場の人たちやマネジメント層、さらに経営層にまで会い、率直に悩みをお聞きして解決策を提示できる醍醐味があります。これはもっともっと力を付けなければいけないと思いました」

そこで挑んだのが中小企業診断士の資格取得だった。専門学校に通うこともせず、まったく独学で4年間かかって取得した。
「毎年、1次試験は受かるのですが、2次試験が大変で、週末の多くの時間を勉強に充てていました」
現在、長堀と面識のある顧客は、長堀を「会計の分かるICTコンサルタント」と呼ぶ。いわゆる財務会計だけでなく管理会計にも習熟しているのは、中小企業診断士をめざした4年間の苦労の賜だった。「中小企業診断士に合格してからは、お客さまの課題を、いち早く理解できるようになったと実感しています」と語る。

大学および大学院時代は数学を専攻。旧日本総合研究所への入社は、「ダイレクトメールが届いたので訪ねたら内定という、実に動機も何もない入社でした」と笑う。

アプリケーションコンサルタント 長堀 亨

写真からも伝わるのではないかと思うが、茶目っ気のあるキャラクターの人物だ。小学生と幼稚園の二人の娘には、「パパはウルトラマンだ、と信じ込ませています。まだ信じてくれているようですが」と笑う。

その一方で週末には、お餅をつき、子どもたちが食べやすいように小さく握り、ダイコン下ろしで食べさせる優しいパパの顔になる。「自分が食べたいだけなのですがね」

にしてもキャラクターの源は、と考えあぐねていると、「実は漫画家志望だった」と言う。小学校から描きはじめ、大学院時代も漫画研究会に所属していた。さすがに就職して漫画家への夢は諦めたが、「なるほど」と実感。
さまざまな分析ツールを利用して顧客に課題を分かりやすく見せる力、解決策の創造力、そして茶目っ気な雰囲気にもすべて合点がいったのである。


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