(2021年02月現在)

止まってはいけないシステム、ミッションクリティカルなシステムで用いられるNonStopサーバー。30年以上にわたり事業にかかわってきたITアーキテクトの山本芳男が、ICTインフラ事業の仕事について語ります。

JSOL認定プロフェッショナル
ITアーキテクト
山本 芳男

自身の専門分野とITアーキテクトの活動について

止められないシステムを裏で支えているNonStopサーバー

 私が長年かかわってきたNonStopサーバーは、無停止サーバー、フォールトトレラントコンピューターとも呼ばれています。これは、大量のデータを高速に処理し、かつ稼働を止められないミッションクリティカル、またはビジネスクリティカルなシステムで多く使われるサーバーで、金融や通信、公共機関、物流、小売などを中心に、受発注に用いるEDIやチケット予約、ヘルスケアなどの分野でも用いられています。

 その特徴としては、NonStopという名称が示すように「止まらないシステム」、つまり可用性が高い点が挙げられます。内部の機械は二重化されており、万が一故障したとしても、システムを止めることなく、電源を入れたまま機器の交換、増設作業を行うことも可能です。

 もうひとつの特徴は、セキュリティーの高さです。管理者がシステムにログオンする方法が特殊なだけでなく、通常のログオン時にも特殊なツールを用いる必要があるなど、さまざまな技術によって第三者からのアクセスを許さないようにしています。

 また、用いられているすべてのツールは、PCI DSSというセキュリティー基準に準拠しています。このPCI DSSは、クレジットカードのセキュリティー基準としても適用されているものです。金融業界でNonStopサーバーが利用される理由でもあります。そしてこれからのキャッシュレス社会に向けて欠かせない技術といえるでしょう。

 このように可用性とセキュリティーの高さを追求し、主にミッションクリティカルな用途で使われています。普段、何気なく使っているシステムの裏側で、NonStopサーバーが稼働していたということもよくある話です。

 現在、私はJSOL認定プロフェッショナルとしてNonStopサーバーの事業に注力しています。以前はJSOLのプラットフォーム事業本部で管理職を任されていました。そこでは仮想サーバーや基盤ソリューションなど、さまざまな製品を扱っており、そのひとつがNonStopサーバーだったのです。その仕事で、常に感じていた課題がありました。それは、「NonStopサーバーのニーズが高く、相談を受けても手が回らずお受けできないケースがあった」というものです。

 そこで、NonStopサーバーの事業に専念するためにJSOL認定プロフェッショナルに応募しました。

 私が仕事をする上で大切にしているのは、「お客さま視点」と「信頼関係」です。ICT基盤を扱っていると、ついついシステムの安定稼働という観点を重視してしまいがちです。しかし、お客さまにとってはビジネスが回ることが優先で、システムの安定稼働はその一要素にすぎません。ビジネスという視点を持ちつつ、「お客さまは納得してくれるだろうか?」と問いかけながら、最善策を模索することは非常に重要です。

 忘れられないのは、ある年のゴールデンウィークの出来事です。お客さま企業のマシンルームのシステムがすべて止まってしまい、私も駆けつけました。お客さまの開発部門のトップからは「責任は自分が取るから、余計な心配をせず、とにかくリカバリーを頼む」と言われたのです。他社のシステムはリカバリーに半日くらいかかったようですが、私たちのシステムはトラブル発生後も稼働を続けたのに加え、復旧作業も2時間で終わりました。

 そのときは、とにかくシステム稼働を優先させ、いろいろな確認事項は後からチェックするというイレギュラーな対応で対処したのですが、お客さまからは「ビジネスが回ることを最優先に対応してくれた」と喜ばれました。そのようにお客さまと一緒に足並みをそろえて、ビジネスを育てていく手応えが、NonStopサーバー事業の醍醐味だと思っています。

現在の課題や注力している取り組みについて

トラブルが許されないシステムを構築、運用するコツはチーム作り

 事業では、大型案件に対応できるJSOL独自方式の確立、システム運用のJSOL初のNonStopサーバー共用サービスの提供、横展開しやすいようなシステム運用の商品化などを手掛けてきました。

 ミッションクリティカル、ビジネスクリティカルな事業で活用されているプロジェクトの難しさは、なによりも「ミスやトラブルが厳禁」とされていることです。クレジットカード決済などに使われるのですから、万が一システムが停止してしまえば、広い範囲に大きな影響が及ぶことになります。必然的にプロジェクトの規模も大きくなるので、いくつものベンダーが協力しあって推進することになります。

 その際に重要なのは、お客さまの担当部門や関連部門、ベンダーやパートナー企業のメンバーの全員が同じ意識を持って協力しあうことです。その実現には、全体を統括する人の存在と信頼関係の構築だけでなく、「プロジェクトを成功させる」というプロ意識やプライドの共有が不可欠です。

 以前に取り組んだクレジットカード会社での更改案件も、企業間の協力によって成功したプロジェクトのひとつです。これは、いくつものシステム会社が関与する大掛かりなプロジェクトでした。このクレジットカード会社では、いくつものシステムが混在していたのですが、一括移行で対応することが求められました。

 当初、全体を統括する会社が決まっていない状態でプロジェクトは始まったのですが、私は他のシステム会社のメンバーと以前から何度も仕事をした経験があり、自然にプロジェクト全体の「参謀」のような形で、全体を統括して助言するような役割を果たしました。

 まず私が実施したのは、技術を持った匠タイプ、勘所を知っている目利きタイプ、そつなく自分の仕事をこなしていくラインタイプというように、異なる才能を持ったメンバーをそろえてチームを編成することです。その上で、データベースの移行、OSを含めたマイグレーション、PCI DSS認証のための対応、稼働後の運用のあり方などを検討していきました。そして、実質的にJSOLが主体として動き、各システム会社との調整をしながら、議論を主導していきました。

 会社は違っていても何度もプロジェクトを乗り越えた仲間が多かったので、信頼関係ができていたことも、成功につながったと思っています。各自が仕事に対するプライドを持ちながら課題に臨み、意思疎通しながら進めることができました。

新社会人になって取り組んだ内容について

サッカー漬けだった学生時代。2度の大けがからICTの道へ

 中学時代はサッカーのクラブユースに所属し、高校でもスポーツセンターに通うというサッカー漬けの生活でした。当時はJリーグ発足前でしたが、一緒にやっていた仲間には、その後、Jリーグで活躍する選手もいました。私も高校卒業後は、サッカー推薦で大学に進むはずでしたが、靭帯を2度損傷してしまい、サッカーの道を諦めざるを得なくなったのです。

 そこから先は、何も考えることができないほど落ち込みました。予定していた推薦入学を断られ、就職についても良案が浮かばない、そんな状況の中、「これからの時代、何がはやるんだろう」と目をつけたのがコンピューターでした。そこで選んだ進路が、ICTの専門学校です。

 ICTが本当におもしろいと思うようになったのは、就職してからですね。まだ新人だったにもかかわらず、ベテランがやるべき仕事を任されてしまい、いろいろなシステムの移行作業をマニュアル片手にやり遂げました。そのときに「やってみると、できるものだ」と自信を持ったことを、今でも覚えています。

 当時派遣されていた企業では、いろいろなコンピューターメーカーのSEが常駐していて、必要な技術をすべて教えてもらいました。普通の講習会では学べないような、現場での実践的なノウハウも教えてもらい、それが本当に力になったと感じています。また、当時はすべての設定を人間が行っていましたので、ディスクを差し込んだり、OSをインストールして設定したりと、自由に作業ができたことも、スキルと知識の習得に役立ったといえます。

 その後、日本総研に入社した私が出会ったのが、NonStopサーバーにおける師匠であり、親方のような上司でした。マンツーマンでいろいろなことを教えてもらったのですが、その人のもとで仕事をしたことで「NonStopサーバーは楽しい」と分かり、虜になりました。

 日本総研では運用センターの管理部門に配属されました。入社してすぐ、開発部門と意見が衝突してしまい「自由にやらせてもらいます」と啖呵を切ったのも、いい思い出になっています。その後のプレッシャーにはなりましたが、直談判した上司に、本当に自由にやらせてもらったことも、技術向上のきっかけになったと感じています。

 当時、NonStopサーバーの研修に参加しても、講師は外国人、教科書としてのマニュアルは英語、という環境でした。ですから結局、開発機に触ることでノウハウを蓄えていきました。アメリカに行って、サーバーの開発者の話を聞くこともありました。

 そういう活動を通して、マニュアルには乗っていないメーカーだけが持っている裏技なども聞きながら、一緒に教えてもらったことも大きな財産になっています。

 もちろん、マニュアル通りに作業するのが安全策なのですが、時にはスピード優先で対応しなくてはいけないケースもあります。そのようなときに、短時間で終わらせられるような裏技は役立ちます。それを使うかどうかは、状況に応じて判断すればいいわけで、ナレッジとして持っているかどうかは、大きな違いといえます。

 今から振り返ると、私の人生は、出会った人に恵まれていたと思います。先ほどの師匠に当たる人もそうですが、パートナー企業のメンバー、NonStopサーバーやメーカーの開発者、それからお客さま企業の皆様。多くの人との出会い、交流できたことが、今の私につながっています。

プロフェッショナルとして今後取り組んでいきたいこと

NonStopサーバー事業の未来は、若手エンジニアにかかっている

 デジタルとリアルが融合する、Society 5.0時代のビジネスやサービスには、止まることなく安定して稼働するシステムが不可欠です。止まらないシステムであるNonStopサーバーは、まさにこれからのニーズにマッチしているシステムといえるでしょう。これまでは金融や通信などを中心に利用されていましたが、それ以外の分野でもいろいろな用途で活用できる可能性を秘めています。

 このサーバーの将来は、若手の育成にかかっているともいえます。私が若手に期待することは2点あります。ひとつは、仕事を理解し楽しめるようになること。もうひとつは、お客さまの会社の部長、本部長クラスの方とお話しできるだけの力を持つこと。それには、「お客さまのビジネス」への理解が欠かせません。

 まずは、お客さまのプロジェクトにアテンドすることが大切です。そうやってお客さまのビジネスを推進する上で重要なことは何かを理解し、それに必要なスキルを習得していくべきと感じています。

 視点は変わりますが、私が若手に勧めたいのは、海外へ足を運ぶことです。私自身、NonStopサーバーを生み出したタンデムコンピューターズのCEOや管理職、サーバーの設計を担当した方など、多くの人と話をさせていただきました。開発に対する熱い思いや、将来への希望などの話も直接聞いており、それらは私の糧となっています。

 海外の技術者から学ぶことの重要性は、今後も変わらないでしょう。日本国外でNonStopサーバーにかかわる仕事をしている人と触れ合うと、世界観が広がります。日本では「こういうことがやりたい」「でも、技術的に無理」とすぐに諦めがちです。ところが海外では「こうすれば実現できそう」というアイデアが次々と出てきます。仕事の現場にもエネルギーがあふれています。そういう文化を体に染み込ませるだけでも、自分の仕事の成長につながるでしょう。

 JSOL認定プロフェッショナルの仕事は、将来を見据えて、若手に道を作っていくことも含まれます。私もNonStopサーバー事業に専念できるようになり、それにかかわる若手の育成に注力できるようになりました。

 最近の案件では、若手に参謀役を任せ、チームを率いてもらいました。自分自身がまったく手を動かさないのは初めてでしたから、不安もあったのですが、作業を外から見守ることに徹しました。参謀を任された若手も最初は不安そうでしたが、途中からは「自分でやるしかない」と覚悟を決めたようで、率先して取り組むように変わっていく様が感じられました。

 特にその成長ぶりを感じたのが、コロナ禍で進めた案件です。ミッションクリティカルなサーバーの更改は、出社しなければ許されない作業も多々あります。ところが、昨今のコロナ禍では出社もままならない状況が続いています。しかし、コロナ禍だからといって、更改時期を遅らせることはできません。

 そこで若手たちは、社外から必要なシステムに安全にアクセスできる環境構築のためのいろいろなアイデアを持ってきて、「なんとか在宅でできるようにしてほしい」と懇願してきました。その声を聞いて、私はお客さま、関連会社に交渉して、納得してもらいました。

 何度か出社はしたものの、基本的には在宅で仕事を進めて納期を順守することは容易ではなかったと思います。しかし、若手の彼らは計画通りにやり遂げてくれました。後日、「山本さんの顔をつぶさないように、頑張るしかなかった」と聞いたときは、涙がこぼれそうになりました。今後もパンデミック並みの問題が生じるかもしれませんが、JSOLの若手なら対応できるだろうと希望を感じました。

 私は、今までやってなかったような、新しいNonStopサーバーの活用にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。お客さまの課題をNonStopサーバーで解決して、ビジネスを広げていくお手伝いするための最善策は何なのか、それが今の私の宿題です。


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