3拠点に分散していたさまざまなシステムを、仮想化ソリューションで1つのシステム基盤に集約・統合

「100円ショップ」のコンセプト・リーダーである株式会社セリアは2013年10月、業界に先駆けて活用していたPOSや発注支援システムなどを含むすべてのシステムを、JSOLが提供する仮想化ソリューションにより集約・統合し、JSOLデータセンターへのホスティングも開始しました。決断の背景には、柔軟なITインフラとデータの活用により、新たなステージに入った成長を、さらに加速させることにありました。

「100円ショップの新時代をもたらした」コンセプト・リーダー

「100円ショップ」は今や、単なる均一ショップという枠を超え、その多彩な商品開発力などにより、百貨店やスーパー、コンビニに次ぐ"第4の小売業態"としての新たな成長時代を迎えています。

業界には、"4強"と呼ばれる大手4社があり、セリアは、売上高では業界2位ですが、明るく心地よい店舗演出や、生活を彩る品質のよい商品開発などで業界をリードする存在です。特に、ファッショナブルな食器やインテリア用品などを豊富に揃えた直営店「Color the days(日常を彩る)」は、マスコミなどから「100円ショップの新時代をもたらした」と高い評価を得、「セリア」というブランドが構築されました。

業績面でも、1987年の設立以来、25期連続で増収を確保し、2014年3月期には売上高が1000億円を突破すると同時に、営業・経常・当期の各利益も過去最高を更新すると予想されています。

この成長を支えてきたのが、「価格以上の価値を100円によって実現し、モノではなく信用を売る」(河合宏光社長)という企業ポリシーと、他社に先駆けたIT活用でした。

IT活用は、2004年の株式公開で得た資金を、リアルタイムPOS(販売時点情報管理システム)の構築に投入したのが始まりです。

株式会社セリア システム部 システム課 安田朋広 氏

株式会社セリア
システム部 システム課 係長
安田朋広 氏

システム部システム課の安田係長は、「単価が均一な100円ショップでは、POSを利用した商品管理はむしろ手間を増やすものであり、ITは非効率なツールだと考えられていました。投資家から『POSの導入自体が経営リスクだ』と言われたこともありました。しかし私たちは、商品点数が急増するなかで、何がどれだけ売れ、何が在庫として残っているのかを正確に把握して効率的な店舗運営をめざすことは、業界優位を確保するためには不可欠だという判断がありました」と、システム構築の背景を説明します。

セリアは、POSによって個々の商品の動きや売れ筋を正確に把握するようになり、次なる業務の効率化に結びつける手法を模索します。その成果が、2008年から本格稼働を始めた「発注支援システム」で、現在、POSと発注支援システムはセリアの成長を支える両輪になっています。

POSと連動した発注支援システムでは、「自立型仮説検証モデル」と呼ぶ手法を駆使しています。小売業で使われる「PI値(Purchase Index=ある商品が1000人の顧客に何個売れたかを示す指標)」を独自にアレンジした「SPI値(Seria Purchase Index )」をベースに、店舗ごとの理想的な商品構成を予測し、発注指示を出します。

商品のアイテム数は約2万。これらは全国約180社の協業メーカーによって生産されますが、自社商品に関する情報は公開され、売れ筋商品の特徴の把握、商品の改善ポイント、不良品の発生要因の分析など、常に協働で検証が繰り返されます。そのため、2万点の商品のうち毎月500~600点が入れ替わる流れが生まれました。

3拠点に分散された全システムをVMwareで統合

リアルタイムPOSの導入から約10年。発注支援システムの本格稼働から5年。他社に先駆けて導入したシステムは、着実にセリアの成長を牽引してきました。

2004年当時、100円ショップの最大手企業とは約6倍あった売上高の差は3倍強に縮まり、売上高営業利益率は8.5%、仕入れた商品がどれぐらいの日数で完売されたかを示す在庫回転期間は36日という業界屈指の効率経営に結び付きました。

しかし、一方でシステムの保守・維持にあたっていくつかの課題も顕在化してきます。

従前、発注支援やその作業用端末である「タッチワン」そして勤怠管理システムなどは、セリア本社内に、またPOS関連のシステムは、アプリケーションを開発したA社のデータセンターに、さらに基幹業務系システムは、同じく開発したB社管轄下のデータセンターに分散して設置されていました。

株式会社セリア システム部 システム課 北尾雅志 氏

株式会社セリア
システム部 システム課 主任
北尾 雅志 氏

「どのシステムも、一つでもダウンすると日々の業務に支障が出るミッション・クリティカルなものばかりです。ですが、例えば大垣本社にあるサーバーは、近くで落雷があると無停電電源装置が過敏に反応してしまい、ハード故障には自分たちで対応せざるを得ないなどの状況にありました。サーバーの増設やメモリーの装填も私たちの仕事で、部長以下5人のシステム部員は、システムの保守に追われ、前進的な仕事ができないでいました」(北尾主任)

また、POS、発注支援、基幹の主要な3つのシステムが分散されているために、データ連携によるリアルタイム処理にも限界があり、当然ながらデータ分析の活用による業務サイドへのアドバイスなどもできていませんでした。

さらに、分散設置に伴う企業統治面での不安もあり、「開発したパートナーのデータセンターではなく、第三者が監視するセンターでの統合的な運用ができないかと考えていました」(安田係長)

2009年に、セリアからIT関連各社になされた依頼が、「統合監視のためのコンペ」であったのも、こうした背景によるものだったのです。このコンペにおいて、高く評価されたのがJSOLによるアウトソーシングプランでした。「現実味があり、JSOLのこの提案であれば必ず実現してくれるという信頼感がありました」(安田係長)

プランでは、3つの主要システムを含むすべてをJSOLのデータセンターに集約します。その上で、サーバー仮想化ソリューションを活用してシステムを統合。JSOLのサーバー仮想化ソリューションは、サーバーリソースの最適化やシステム延命などに向けて、構想の立案からシステム導入、運用保守・監視に至るまでを一貫して提供するものです。JSOLならではの、独立性、第三者性を活かし、お客様の現状に応じた最適な構成を提案し、セリアのシステム統合では、仮想化技術として「VMware」を導入しました。

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SIerとしての客観性・第三者性への高い評価

プロジェクトは、3つの移転フェーズで展開されました。まず、2011年9月までにセリア本社にあった発注支援やタッチワン、勤怠などのサーバー群を移転。次に2012年8月から12月に、A社のデータセンターにあったPOSシステム関連のサーバー群を移転。さらに2013年5月から10月に、B社のデータセンターにあった基幹業務系のサーバー群を移転。

移転、集約されたサーバーの総数は約80台にのぼりました。

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JSOLの開発陣は、VMware上への集約・統合にあたり、各アプリケーションの稼働シミュレーションなどを繰り返し、予想される統合リスクの洗い出しと事前対応についてセリアのスタッフと詰めていきました。また、各アプリケーションの開発パートナーに対しては、第三者的な立場から改善ポイントなどについて議論を重ねました。

最初の2つの移転、つまり発注支援やPOSの移転では、トラブルゼロの完璧な移転を実現します。安田係長は、「移転作業は、休日を利用して行われるのですが、出社してきた社員がシステムを利用して、『あれっ、本当に移転したの』と驚くほど違和感がなく利用できていたのは、私たちへの褒め言葉だと思っています」と語ります。

しかし、最後の基幹システムの移転では、一部のシステムで予測していた安定精度が出ず、アプリケーションの開発パートナーと原因究明に追われたこともありました。JSOLはVMware側から、パートナーはアプリケーション側から原因究明を続け、問題解決に全力を注ぎます。

基幹系の移転を担当したシステム課の北尾主任は、「移転にあたってトラブルが発生すると、業務停止に陥る危険性もあり、非常に慎重な対応が求められました。JSOLは、非常に公平な立場でパートナーを導いてくれました」と語ります。

JSOLは、他社のシステム開発から蓄積されている解析手法なども積極的に投入してトラブルの拡大を防ぎ、プロジェクトを完遂しました。

プロジェクトを振り返り、安田係長も北尾主任も、「システム全体を自分たちの手でグリップできるようになったことを実感できました」と語ります。

「ネットワークの構造も含めて、システム全体を確実に理解する機会になったのは個人的にも感慨深いですね。これまでは、個々の案件に対応しているだけで、このように全体を把握することはできませんでした」と安田係長。

一方、北尾主任は、「基幹システムの場合、どのような順序で停止し、移転していくかの節目の確認が必須でしたが、そのためにシステムを掘り起こし、一覧表を作成しました。実は、パートナーさんのデータセンターにサーバーがあったので、一覧表などは作っていなかったのです。大いに反省すると同時に、今は、次のステップに向けたしっかりとしたスタートラインをつくれたと感じています」と語ります。

業務変革を支援するシステム部門への変身

セリアのシステムは現在、統合後の微調整を続けながらも、順調に稼働を続けています。

本社にあり、空調ファンが独特の音を発していたサーバー室は今、広々とした会議スペースに生まれ変わっています。ホスティングによるサーバー統合は、オフィススペースの確保だけでなく、保守費用や電気代などのTCOの削減でも大きな効果を発揮します。しかし、何よりも重要なのは、システム活用や更新にあたって柔軟なハンドリングが可能になることです。それは、システム部門のあり方を変えていくための土台づくりでもあります。

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安田係長も、「システム部がやりたいこと、やるべきことはたくさんあるのに、サーバーのお守りのためにできずにいた。そうした状況から抜け、システム部が前進的な仕事に取り組んでいく前提ができました」と語ります。

例えば、データの活用。システム統合によってデータ連係がスムーズになり、データ解析やリアルタイム処理などの土台が整いました。仮想化ソリューションによるシステム統合では、新しいアプリケーションの導入だけでなく、最新鋭のハード機器の活用も容易で、「システムの保有から活用への転換」が促されるのです。

また、セリアでは、きめ細かな現場対応も可能になりました。例えば、システムのユーザー・インターフェースの改善です。お店には、ITの知識が乏しいパートさんもおり、そういう人にも端末を利用して仕事をしてもらわなければなりません。そのために端末のユーザー・インターフェースは、迅速かつ機動的に改善しなければなりません。

偶然にも、システム統合を機にシステム部門ではスタッフが4人増員され、総勢9人の体制となりました。これからは、使いやすさの改善や、SPIの精度の向上などに一層注力できるようになりました。

「運用部門は、社内の各種の業務をきっちりと理解した上で、ビジネスの改善や革新につなげていけるようなデータ活用や仕組みを提案していかなければならないと考えています。今、やっとそうした仕事に注力できる前提ができました」(安田係長)

JSOLプロジェクトチームは引き続き、安定運用と監視はもちろん、システムマップの作成やデータの活用策などについてもセリアと一体になって取り組んでいきます。

セリアの成長を支えてきたITは、今回の統合とアウトソースによりシステム自身も進化を遂げ、セリアの新たな成長を支えていくに違いありません。

左から、JSOL セリア様担当営業 宇水、株式会社セリア 安田係長、北尾主任

左から、JSOL セリア様担当営業 宇水、株式会社セリア 安田係長、北尾主任

企業情報

株式会社セリア

会社名

株式会社セリア

本社所在地

〒503-0934 岐阜県大垣市外渕2-38

設立

1987年10月20日

資本金

12億7,883万円

従業員数

366名(外パートタイマー6,157名)

店舗数

1,104店舗 (直営:1,015店舗 FC:89店舗) ※2013年3月末現在

事業内容

「100円ショップ」の小売業(直営店)と、FC点への卸売業

ホームページ

(2013年12月取材)


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