マネーロンダリング対策のSecure Paymentの実証実験に参加。
AIによってすべての海外送金取引をリアルタイムにモニタリングし、不正送金をブロック

第二十九国立銀行、第五十二国立銀行を前身として創設し、古い歴史を持つ愛媛県の伊予銀行は、長年にわたり地域経済を支えてきた老舗の地方銀行です。国際送金のためにJSOLのSWIFTサービスビューロを利用してきた伊予銀行は、マネーロンダリング対策強化のため、AI(人工知能)によるリアルタイムモニタリングで不正送金を未然に防ぐSecure Paymentを新たに導入しました。

課題・解決・効果

課題

  • 国際送金におけるマネーロンダリングの送金を送金前に防止したい。

  • 送金処理後のモニタリングでは、不正送金を未然に防げなかった。

解決

  • AIがシナリオに基づいてリアルタイムに検知し、ブロックするSecure Paymentを導入

導入効果

  • AIによるリアルタイムのモニタリングで全送金をチェックし、不正送金を未然にブロック

  • 実績のあるシナリオを用意。独自シナリオの追加や閾値の調整も可能

  • コンプライアンスの向上で、より信頼され選ばれる銀行へ

地域の利用者、他の銀行から選ばれる銀行へ

近年、Fintechの言葉に象徴されるように、異業種からの参入や新たなプレイヤーが登場するなど金融にも新しい波が訪れています。変革期にある金融業界の中で顧客に選ばれ続ける銀行を目指し、「潤いと活力ある地域の明日を創る」「最適のサービスで信頼に応える」「感謝の心でベストをつくす」を企業理念として経営を進めているのが、愛媛県を拠点に152店舗を構える伊予銀行です。金融機関の競争が激化しているなか、日本で唯一預金と貸出金が20年間連続して増加しているのは、顧客に選ばれている証左といえるでしょう。

顧客やマーケットから支持を集めている理由について、コンプライアンス統括部次長の高瀬靖氏は「お客さまに対する適切な価値提供、つまりカスタマーファーストを第一に考えた運営が、預金や貸出金の増加という結果につながっていると考えています」と説明しました。

そのうえで、顧客だけでなく、「銀行に選ばれる銀行」を目指すことも重要と指摘するのは、国際部課長の続木聖三氏です。造船業が盛んな愛媛では以前から海外送金、着金がありました。昨今は外国人研修生も増えており、送金先も多様になってきています。しかし、海外送金は国内のメガ銀行や海外の銀行の協力が不可欠です。続木氏は、「他行から『安心して取引ができる銀行』という信頼を得るためにはコンプライアンスが欠かせません」と述べます。

同様に、高瀬氏も「法令遵守に留まらず、組織風土、フィデューシャリデューティー(受託者責任)などを含めたコンプライアンスが、経営課題として最上位に来ることは間違いありません。Fintech企業による低価格なサービスが登場するなか、これまで金融を支えてきた実績のある銀行には、より高い信頼性が期待されています」と強調しました。

近年はマネーロンダリングやサイバー攻撃、反社会的勢力などへ対策も各国の金融機関に強く求められています。しかし、マネーロンダリングに関する国際的機関のFATFが行った2008年の第3次審査において、日本は多くの不備を指摘され、先進国では低い評価を受けました。「日本のマネーロンダリング対策も他国に肩を並べられるようにならければいけません。金融庁からもマネーロンダリング対策強化が求められています」と高瀬氏は主張します。

左)株式会社伊予銀行 コンプライアンス統括部次長 高瀬 靖氏
中)株式会社伊予銀行 国際部課長 続木 聖三氏
右)株式会社伊予銀行 コンプライアンス統括部課長代理 野中 佑希氏

海外でSWIFTへのサイバー攻撃が発生し、セキュリティー強化へ

伊予銀行では、2015年より、海外送金のためにJSOLが提供しているSWIFTサービスビューロを利用していました。SWIFTとは、金融機関間の電文の送受信を管理する国際団体であり、そのシステムの上で海外送金が行われています。SWIFTサービスビューロは、SWIFTを利用するためのASPサービスで、伊予銀行はこれを活用して海外送金を行っています。

しかし2016年4月、安全であるはずのSWIFTにおいて事件が起こりました。バングラディシュ中央銀行のSWIFTシステムがサイバー攻撃を受け、8100万ドルが不正送金されたのです。さらに、同年5月にはベトナム、6月にはウクライナ、その後もネパールやロシアでもSWIFTを標的としたサイバー攻撃が連続して発生しました。この事件を契機に、SWIFTは、CSP(Customer Security Programme)と呼ばれるセキュリティー規制の強化へと舵を切りました。

海外での被害状況を耳にした高瀬氏は「大きな衝撃を受けました。SWIFTは堅牢なシステムというイメージがあったので、このような事件が実際に起こるとは予想外でした」と振り返ります。そして「バングラディシュで攻撃されたのは、セキュリティーの弱いインターネット回線が使用されていたところのようですし、当行はJSOLのSWIFTサービスビューロのセキュアな回線を利用しているので、同様の攻撃を受けることはないという安心もありましたが、セキュリティー強化の必要性を感じました」と語ります。

新しいマネーロンダリング対策「Secure Payment」の実証実験に参加

2019年8月から11月にかけてJSOLは、SWIFTサービスビューロ上で利用する新しいセキュリティサービスとして、「Secure Payment」の実証実験を開始しました。Secure Paymentとは、Bottomline Technologiesが開発したAIを活用したSWIFT電文リアルタイムモニタリングシステムで、マネーロンダリングや不正送金をリアルタイムに検知するサービスです。海外では実績があるツールですが、日本国内での実績はありません。そこでJSOLが国内での利用を想定したSecure Paymentの実証実験を開始しました。

マネーロンダリング対策強化を検討していた伊予銀行は、この実証実験に参加しました。高瀬氏は「当時、リアルタイムモニタリングは海外では始まっていたものの、国内では時期尚早という認識でした。ところがJSOLが実証実験を行うと知り、日本も一気に進んだと実感しました」と受け止めたそうです。そしてSWIFT CSPへの対応、マネーロンダリング対策強化に加え、リアルタイムモニタリングができることに惹かれて、参加を決めたといいます。

Secure Paymentは、SWIFTサービスビューロ上を流れるSWIFT電文とアクテビティ(ログイン時間や失敗、権限変更など)をAIがモニタリングし、不正の可能性があれば取引を一時的に停止します。

AIによるモニタリングは、事前に用意した検知用のシナリオに基づいて行われます。例えば「特定口座が普段と違う頻度で送金している」「特定銀行から特定口座へ異常額が着金した」といったシナリオに基づいてAIがすべての取引を網羅的にチェックします。ブロックされたものは、人間の目で確認した上で、問題がなければ送金処理を続行し、不正と判断すれば処理を止める仕組みになっています。

またSecure Paymentには実績のあるシナリオがデフォルトで用意されており、すぐに活用できます。さらに、徐々に閾値を変えて適正な検知率に調整したり、新しい独自のシナリオを追加することも可能です。

実証実験では、実際の海外送金のデータを使用しました。伊予銀行の場合は、一日に4、5件、月末に十数件の検知があり、それを続木氏が一つずつ確認していきました。

そこで感じたのは「AIによるリアルタイムモニタリングの有用性」と「検知後の対応の負担」だと続木氏は説明します。

従来は、送金を受け付けた窓口でチェックした後に国際部で再度チェックした上で、SWIFTを使って送金が行われていました。モニタリングは行っていたものの、送金を終えた後に実施しており、モニタリングの目的は原因の追究と、将来の不正送金のチェックに生かすためのものでした。しかしSecure Paymentであれば、人間の目で見逃した不正な送金もAIがリアルタイムで検知、ブロックできます。

しかし、リアルタイムモニタリングにも課題はあります。例えば正当な送金が誤検知によりブロックされると、お客さまのビジネスに支障を与えかねません。そこでブロックされたときはすぐに人間が確認して、問題がなければブロックを解除して処理を継続しなくてはいけませんので、現場サイドにとっては目に見えない重圧となります。

「実証実験では、検知精度とスムーズな事務処理の妨げにならないようにというバランスを見ていました。実証実験での精度は一般的なマネーロンダリング対策システムと比較し誤検知率が約3.4%と低いものでしたが、Secure Paymentではシナリオの閾値を変えられるので、活用しながら検知の精度を調整できます」(続木氏)

実証実験の結果を受けて、Secure Paymentの導入へ

実証実験の結果を受け、伊予銀行は2020年3月よりSecure Paymentを本格利用することを決定しました。導入に踏み切った第一の理由として、前述の「リアルタイムモニタリングの安心感」が挙げられます。

もう一つの理由は、人間の目よりも広い視点でAIがチェックできる点です。国内送金業務でモニタリングを担当していたコンプライアンス統括部課長代理の野中佑希氏は、「従来行っていたルールベースのモニタリングでは、個人、法人、団体という単位で、過去の取引と比較して異常な点はないかとチェックしていました。しかしSecure PaymentのAIは、ある国の傾向、この業種の傾向といったものを踏まえた分析を行い、それに基づいたシナリオでチェックしてくれます。そのような人間とは異なる大きな視点で、漏れなく即時にチェックできるのはSecure Paymentの優れた点です」と語ります。

Secure Paymentの選定について「ほかの選択肢は考えられなかった」と高瀬氏は補足しました。すでに利用しているSWIFTサービスビューロ上で動くサービスであることも大きな要因でしたが、独自に対策するとなると、JSOLのサービスを使うのに比べ数十倍のコストがかかることが予測されました。またコンプライアンスとしても、Secure Paymentに残された記録が監査にも利用でき、送金に関する人為的なミスや内部不正のチェックにも役立つ点に期待が集まりました。

他行と情報を共有し、日本全体のマネーロンダリング対策強化へ

これまでの経緯を振り返り、高瀬氏は「JSOLは他行を交えた意見交換会を催してくれましたし、実証実験の分析レポートも用意してくれました。意見交換会では、実証実験のデータを踏まえて、Secure Paymentの特長や有用性、本番利用に向けた課題や対策などを話し合ったのですが、今でも他行との交流が続いており、橋渡しをしてくれたJSOLには非常に感謝しています。分析レポートは、社内への報告や協議に役立っています」と口にします。

マネーロンダリング対策は多くの銀行が協力し情報を共有することでさらに強化されていきます。「Secure Paymentが業界のスタンダードになり、多くの銀行で使われるようになれば、日本全体の銀行のコンプライアンス、セキュリティーの底上げにつながるでしょう。そして日本のマネーロンダリング対策が世界に匹敵するものになればと願っています」と高瀬氏はSecure Paymentの普及に期待を寄せています。

左から、JSOL 御園 康史、伊予銀行 野中 希氏、高瀬 靖氏、続木 聖三氏、JSOL 藤田 博生

企業情報

名称

株式会社 伊予銀行

本店

松山市南堀端町1番地

創業

1878年(明治11年)3月15日

資本金

209億円

従業員数

3,029人

  • 2018年3月31日時点

拠点数

152(本支店143、出張所7、駐在員事務所2)

  • 2018年9月1日時点

事業内容

金融・情報サービス

WEBサイト

(2020年03月現在)


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