チャットボット×有人チャット×電話を組み合わせ、デジタルとリアルを融合させた「コンタクトセンター構想」
その実現に向けAIチャットボット「Collam」を導入

郵政民営化に伴い、日本全国に広がる約2.4万の郵便局ネットワークを生かした金融機関として設立されたゆうちょ銀行。経営理念として「お客さまの声を明日への羅針盤とする“最も身近で信頼される銀行”を目指します」を掲げ、お客さまにとっての安心と利便性を追求している。その一環として取り組んでいるのが「コンタクトセンター構想」だ。従来の電話による問い合わせ対応を行うコールセンターに、チャットボット、オペレーターなどによる有人チャットを加え、コンタクトセンター化することで、デジタルとリアルの融合を図ろうとしている。そのチャットボットに採用されたのがJSOLの「Collam」だった。

課題・解決・効果

課題

  • 電話対応を行うコールセンターに、チャットボット、有人チャットを組み込んだコンタクトセンター化を実現したい

  • 以前から利用していたチャットボットは回答精度が低く、メンテナンスの負担が大きかった

解決

  • JSOLが扱う対話型AI自動応答システム「Collam」を導入

導入効果

  • 24時間365日体制で、お客さまからの問い合わせに対応可能

  • 正答率が85%まで向上

  • コールセンターの入電数を抑制、オペレーターは難易度の高い問い合わせ対応に注力

  • パンデミックや災害に備えたBCPにも対応

  • 同じ意味を持つが言葉の表現が異なるFAQを自動生成できるなど、メンテナンスの負担が大幅に軽減

  • チャットボットと有人チャットの連携が可能

前列左から、JSOL 清宮 晨博、井ノ口 恵美、株式会社ゆうちょ銀行 コールセンター部 マネジャー 川野 友実絵氏、
コールセンター部 主任 椛木 貴幸氏、コールセンター部 主任 秋山 愛氏
後列左から、JSOL 武井 力、真鍋 慶崇、代表取締役常務執行役員 名倉 明彦、
株式会社ゆうちょ銀行 常務執行役 田中 隆幸氏、コールセンター部 部長 山浦 実氏、
コールセンター部 グループリーダー 大石 和輝氏

デジタルとリアルが相互補完しながら、お客さまをサポート

 ゆうちょ銀行が推進しているコールセンター変革。その狙いについて、常務執行役の田中隆幸氏は、「私たちが目指すコンタクトセンター構想は、デジタルチャネルであるAIチャットボットと、リアルチャネルである電話、有人チャットが相互に補完するものです。さらに実店舗も含めた形で、リアルとデジタルが共存しながらサービスを提供することが私たちの強みです」と説明する。
 利用者からの問い合わせには、無人の「チャットボット」が24時間365日対応で受け付ける。そしてチャットボットで解決できない問い合わせは「有人チャット」が対応し、チャットボットのプレゼンスを高める。それでも解決できない問い合わせには「電話」で対応する。
 コンタクトセンター構想は、簡単な内容であればチャットボットと有人チャットがスピーディーに対応し、複雑な内容であれば電話によりきめ細かな対応を行うことで、お客さまの利便性を高めるというものだ。

ゆうちょ銀行のコンタクトセンター構想(イメージ) 

ゆうちょ銀行のコンタクトセンター構想(イメージ)

JSOLのCollamに刷新。60%で頭打ちだった正答率が85%まで改善

株式会社ゆうちょ銀行 営業部門 コールセンター部 部長 山浦 実氏

株式会社ゆうちょ銀行
営業部門 コールセンター部
部長 山浦 実氏

 コンタクトセンター構想の実現に向け、ゆうちょ銀行は2020年5月にJSOLが扱う対話型AI自動応答システム「Collam」を導入した。Collamの特徴は、回答精度の高さとメンテナンス負担の小ささである。
 ゆうちょ銀行では以前からチャットボットを利用していたが、営業部門 コールセンター部 部長 山浦 実氏は「以前のチャットボットは回答の元になるFAQのメンテナンスにかかる負担が大きく、正答率も60%程度で頭打ちでした。そこで精度を上げようと模索したものの、改善策が見いだせずにいました」と当時を振り返る。
 そこで新たなチャットボットへ刷新することになり、採用されたのがCollamだったのである。「Collamはどこに手を加えると正答率が改善するかが明確でした。FAQの分類キーワードであるトピックレベルを調整し、想定される質問候補を提示しやすくしたり、同じ内容だがお客さまが使う言葉が異なるFAQを自動生成できるゆらぎ生成辞書を整備することで、正答率が段階的に上がっていきました」(山浦氏)
 導入後、チューニングを繰り返したところ正答率は85%に達した。その結果について山浦氏は「正答率85%というのは客観的なテストの成績。一定期間のチャットボットへのお客さまの入力履歴からテスト質問を作成し、現行のAI-FAQでどの程度、正しく回答できるかを算出した比率です。そのため、新たなお客さまが利用してくれた場合、その正答率を維持できる保証はありません。私はコールセンターでお客さま対応を行っている担当者の主観(肌感覚)を重視しており、その評価が低ければ、次のステップには移行しない考えでした。精度が低い状態で利用促進を図っても、使えないチャットボットという悪評が広まるだけですから」と説明した。
 その主観的な評価を任されたのが、Collamの運用を担当している営業部門 コールセンター部 コールセンター企画担当 主任 椛木 貴幸氏だ。コールセンターのスーパーバイザーの経歴を持つ椛木氏は、ITリテラシーが高く、お客さまからの問い合わせ対応を熟知していた。
「実際にお客さまからいただいた問い合わせをCollamに入力してみました。当初は30点程度でしたが、チューニングを繰り返すことで、80点まで改善しました。80点という値は、コールセンターでよく受ける問い合わせのうち、簡単な内容であれば回答できる品質レベルだと言えます」(椛木氏、詳細はコラム記事参照)

メンテナンス負担が大幅軽減

 Collam導入により、メンテナンスの負担が軽減された。
「AI-FAQは、お客さまからよくいただく質問と回答のデータベースです。それは、まさに長年にわたって当行に蓄積されてきた組織知であり、今後も継続的にアップデートしていくものです」(山浦氏)
 しかし、その作業負担が大きければ、細かいところに手が回らず、正答率に悪影響が出かねない。高い正答率を維持するには、無理なく効率的にメンテナンスできることが必須の条件だ。以前のチャットボットではFAQ作成・更新をすべて手作業で行っていた。それに対し、Collamは基本的なFAQを作成・更新すれば、ゆらぎ生成辞書により、同じ意味で異なる言葉表現のFAQを自動生成してくれる。

24時間365日対応のチャットボットで自己解決する利用者が増加

 Collamの導入により山浦氏は3つの効果が見えてきたという。

 1つ目は、利用者が時間と場所を気にせずに、いつでも問い合わせが可能となったことだ。
 コールセンター業界では、オペレーターの「採用難」「離職増」が慢性化しているが、特に夜間帯・土日の採用は厳しく、どこのコールセンターでも手をこまぬいている状況だ。その点、チャットボットであれば、コールセンターのオペレーターと同等とまではいかないが、24時間365日対応が可能となる。
 これはオペレーターだけでなく、利用者のメリットとしても結果にあらわれている。チャットボットの日別・時間帯別の利用者数を見ると、コールセンターへの入電数が多い時間帯(9時~17時)に多くなっており、特にスマホによる問い合わせに向いている。
「当行のコールセンターに電話していただくお客さまのスマホ利用比率は約65%。いつでもどこでも使えるのがスマホの長所ですが、電車やバスでの移動中にコールセンターに電話することはできません。しかし、チャットボットであれば、移動中でも照会が可能です」(山浦氏)
 チャットボット利用者数の多いもう1つの時間帯は19~24時の夜間帯。コールセンターが営業していない夜間帯でも、チャットボットでカバーすることができている。

 2つ目の効果は、利用者の自己解決を促進し、コールセンターへの入電数を抑制できることだ。
 コールセンターに問い合わせするお客さまの多くは、その前に、Webサイト上のFAQなどを確認している。Webサイト上のチャットボットでそれが解決できれば、わざわざコールセンターに電話する手間が省けるし、コールセンターのオペレーターも電話照会対応しなくて済む。
「ゆうちょコールセンターのIVR(自動音声応答装置)は、希望するお客さまに対しては、SMS(ショートメッセージ)でチャットボットに誘導しています。その誘導比率は約30%ですが、チャットボットの利便性がお客さまに認められれば、誘導比率をさらに高めることが可能です」(山浦氏)
 比較的簡単な問い合わせをチャットボットで対応できれば、コールセンターのオペレーターは難易度の高い問い合わせに注力できるようになる。
 また山浦氏は「当行の商品サービスのデジタル化が進む中で、チャットボットの利便性向上ニーズはますます高まっていく」と手応えを感じているという。ゆうちょ銀行ではチャットボット利用者の約70%がスマホを利用しているが、そこでの問い合わせ内容は「ネットバンキング関連(ゆうちょダイレクト、通帳アプリなど)」が多い。
 その理由について山浦氏は、「スマホでネットバンキングを利用中にわからない点が出た場合、コールセンターに電話で聞くよりも、スマホ上のチャットボットで調べられた方が、圧倒的に使いやすい」とみている。

 3つ目の効果は、BCP(事業継続計画)への対応である。商品サービスを提供する上で、何らかのトラブルが発生すればコールセンターへの入電が増加する。新型コロナウイルスの感染が拡大すればその防衛策としてコールセンターの配置人員を抑制し、受電力が減少する。入電増・受電力減により、応答率が低下した場合に備えて代替手段が必要となる。
 2020年度、ゆうちょ銀行は厳しい局面を何度となく経験した。4~5月は緊急事態宣言発令に伴い、コロナ感染拡大防止策の一環として、1/2人員のスプリットオペレーションを実施したため受電力が減少。9~10月は、キャッシュレス決済サービスの不正利用対応で入電が増加。2月には一部コールセンターでコロナ感染者が発生し営業を停止することとなり、受電力が減少。
「こうした応答率低下の局面でも、チャットボットの利用者数は増加しており、コールセンターの代替手段の機能を果たせています」(山浦氏)

チャットボットの利用者数の推移  

チャットボットの利用者数の推移

チャットボット導入のホールドポイント

 山浦氏は、これまで歩んできたCollamの導入・運用を振り返り、ホールドポイント(押さえどころ)として以下の3点を挙げている。

 1つ目はチャットボットの導入対象範囲の設定だ。Collam導入以前からチャットボットを利用していたが、最初はネットバンキング関連(ゆうちょダイレクト)の業務に限定し、2018年12月からサービスを開始した。
 当時、「ゆうちょダイレクト残高照会アプリ」「ゆうちょ認証アプリ」「ゆうちょ通帳アプリ」の連続リリースの影響などを受け、コールセンター入電に占めるゆうちょダイレクト関連の比率は右肩上がりで増加していた。そこで、コールセンターへの入電抑制効果を期待して、それらの対応をチャットボットで扱ったのである。
 その後も、チャットボットの導入対象範囲をコールセンターへの照会件数が多く、比較的簡単に対応できるものへと拡げていった。2020年には「キャッシュカード・店舗やATMの場所・営業時間」、「送金・振込」などを対象に組み込んでいる。そして2021年には、「通常貯金」や「定額定期貯金」へと拡大する予定だ。このように利用者ニーズの高いところからスタートして、徐々に拡大することがスムーズな利用につながったといえる。

 2つ目は正答率向上のためのチューニングである。利用者がチャットボットに照会する際、調べたい内容のキーワードをいくつか入力するケースが多い。チャットボットはその入力情報から複数の想定される質問メニュー(サジェスト)を提示し、そこから利用者に選択してもらい、質問内容を絞り込むことで、正しい回答に誘導する。
 正答率を高めるためには、利用者の入力履歴(聞きたい質問)と、チャットボットのAI-FAQをフィットさせるチューニングが必要だ。また、正しいサジェストが提示されるよう、分類キーワードのトピックレベルをAI-FAQに設定する。このようにして正答率のさらなる向上を狙っている。

 3つ目は、利用者数の拡大施策である。チャットボットの利用者数を増やすためには、利用者に「このチャットボットは使える!」と高い評価を得て、リピーターを増やすことが重要だ。その一方で、より多くのお客さまに利用してもらうために、併行してチャットボットの認知度向上を図ることも重要だ。
 現在、ゆうちょコールセンターのIVRからSMS(ショートメッセージ)を送信してチャットボットに誘導しているが、今後はWebサイトを閲覧する利用者に対し、フローティングバナー表示するなどしてチャットボットへ誘導する施策を実施予定だという。

コンタクトセンター構想実現に向けて、有人チャットとの連携を

 ゆうちょ銀行が目指す次のステップでは、コールセンター内に有人チャットを設置し、チャットボットで解決できない問い合わせはオペレーターなどが補完する体制を構築する予定だ。Collamは、チャットボットから有人チャットへ引き継ぐ機能を持っている。引き継いだ有人チャットの画面には、チャットボットと利用者の対話履歴が表示されるので、オペレーターなどはそれまでのやりとりを引き継いで回答できる。
 チャットボットで解決できず、有人チャット対応を希望した利用者の対話履歴を分析すれば、チャットボットの改善ポイント(FAQ、サジェスト機能、ゆらぎ生成辞書など)が見つかり、さらなる利便性向上・利用者数拡大につなげることができる。
 一方、有人チャットが加わることで、「チャットボットで回答できる部分」、「有人チャットで回答できる部分」、「電話で回答すべき部分」の切り分け・連動の整理が必要だ。
 ゆうちょ銀行では2020年10月、コールセンターにAIシステムを導入した。導入したAIシステムはお客さまとオペレーターの電話応対の音声をテキスト化し、応対に必要なFAQ・関連資料を自動表示するもので、そのコアエンジンとなるが、「電話で回答する部分」のAI-FAQのデータベースである。このAI-FAQのデータベースを作成・更新し、それを発射台に、「チャットボットで回答できる部分」、「有人チャットで回答できる部分」のAI-FAQを切り出し・加工して使えれば、AI-FAQの作成・更新作業がモレなくダブりなく、効率的に実施できると見込んでいる。
 山浦氏は「当行が目指す最終ゴールは、チャットボット×有人チャット×電話を組み合わせたコンタクトセンター化です。その実現を担う、チャットボットと有人チャット対応については、今後もJSOLの提案力、実行力に期待しています」とJSOLへの期待を口にした。


【コラム】チャットボット導入秘話

お客さま対応で培った「肌感覚」を、チャットボットの精度向上に生かす

株式会社ゆうちょ銀行 営業部門 コールセンター部 コールセンター企画担当  主任 椛木 貴幸氏

株式会社ゆうちょ銀行
営業部門 コールセンター部
コールセンター企画担当
主任 椛木 貴幸氏

 私は、以前福岡コールセンターのスーパーバイザーとして、実際にオペレーターのサポートやお客さま対応を行っていましたが、2020年10月、本社に着任しました。
 着任当初、お客さまに成り代わり、当行チャットボットの出来栄えをテストしてみると、主観評価で30点という結果でした。評価の低い理由は、お客さまがよく使う言葉、よく使うだろう言葉で質問を入れても正しい回答がうまく表示されないところでした。
 そのため、真っ先に着手したのが「ゆらぎ生成辞書」の充実です。「ゆらぎ生成辞書」はお客さまがチャットボットに調べたい内容のキーワードを入力した際、正しいFAQが引っ掛かりやすいようにするために、AI-FAQに設定するキーワード群のこと。例えば、「ログイン」という言葉ひとつとっても、「ログオン」「サインイン」など、さまざまな表現があります。そこで、同じ意味を持つ異なる言葉でも対応できるようにゆらぎ生成辞書を整備することで、お客さまが異なる色々な表現の言葉を使っても、正しい回答に誘導できます。福岡コールセンター時代に培った「肌感覚」を拠り所に、お客さまとのやりとりシーンを思い浮かべ、ゆらぎ生成辞書を充実させた結果、なんとか60点まで引き上げに成功しました。
 しかし、山浦部長からは「椛木さんの見立て(主観評価)で80点に到達しないと、自信を持ってお客さまにはお勧めできない」と一喝されました。そこで、お客さまの入力履歴を分析していたところ、最近、利用者数が急増している「ゆうちょ通帳アプリ」に関する問い合わせが多いことに気づきました。そして、それらのAI-FAQを充実させていった結果、なんとか80点まで引き上げられました。
 まだまだ100点には到達していませんが、これからも、お客さま目線で試行錯誤を繰り返し、チャットボットの利便性向上、利用者数拡大に取り組んでいくつもりです。


対談者の紹介

株式会社ゆうちょ銀行
営業部門 コールセンター部
部長 山浦 実氏

 略歴

1992 年

早稲田大学大学院・理工学研究科・機械工学専攻(経営工学)修了
同年、三菱総合研究所に入社
自動車・精密機器メーカー、電力・ガス会社、JP グループ各社を中心に、コンサルティング業務に従事

2008年

ゆうちょ銀行・事務企画部に担当部長として出向し、その後転籍

2016 年

システム統括部(兼 経営企画部・FinTech 対応PT) 担当部長

2017 年

営業第三部 札幌コールセンター長

2020 年

コールセンター部 部長

企業情報

会社名

株式会社ゆうちょ銀行

本社所在地

東京都千代田区大手町二丁目3番1号 

設立

2006年9月1日

事業内容

銀行業

WEBサイト

郵政民営化に伴い、2006年9月1日に株式会社ゆうちょ(準備会社)として設立。
2007年10月1日に日本郵政グループが発足し、株式会社ゆうちょ銀行へ商号変更し開業。2015年11月4日に東京証券取引所市場第一部に上場。
「お客さまの声を明日への羅針盤とする“最も身近で信頼される銀行”を目指します」を経営理念に掲げ、ゆうちょ銀行の強み・営業基盤にデジタル化を融合し、お客さまへ「新しいべんり」「安心」を提供していきます。

(2021年04月現在)


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