• 自動車の安全性の向上

  • 環境にやさしい技術開発

3.人々に保健と福祉を、9.産業と技術革新の基盤をつくろう、13.気候変動に具体的な対策を

自動車の衝突安全性の確保は、自動車設計要件の中で最も重要なもののひとつです。衝突安全性を評価する指針である法規やアセスメントはより高度化、複雑化する一方、環境問題への対応から車体のさらなる軽量化が求められています。
高い衝突安全性能を、より重量の軽い車体で実現するためには、軽量な複合材料の適用や車体構造の最適設計などが必要です。また、乗員安全性や歩行者保護設計では、高精度な試験デバイス(バリア、ダミー)を駆使する必要があります。

これらの設計を効率的に行うためには高度なシミュレーション技術は不可欠です。CAE(Computer Aided Engineering)を利用し物理現象をコンピュータ上で再現することにより、実験では得られない車両の内部構造の変形や各部位の干渉状況、荷重やひずみ、応力といった物理量を分析が可能となります。また、試作機による実験数を大幅に減らすことができます。これによって、自動車の開発にかかるコストを大幅に削減し、開発期間を短縮しながら、自動車の安全性を飛躍的に向上させることが可能となっています。CAEは、今や製造業にとって、なくてはならない設計ツールになっています。

車両衝突解析

乗員安全解析

当該ソリューション&サービスの今後の展開。新規性・強みなどをアピール

当社は、1980年代から衝撃・構造解析ソフトウェアLS-DYNAの取り扱いを開始し、現在では、日本国内のほぼすべての自動車メーカーで利用していただいています。
LS-DYNAを中心に、自社開発のHYCRASHなどの車両衝突解析ツールを組み合わせて活用することで、車体は頑丈でありながら、衝突の際にはつぶれやすくして、衝突した相手や自分自身の衝撃が少なくなるように設計することができます。

また、乗員の安全解析にかかせないダミーモデルやトヨタ自動車様と豊田中央研究所様が共同開発された人体有限要素(FE)モデルTHUMSを取り扱っております。
モデル化された人体の頭部、胴部、関節部や内臓器官などの材料物性は、複雑な人体の構造を有限要素モデルで表現し、衝撃が加わった際の人体の動きや傷害を解析することができます。骨折や内臓の傷害評価や筋肉の緊張状態も表現可能な、人体に近いこれらのモデルは、自動車の衝突による人体傷害の評価だけでなく、様々な分野で衝撃が加わった際の人体の動きや人体傷害を評価するために利用されています。

他にも、事故の際に人体を守るエアバックの「エアバッグ折り畳み解析システム JFOLD」やシートモデルや拘束装置のモデル設定を効率化する 「シート設計のための統合ツール J-SEATdesigner」など、LS-DYNAの周辺ソフトウェアを自社開発し、安全設計に貢献しています。

エアバッグは、自動車衝突時に乗員を保護する重要な安全装置であり、小さく折り畳まれて自動車内に格納されています。しかし折り畳みパターンにより展開挙動が変わることが知られており複雑に折り畳まれたエアバッグモデルを作成することは困難でした。JFOLDは、エアバックの複雑な折り畳み工程を管理し、動作を確認することができます。

衝突・安全解析ツール

衝突・安全解析ツール

社会への視点

自動車メーカーは1980年代から衝突安全設計にCAEを取りいれるようになりました。この30年でCAEで活用されるモデルの詳細度は約4,300倍となり、それに反比例するように交通事故による国内の死亡者数は減少しており、2016年度は4,000人を割りました。これはピークの1970年17,000人から1/4以下です。様々な要因があると思いますが、CAEによる仮想空間での車体衝突性能の検討に基づいた車体番設計はこの死亡者数減少に大きく貢献したといわれています。

かつては、テスト車を何台も用意してダミー人形を乗せ、様々な状況で自動車を衝突させてデータを取っていました。当然ながら試作車の製作には、膨大な費用と時間がかかりますが、CAEは、試作レスにより、試作機を大幅に減らすことができるため、環境にもやさしい技術といえます。

自動車の衝突安全設計を取り巻く状況は日々進化しています。自動運転になっても、100%衝突を防ぐことはできません。今後は、例えば、搭乗者の姿勢も従来の前をむいてハンドルを握った姿勢とは全く違う形へと変わってくる可能性があります。こうした状況でも、全方位で安全性を確保する必要が出てきます。また事故が起こった際の、歩行者に対しての安全設計も重視されてきています。

近年、自動車業界は大変厳しい競争の波にさらされています。グローバル化が急速に進む中、安心・安全な製品を、安価にかつ他社に先駈けて世の中に提供しなければなりません。当社は長年にわたってお客さまとともに育んできた「衝突・乗員安全解析」の知見をもとに、ますます高度化する自動車の安全設計に貢献していきます。

【用語説明】CAE(シーエーイー:computer aided engineering)

コンピュータによって支援された、製品の設計・製造や工程設計の事前検討などといったエンジニアリングの作業またはそのツールなどで、解析対象をモデル化(数理モデル化)し、数値解析手法で計算します。
ここでは設計した構造物が要求性能を満たすかどうかを、実際に物を作る前にコンピュータ上でシミュレーションして調べることを言います。
CAEを利用することによるメリットとしては、「開発期間の短縮、試作や試験コストの削減、実測が困難な条件下での設計検討等」があげられます。