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テーマ2シミュレーション科学の自然災害研究の有効性

猿渡 先ほど、JAMSTECと大阪大学の共同研究プロジェクトを行ったというお話がございましたが、自然災害研究におけるシミュレーション科学の有効性といったものを改めて確認させていただけますか。
橘 共同研究プロジェクトを素材に僕から話しましょう。高層建物の動的な解析では、通常は各階ごとに一つの質点で表す、いわゆる「串団子モデル」が用いられます。それはそれで要点をおさえた簡便なモデルなのですが、どうも物足りない(笑い)。串団子モデルではどうしてもとらえにくい挙動があるのではないかと気になって仕方がない。
私が佐藤先生に「地球シミュレーターでやってみたい」とお願いしたのは、鉄筋を1本1本きちんとモデル化して見たいし、もちろん輪っかのように巻かれている細いフープ筋やあばら筋も忠実にモデル化したい、コンクリートは10センチ程度のサイコロ状の有限要素に分割し、かつ杭や周辺地盤も含んだ一体化したモデルとして解析してみたい、だからこそ「地球シミュレーター」のようなパワフルなコンピューターが必要だと思ったからなのです。
猿渡 まさに構造解析学の専門家としての橘先生の宿願だったのですね(笑い)。
佐藤 佐藤しかし橘先生のお話は、2000年代初頭のスーパーコンピューターによるシミュレーション科学の本質的な部分を見抜いていらっしゃった。つまり「地球シミュレーター」というスパコンの大きな効能は、地球を丸ごとシミュレーションできることを実証した点にあるのです。キーワードは「丸ごと」です。
そもそも「地球シミュレーター」というスパコンのアイデアは、科学技術庁航空宇宙研究所、今のJAXAにいらした三好甫さん(故人)らが計画を練られたもので、1997年の京都議定書の地球環境保護という流れに乗って「地球シミュレーター」として実現しました。しかし三浦さんはシミュレーター開発者なので、対象分野を気象に限る気はなかった。気象は半分ぐらいで、後の半分はいろいろな分野に開放して有効に使おうと考えられた。そうした流れのなかに橘先生との共同研究もあるのです。
猿渡 結果的に先生方のプロジェクトは中断してしまったとのことですが、それでもどのような成果を確認できたのでしょうか。
橘 解析にはJSOLが取り扱っている衝撃シミュレーションソフト「LS-DYNA」を使い、多くの知見を得られました。例えば、地震荷重の応答解析結果をアニメーションで見ながら、ここぞと思う時点で一旦ストップする。そして、その一部を拡大してコンクリート部分や梁の付け根あたりの鉄筋の軸力変動を見るとか、柱と梁の部分をまとめて縦方向にスパッと切って主応力の流れを見るとかです。いずれも「地球シミュレーター」を使わなくてもある程度は分かっていたことですが、上下衝撃荷重では床の中央部で大きく増幅することや、水平荷重では杭に生じる応力は外側に並んだ杭と内側に配置された杭とでは分布が異なることなど、多くの新発見もありました。
何よりも、「建物全体の鉄筋1本1本までモデル化し、さらにそれだけでなく杭も地盤も合わせてモデル化して丸ごとシミュレーションする」という素朴な目的のための突破口が開かれたのは、「地球シミュレーター」のおかげでした。もちろんそれは佐藤先生のおかげでもあり、感謝申し上げなければならないのです。
猿渡 猿渡シミュレーションの大規模化、いわゆる『丸ごとシミュレーション』はものづくり分野への影響も大きくなっています。
例えば従来の自動車衝突安全設計の分野では、衝突時における車体変形や減速加速度などの評価が主な目的で、ボルト締結部やスポット溶接など細部の詳細な破壊現象は同時にシミュレーションすることができず個別の現象として検討してきました。しかし近い将来、衝突時に細部の壊れ方までを丸ごとシミュレーションで表現することができるようになると考えられます。そうなれば変形〜破壊のプロセスが明らかになり、仮説で処理してきた現象や想定外にあった現象を含めた総合的な評価が可能になります。そしてそれらを設計に反映することにより、安全・安心な製品づくりの向上にさらに貢献できるようになります。
また最近では流体や構造、電磁場といった異なる現象を連携させてシミュレーションする技術も進んできています。
自然災害研究においても、丸ごとシミュレーションすることによって、個別の現象に関する研究を深めるだけでなく、各現象の相互作用や関係性といったものも考慮した総合的な研究ができるのではないかと考えています。

(2012年03月現在)

3.細分化された研究に横串を入れ、総合科学としての防災を可能にする→


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