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テーマ3細分化された研究に横串を入れ、総合科学としての防災を可能にする

佐藤 丸ごと分析は、自然災害でも同じなんです。災害研究は、各研究者が個別に研究成果を深めていましたが、それは研究テーマ間のかい離を深めるというか、連携を難しくする一因にもなっていました。そこに横串を刺すかのように研究成果同士を結んで総合的な成果を得るための紐帯としてシミュレーション技術が活躍するのです。
コンピューターの一番重要な役割は「未来を見ていく」点にあり、広く情報を集めシステマティックに組み立てていくことによってその「未来の確からしさ」というものが出てくる。そもそも未来とは総合的で学際的なものなのです。
猿渡 「学際的」「総合的」というお言葉がありましたが、今回のDS'11では、情報通信に始まり、免制震構造、地盤・構造材料、破壊力学、津波と衝突問題、地震波動伝搬などさまざまな分野からの発表がありました。かく言う私たちJSOLも、津波衝撃シミュレーションやRC防護壁に対する列車衝突衝撃シミュレーションなどを発表させていただきました。シミュレーション科学の適用領域や活用法はまだまだ広がると実感しました。
関連参考事例 <SPH手法を用いた津波シミュレーション> 関連参考事例 <SPH手法を用いた津波シミュレーション>
関連参考事例 <SPH手法を用いた津波シミュレーション>
RC防護壁に対する列車衝突衝撃シミュレーション
RC防護壁に対する列車衝突衝撃シミュレーション
橘 狭い意味で適用領域といえば、それはシミュレーションで設定されている仮定の範囲内です。しかし、シミュレーション科学には、シミュレーション結果を現実世界に当てはめてみたり応用してみるという意味で、私たちが想定する以上の領域があるかもしれないし、結果から逆に現実を評価し直すという意味でも活用範囲は広い。というのも、我々は現実を見ているようでも先入観にとらわれて意外と見えていない部分も多いからです。
佐藤 これまで、シミュレーション科学に対するアカデミズムの見方は、さほど高くはありませんでした。さまざまな具体例を想定するのがシミュレーションですが、昔流の演繹性を重んじる理論からすれば、その具体例には普遍性がないと評価されてしまう。特に理工系の先生たちには、新しい概念が導き出されないとダメという傾向がありました(笑い)。しかしスパコンの性能が向上し、さまざまな具体例から帰納的に普遍性を導き出していくことが可能になってきており、ここに来てシミュレーション科学は学問の役に立つのだと認識されるようになってきました。
猿渡 そうすると災害研究におけるシミュレーションの活用でも、従来にはない、まったく新しい領域開拓が可能になるのではないでしょうか。つまり自然や物理現象の解明だけでなく、従来は対象としてこなかった人間行動とか社会のあり方も含めた「丸ごと」が可能になってくる。
佐藤 おっしゃる通りです。災害とシミュレーション科学の関係を考えるときに「人間」という軸が1本立ちますね。
どのような原因で、どこで地震や津波が発生するのか。このシミュレーションはまさに工学的、理学的なシミュレーションの世界です。その他にもう一つ、災害が起きた時にいかに人命を守るのか、その方法はあるのかというシミュレーションがあります。キャッチフレーズ風にいえば「防災から減災へのシミュレーション活用」とでもなりましょうか。単なる工学的な領域を超えて人文科学の領域に入っていくシミュレーションです。DS'11でも、アジアから参加なさった先生たちは、この点に最も関心を寄せられていたようです。
橘 建築構造設計とシミュレーションの関係を考えると二つの特徴がありますね。まず、建築物は自動車などと異なり一品生産であり、設計に多くの時間を割けない。二つ目が巨大地震の再現機関が数十年から数百年単位であるということ。このため、まじめに設計しても、その良さがすぐに社会に知ってもらえるわけではないので、結局は「基準通りでいいや」と安易な方向に流れがちになってしまう。しかしケースバイケースで基準でカバーできないところもあるわけで、だからこそシミュレーション科学の活用が重要になります。それを促すには、たとえば損害保険会社の査定技術がもっと深く関わってくるといった取り組みが必要でしょう。
佐藤 僕は、そうした流れを「シミュレーション科学からシミュレーション学へ」といっているのです。実際、兵庫県立大学がつくった大学院研究科の名称は「シミュレーション学研究科」です。つまり、人間を中心に据えてシミュレーション技術の活用と向上を考えてみるというものです。「人間は、あらゆる現象を解明できるのだ」という西洋的な解釈科学の限界に対する新たなアプローチがシミュレーション学であるともいえます。
言葉を換えれば、普遍の法則性は乏しいが、人間集団がつくり出す法則性を探り、それを新しい社会システムをつくるために利用する。それがシミュレーション学です。科学的な分析と人間を軸とする二つのシミュレーションのミックスが、今後は有効になっていくでしょう。
橘 そういう意味では、現在、大きな社会的な問題になっている原子力発電などのエネルギー問題でも、単に原子力が怖いとか危ないとかではなく、シミュレーション学によってソリューションを構築していくような姿勢があっても良いと思いますね。

(2012年03月現在)

4.シミュレーションの実用化を実感させ、広めるソフトの投入を→


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