(2017年11月現在)

社内外で通用する高度な専門能力を備え、お客さまのビジネスに貢献して真の信頼を得ている人財を認定するJSOLの「プロフェッショナル」制度。アプリケーションコンサルタント、ITアーキテクト、プロジェクト・マネジャー、マーケット・リプリゼンタティブ(MR)、ビジネスプロフェッショナルの5種の認定があるが、現在JSOLにおいて唯一のMR認定者が村上隆である。いわば“IT営業のプロ”。その仕事はどのようなものであり、村上のどこに営業のプロとしての神髄があるのだろうか。

JSOL認定プロフェッショナル
マーケット・リプリゼンタティブ
村上 隆

新たなクルマづくりを加速させる「グループ包括契約」

村上は現在、「CAE(Computer Aides Engineering)ソリューション」と総称される各種の解析ソフトウエアの営業を担っている。「LS-DYNA」に代表される各種の衝撃・構造解析、「JMAG」に代表される電磁界解析、「JSTAMP」に代表される生産技術解析、そして「J-OCTA」に代表される材料解析などの各種ソフトウエアだ。いずれも最先端の学術的成果が盛り込まれているシミュレーションソフト群である。
村上は、各メーカーのR&D部門だけでなく生産技術部門へのCAEソリューション提案にも精通していることがMR認定の大きな評価点となった。

最近も大手自動車メーカーに対して衝撃・構造解析ソリューション提案を行い、「グループ包括契約」という成果を創造した。
「環境と安全に配慮したクルマづくりの推進のため車体の軽量化や自動運転技術の導入研究が本格化しています。そうしたなかで衝撃や構造の解析シミュレーションの精度の高度化への要望も強まっています。その期待に応えるのがJSOLのCAEソリューションなのですが、同時に、グループ各社が共通したソリューションを利用することでデータを共有して開発を加速させようとする動きも強まっています。今回のグループ包括契約も、こうした流れに対してJSOLが提供できるソリューションの内容やコストがお客様に高く評価されたものと考えています」

グループ包括契約とは例えば、基礎研究部門、本社の開発設計部門、衝突安全性などについて最終検証をする法規部門、さらにクルマを製造する生産部門などが同じシミュレーションソフトを使ってデータの多重的な利用を進め、各部門が検証を重ねることで結果的に安全性能の大幅な向上と開発期間の短縮化をめざすといったイメージである。
「衝撃・構造解析ソリューションをご存知の方でも時々驚かれるのが、LS-DYNAなどは製造部門での加工成型のシミュレーションとも相性がよく、設計部門の考え方の擦り合わせが非常にスムーズになります。日本のものづくりの力は、異なる部門間の擦り合わせ力の強さだと指摘されていますが、JSOLのCAEソリューションはまさに擦り合わせの力をさらに強化できるものとなっているのです」

にしてもである。JSOLのCAEソリューションでは全国に20人ほどの営業担当者がいるが、なぜ村上だけがプロのMRとして認定されているのだろうか。その背景には、村上の該博な技術知識と、それをベースにした技術者支援、そして技術者の特性を知り抜いたアドバイス力などがある。結論を先に書いてしまえば、村上はCAEソリューションにおける"タグボートの船長"なのである。

売るのではなく一緒に考えるソリューションを提供する

東京・勝どきのJSOL本社オフィスに村上のデスクはあるが、1週間に一度も姿を見ないことが珍しくない。いわゆる直行・直帰で地方都市に点在している自動車メーカーの研究所や工場を訪ね歩いているのだ。
「CAEソリューション部門の営業担当者は1人で数十社のお客様を担当していますが、基本的にお客様1社につきCAE部門としては担当営業は1人です。ですから地方に複数の工場をお持ちのお客様ならば、1人で各地を訪問し、現場の方々との関係を維持していかなければなりません」

営業担当なのだから、その仕事は、CAEソリューションの利用頻度を上げてもらうと同時に、新規の利用者(数)を増やすことである。しかし村上が力を注ぐのは、シミュレーション解析に主導的に取り組み、村上のカウンターパートになってくれる人物を探し、関係を深めることだ。最終的には利用者拡大をめざしているものの、「その前に、もっと地道につくっておかなければならない関係性が技術営業の世界にはあります」と言う。

LS-DYNAにしてもJMAGにしても、日本では業界標準と言えるほど普及しており、どの事業所でもなんらかの形で利用されている。それを糸口にして村上は、研究や開発の担当者が「今、なにをしたいか」の聞き込みに全力をあげる。
相手先が本当に悩んでいる課題は、最先端の課題なので対応するにも準備がいる。「これさえあれば」という"なんでもドア"は技術の世界ではありえない。しかし同時に、本当の課題や悩みを知り得なければ解決策を見いだせないのも事実なのである。

マーケットリプリゼンタティブ 村上 隆

「シミュレーションソフトの解析精度が上がれば上がるほど、これまでには見えていなかった未知の世界、課題が浮かび上がり、『この課題なんだけど、JSOLさんのソフトでなにかできませんか』と聞かれたら、『難しいですね』とは絶対に言えません。実際は、難しいと思っていても次の対策を提案してパートナーを組みます。ここからが本当の営業の始まりだと思っています」

村上は、LS-DYNAやJMAGを利用した課題解決を持ちかけられた場合、難しい課題であればまず、JSOLでの有償の受託研究を提案する。つまり相手先の課題をJSOL側で引き取り、お金はいただくものの共同研究の形を取るのである。JSOL側の技術者は、そこで相手先に貼りつく。
基礎研究部門からの依頼であれば、受託研究の期間は数年におよぶことも珍しくない。「しかし、それでよいのです」(村上)。なぜならば研究は、相手先には研究投資のリスクを回避する手段を提供し、JSOLにとっては最先端の研究を通じて知見を蓄積する場となるからだ。

「受託研究の結果、期待に応えられた成果が出れば『このCAEソリューションはいいね』と言っていただけます。実際、JSOLのCAEソリューションは、すべてと言ってよいほどに良好な成果を生み出しています。それはJSOL技術陣の力量の高さであり、私はそこで初めて新規契約をお願いし、他のバージョンを使っている部署の方への新バージョンのPRもお願いします。そうしたことを積み重ねていたら、研究所や工場回りをしているとなにがしかの受注が、ちょこちょこと生まれてきました」

技術者たちの盛り上がりとは一線を画す冷静さの理由

受託研究にしろ相談にしろ、村上が営業担当としていつも気を配っていることがある。それは、「技術者たちの高度な課題に対する関心とは、一線を画して考える」である。

マーケットリプリゼンタティブ 村上 隆

お客様がCAEソリューションに求める精度は非常にシビアだ。衝突解析では、解析結果に基づいてつくられた試作車が、一発の実車試験でシミュレーション解析の結果と同じ結果を出さなければならない。解析結果通りでなければ、設計の見直しに時間がかかり、試作車づくりのための金型の製作費用もかさむ。また新車発表に向けたマーケティング部門の準備にも大きな影響を与えてしまう。

「だから御相談いただく精度向上に向けた課題のレベルは非常に高い。同時に技術面で対応するJSOLの技術者も、ハードルが高ければ高いほど燃えます。お客様もJSOLの技術者がレベルの高い反応をすると、『面白いね』と反応しがちです。僕もかつては技術者だったので分かるのですが、技術者というのは難解な問題ほど好きなのです。しかしそれで、いいね、いいねと言い合っていると必ず話が合わなくなる。炎上してしまうのです(笑)。それは僕の経験則です」

課題と対応できる技術について、必ず誰かが"冷静"に評価し、取り組みの順位付けを明確にしなければ、むしろ技術者の関心テーマばかりが先走りして課題の解決から遠のく。それが村上が営業担当として肝に銘じていることだ。つまり取り組みの順位付けと投入すべき技術の枠を技術者たちに自覚させる役割を担う人物がいなければならない。それが営業担当なのだ。
それを成すには、営業担当自身にも充実した技術知識が不可欠だ、実は村上には、大学を出た後の7年間のCAE業務への従事と8年間のCAE営業という2つのキャリアが重なっている。これが現在の村上の営業スタイルを可能にしている。

「お客様が私に声を掛けてくださるときというのは、必ず現在の状況からなにか切羽詰まった課題が派生しているときです。その際、技術的な課題のレベルの高さや困難さもさることながら、お客様がシリアスになっている理由やシリアス度を嗅ぎ分けるというか、見極めて段取りを用意するのが営業担当としての腕の見せ所だと思っています。数回の打ち合わせを通じて、CAEソリューションで解決できることとできないことを明確にして、その上で工夫すべき点や思い切って研究費用を投じる部分についてお客様だけでなく、JSOLの技術者と握る。これが実は、急がば回れで、満足のいく成果につながりやすい」

冒頭に村上について「タグボートの船長」と紹介した。大型客船や貨物船を安全に港内に導き、所定の位置にピタッと接岸させるタグボート。どんなに優れた技術同士が出会っても、それを確実に成果へと導く「別目線」の水先案内人がいなければ技術は空回りを始めかねない。現代の技術は高度化しているが故に、そうした罠にはまりやすい。村上のような営業担当の存在は、営業という枠を超えて必要とされてきている。

「売るならば一流の製品を売りたいと思いました」

JSOLのプロ認定で唯一のMRである村上は、1969年、横浜に生まれた。
東洋大学工学部で情報工学を学んだ後、IT技術者の派遣会社に入り、大手トラックメーカーの設計現場でCADやCAE(Computer Aided Engineering)業務に従事してCAEのオペレーションを学んだ。7年後には、情報商社に転じ、今度はCAD・CAM・CAEソリューションの営業に関わるようになる。

「転職先は非常にチャレンジングな会社で、私がやってみたかったことのなにがしかの仕事が必ずありましたし、やらせてくれました。この会社での8年間は、私にさらなる夢を与えてくれることにもなりました」

情報商社当時、現在も取引がある大手自動車メーカーに出入りするようになりJSOLのLS-DYNAやJMAGなどの存在を知る。2000年ごろのことで、ハイブリッド車や電気自動車の開発が加速し始め、車体構造や電気系統の設計思想の変更など、クルマづくりが大きく変わろうとしていた時期だった。そこで活躍していたのがLS-DYNAやJMAGだったのだ。

「営業担当として力がついてきているのが自覚できるようになりました。そうすると、より売ってみたい物を売りたくなるものです。もし次に転職して自分が挑戦するのならば構造系のソリューション、つまりLS-DYNAやJMAGしかないなと分かっていました」

JSOL(日本総研:分社前)に転職したのは2007年。以後は、本人の願い通りに力量を発揮する日々となった。

マーケットリプリゼンタティブ 村上 隆

村上自身は、「今の私を支えてくれているのは情報商社時代からのお取引先との人脈であり、当時は若かった人たちが昇進して決定権限も持つようになり、それでいろいろな仕事をいただけるようになりました」と謙虚に語る。
しかしお客様からの信頼を失わず、一緒に歳を重ねていけるのは営業担当、否、1人の仕事人として極めて大切なことではないだろうか。それは村上が、お客様を単なる発注先ではなく共に悩み、課題を解決する存在としてリスペクトしてきた結果でもある。

インタビュー中に、「難しいことを言ってくるお客様がお金を持っているわけではない。JSOLの解析技術者に、それを知らしめ、課題解決のさじ加減をはかるのが営業です」と言った。この冷静さと合理性もまた優れた営業担当者ならではないか。


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