これから社会で考える『備え』

2020年10月9日、23日の両日、東京都千代田区の3×3 Lab Futureにおいて、「社会デザイン・ビジネスラボ 研究会 第2回【テーマ:災害対応】 これから社会で考える『備え』」を開催しました。

DAY1

【会長挨拶】事業と結びつく災害対応を目指して

Day1(10月9日)は、中村会長による挨拶から始まりました。

立教大学大学院
21世紀社会デザイン研究科 教授
社会デザイン研究所 所長
社会デザイン・ビジネスラボ会長
中村 陽一

中村:
今回のテーマは「災害対応」です。このテーマは、社会デザイン・ビジネスラボにとってふたつの意義があります。ひとつは、多くの企業、組織がすでに取り組んでいる災害対応に新しい光を当てること。もうひとつは、災害対応が私たちの生活、社会のさまざまな場面でいろいろな事業と結びついていく重要なテーマであるということ。暮らしを守るものとしてしっかり考えていく必要があります。

【基調講演】 避難生活のQOL改善に移動式仮設住宅という新しい選択肢

基調講演として立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科 社会学部メディア社会学科 教授の長坂 俊成氏にご登壇いただきました。

立教大学大学院
21世紀社会デザイン研究科
社会学部メディア社会学科 教授
長坂 俊成 氏

長坂氏:
災害が起こると避難所に多くの人が集まります。しかし、そこでの生活でQOLが低下し、亡くなってしまう方もいるのも事実です。今後は災害そのものだけでなく、その後の避難生活にも目を配らねばなりません。

そこで考えたいのは、避難中のQOLを高める取り組みです。避難所として用意される仮設住宅は、現地でプレハブ住宅などを施工する「建築型」、自治体が借り上げた施設を提供する「借り上げ型」が中心でした。

第3の選択肢として考えているのが「移動型仮設住宅」です。トラックで運べる移動式仮設住宅は、平常時はホテルや公共施設として活用できます。そして災害時には被災地に送って地面に置くだけで、すぐに仮設住宅として利用できます。普段の生活にも使える品質なので、QOLも高められると思われます。

そして役目を終えれば別の被災地に送るなど、継続的な使用も可能です。従来の建設型や借り上げ型と組み合わせ、適材適所を考慮して活用することで、避難生活のリスクを低減できるのではないかと期待しています。

【ワークショップ】災害対応に役立つビジネスアイデアを考える(1)

基調講演のあと4グループに分かれてワークショップを行いました。幅広い災害対応の分野からチームごとにテーマを絞り、『いのべ場』のフレームワークを用いてビジネスアイデアを創出、グループ内で活発に意見を交わしました。

DAY2

【講演】 家庭ごとに異なる「災害時に役立つ防災グッズ」とは?

Day2(10月23日)では、災害対応に取り組む起業家の皆さまにご講演いただきました。最初に、防災グッズの開発販売を手掛ける株式会社カスタネット 代表取締役社長 植木 力氏にご登壇いただきました。

株式会社カスタネット
代表取締役社長 植木 力氏

植木:
防災グッズにはいろいろありますが、「災害時にしか使えない、持ち歩かないものは本当の防災グッズとはいえない」と考えています。そこでカスタネットが作ったのが、必要最小限の災害グッズを普段でも手軽に持ち歩けるようにした「防災ポーチ」です。そのなかには屋外のレジャーなどにも使いやすく、プライバシーを守れるような配慮をしたマルチポンチョなどを入れています。

そして最近では、非常時にすぐ持ち出せる、家庭用防災グッズを収めた「防災絆BOX」を開発しました。被災地を回って疑問に感じたのが、家族構成や生活スタイルが異なるのに、多くの被災者が画一的な防災グッズを持っていたこと。わずかでもお酒がないと眠れない人、ペットを飼っている人もいるでしょう。しかし、お酒やペットフードなどがなくて困っていたのです。

「防災絆BOX」には、生存に必要なものだけでなく、家庭ごとに異なる必需品を収納できるスペースを確保し、家族間でほしいものを話し合うためのメモも用意しました。また「防災絆BOX」は宛先を書くだけで、被災地に送付できます。遠くに住む親戚、友人が被災したとき、その人を知っているからこそ、本当に必要とするものを入れて送れるでしょう。

【講演】 被災者と支援者を三つのデザインでつなぐ

続いて、有志による災害時の復興を支援する一般社団法人FUKKO DESIGN 理事 木村 充慶氏にご登壇いただきました。

一般社団法人FUKKO DESIGN
理事 木村 充慶氏

木村:
FUKKO DESIGNは災害時にすぐに動ける有志チームです。被災者の「助けてほしい」という気持ちと、支援者の「助けたい」という気持ちをつなげることで、だれもができる支援活動を実現したいと考えています。

例えば2019年山形沖地震の際は、酒蔵が多い被災地を回りました。被害を受けた倉庫では、ラベルを付けていない酒瓶が倒れて、中の日本酒が何かわからない状態になり、「このままでは格安で売るしかない」という諦めが漂っていました。

そこで私たちは「中身がわからないなら利き酒を楽しんでもらおう。運が良ければ大吟醸が当たる」というアイデアから「ラッキーボトル」と名付けて売り出したところ、多くの支援者に買っていただきました。

これは、被災者と支援者のニーズをつなげることで支援が実現した例といえます。私たちが掲げる「だれもが<できる>をデザインしたい」というスローガンには、そういう思いが込められています。

【講演】 余った「ポイント」を被災地におすそ分けする

続いて、ポイントサービスを活用した支援を行うBOSAI POINT PROJECT 事務局 亀山 淳史郎氏にご登壇いただきました。

BOSAI POINT PROJECT
事務局 亀山 淳史郎 氏

亀山:
BOSAI POINT PROJECTはお金ではなく各種サービスで余ったポイントを被災地に寄付するポイントドネーション(寄付)を手掛けています。

ポイントサービスは多くの人が利用していますが、使われないまま失効してしまうポイントも少なくありません。「それなら災害支援に活用」と考えたのが始まりです。日本では寄付というと大げさに感じる人もいるでしょうが、余ったポイントをおすそ分けする活動なら向いているのではないでしょうか。

そして、普段からポイントを寄付するという行為を通して、日常で忘れがちな防災意識を高めることも期待しています。

【講演】 自然災害での被害軽減・犠牲者ゼロの実現のために官民の壁を越え、全国をつなげる

最後に、全国の公務員を中心とした有志団体よんなな防災会 発起人 竹 順哉氏にご登壇いただきました。

よんなな防災会
発起人 竹 順哉氏

竹 :
近年、毎年のように自然災害が発生していますが、防災の取り組みを進めていくうえでは、行政の力だけでは限界があると感じていました。そのようなことから、官民問わず、また、社会人・学生問わず、さまざまな立場の方々の連携が必要と考え、Facebookをプラットフォームとした「よんなな防災会」を立ち上げました。よんなな防災会は、公務員、民間企業、一社、NPO、学生など全国の防災に関心のある方々が集まった有志団体ですが、その中でも公務員が多数参加しているのが本団体の特徴です。

よんなな防災会では、定期的に勉強会や意見交換会、防災に関する取り組みの事例紹介などをオンライン中心に行っており、このような取り組みを通じて、知見の共有や、横のつながりの形成が進んでいるところです。

よんなな防災会を通じて立場を超えた連携が進み、全国に防災の輪が広がることで、各地の防災力が向上し、自然災害での被害軽減・犠牲者ゼロにつながることを願っています。

【ワークショップ】災害対応に役立つビジネスアイデアを考える(2)

DAY2のワークショップでは、DAY1で創出したアイデアをベースにチーム内で検討を深め、各チームからビジネスアイデアを発表しました。
「居住地域の危険箇所を学べる防災ピクニック」、「AIから被災状況に合わせたアドバイスをもらうサービス」「被災時に必要となる情報を提供する緊急情報提供アプリ」などの案が発表されました。
もっとも高く評価されたのは、「ライフスタイルに適した防災対策をアドバイスしてくれるAIサービス」でした。

【総評】 デジタルを地域の災害対応に役立てる「可能性の芽」を感じた

最後に中村会長が総評を語りました。

中村:
今回はデジタルを活用したアイデアが多く提案されました。そこで浮かび上がったのが地域での共生関係です。災害時にデジタルを生かしながら、現実に近いものを作り上げることで、社会が求めるニーズに近づくでしょう。必要な情報に利用者がアクセスしやすい仕組みをデザインすることで、次につながる可能性が生まれます。


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