(2020年11月現在)

ICTによってビジネスを変革していこうとするDX(デジタルトランスフォーメーション)の機運が高まっています。なかでも、エンタープライズ領域で重要視されているのが、ビジネスITという顧客接点からなるICTの活用です。JSOLにおけるSalesforce事業の立ち上げなどに関わってきたITアーキテクトの飯田 博記が、新しいビジネスへの挑戦における取り組み方について語ります。

JSOL認定プロフェッショナル
ITアーキテクト
飯田 博記

自身の専門分野とITアーキテクトの活動について

変革の時代に求められるのは、ビジネス全体の構成要素を見る力

 1999年に入社してから約20年間、製造・流通・サービス・金融 など、さまざまな業界のお客さまに対して、ビジネスITを推進する形で支援してきました。基幹システムや会計、物流などの業務システムとして用いられるコーポレートITに対して、ビジネスITは消費者や取引先とのコミュニティー連携、情報共有の基盤、CRM、コールセンターなどの顧客接点の構築のほか、将来の新しい事業につながるICTを意味する言葉です。

 このビジネスITの導入、構築、活用を支援してきた私が感じているのは、「今は『顧客を中心としたビジネス』が急速に変革していく時代にある」ということです。例えば、人工知能(AI)も実用化のフェーズに移ってきました。製造現場での効率的な製造ラインの組み方をAIでシミュレーションする。医療検査の画像からAIが疾患の可能性がある個所を指摘することで医師の診断を支援する。そのような新しい技術、ICTの活用による変化が、お客さまのビジネスの近隣で起こっている。このことは、いろいろな業界、業種で共通する動向だといえます。

 将来の変化に対応するには、単なる「業務の効率化」だけではない「プラスα」の視点を持ってビジネスITに取り組むことが肝となります。そのため、私たちITアーキテクトもお客さまの持つ課題の解決に留まらず、異なる視点を組み合わせることで、変革を身近なところで実現できるような形に促していくべきだと感じています。

 以前、押印文書を郵送していた業務を電子化するプロジェクトがありました。一般的には そのプロジェクトが「郵送業務のオンライン化による効率化、ペーパーレス化、コスト削減」として映っていたと思います。ところが違う角度から見ると、非常時における業務の継続化にも役立つのです。例えば、水害などの災害発生時には郵送も影響を受け、予定通りに書類が届かないことも起こりえます。しかし電子化しておけば、郵送状況が悪化しても影響を受けずに済みます。

 またクラウド化は、コスト削減やビジネスのスピードアップという観点で検討されるケースが多いのですが、ある製薬企業ではコンタクトセンターのクラウド化を進めていたため、コロナ禍の状況でも、従業員が出社せずにコールセンター業務を継続することができました。

 そのようにシステムを導入、構築する際は「プラスα」を見極めてお客さまのメリットにつなぐこと、環境が変わってもアジリティを持って対応できるような基盤を提供することが、ICT面からお客さまのビジネスを支えるJSOLとして、大切なことであると認識しています。

 ところで、さまざまな視点から物事を見るには、基礎となる力が必要となります。私は、1999年に入社して以降、一貫して一般産業向けのSIを担当してきましたが、振り返ると今に至るまでに3つのフェーズを越えてきたと感じています。

 最初はスクラッチSIの基盤や技術支援、具体的にはオラクルのRDBMSやデータウェアハウスなどを担当してデータベースに関する知識を蓄積し、Oracle Master、データベーススペシャリストなどの資格を取得しました。その次に、EDIやネットワーク系の案件、JavaのWebサービス、クラウドソリューションなどに関わることで、徐々に開発の上流における知識や技術を磨き、ITストラテジストなどの資格を取得していきました。そうやって入社して10年くらいの間に蓄積したスキルは、今も私の仕事のベースとして生きています。

 次の10年は、チューニングやトラブルシューティングに関する業務を担当し、近年はクラウドソリューションやSalesforceの事業の立ち上げに関わってきました。

 このような段階を経て身についたのが、「お客さまのビジネス全体を俯瞰した上で、お客さま視点で問題を解決する」という意識でした。システムに問題が生じたとき、ICT側の人間は目の前の問題に 意識が向かいがちですが、お客さまから見れば「ビジネスが回るための手段や策を見つけること」のほうが重要 なわけです。また問題がうまく解決できたとしても、行きあたりばったりや思いつきで乗り切るような運頼みではいけません。やはり「事実」と「全体の関連図」を整理した上で、仮説を立てて、問題に取り組むのがビジネスITの基本動作だと考えています。

 そのため私は基本的な行為として、愚直なまでにお客さまからお話を聞き、真意を確認することを心がけています。構築したシステムが本格稼働をした後に、お客さまから「そういう視点で話を聞いてもらったことで、自分たちの業務を深く見直すことができた」という言葉をいただいたことがあります。

現在の課題や注力している取り組みについて

一から立ち上げたSalesforce事業を、社内、社外とのつながりを重視してさらなる成長へ

 2015年ごろから、CRMや営業支援、カスタマーサービスなどのクラウドサービスを提供するSalesforceを、JSOLの事業の柱の一つとして立ち上げるプロジェクトに関わりました。Salesforce事業のリーダーを支援する立場だった私に求められたことは、技術面の支援だけではありませんでした。ソリューションやライセンス、サポートの仕組みを学びつつ、お客さまへの提案とシステム構築を行うなど、やらねばならないことすべてにチャレンジしました。

 クラウドサービス(SaaS)として利用できるSalesforceのサービスは、スクラッチで構築する方法、パッケージをベースにカスタマイズする方法に比べて、「短期間で導入できる」「品質が高いことが期待できる」という利点があります。スピーディーに高品質のサービスを利用できることは、企業にとってビジネスを早く展開でき、早く価値を得られるというメリットにつながります。当時の私の目には、Salesforceが、取引先や顧客、消費者のデータを集め変革に迅速に追従していくのに役立つプラットフォームとして映っていました。

 Salesforceのリセラーやパートナーとしてかかわるものは皆同じだと思いますが、私も「商品を扱うだけの物売り」になることなく、Salesforceの長所 にJSOLならではの良さを付加して、お客さまのビジネスの成功に寄与したいという思いを持っていました。

 Salesforceを活用してお客さまに提供するプロジェクトには、コンサルタント、ディベロッパー、アーキテクトの3つの役割が必要です。
コンサルタント は、Sales Cloud 、Service Cloud など、Salesforceが提供する各サービスとそれぞれの関係を理解することが求められます。お客さまの業務の特性や内容にあわせて各サービスを適用することがコンサルタントの責務です。

 お客さまの業務によっては、Salesforceの標準機能に加えて開発を組み合わせることも検討します。 そのときに必要となるのがディベロッパーです。ディベロッパーは、SalesforceのPaaS基盤上で提供されるアプリケーション基盤の上で、必要な機能を開発していきます。

 そしてアーキテクトには、プロジェクト全体を通してシステム構成やサービス活用のあり方を検討・評価・決定する「俯瞰的な視点」、周辺システムとの高度なインテグレーションを実現するなどの「高度なスキル」が求められます。

 お客さまのビジネス全体を俯瞰して、システム構成やサービス活用のありかたを検討、決定、評価するためには、お客さまと深くコミュニケーションを取りながら、実現したい目標に向けて最適と思われる仕組みを一緒になって考えてなくてはいけません。

 案件の特性によっては周辺のシステムと連携して活用を広げたいときもあります。例えば、 シングルサインオンによる認証システムを組み合わせれば、Salesforceにアクセスする手順を減らして、利用しやすくできます。基幹システムとつなげればSalesforceでの業務と企業のビジネスの間で高度な連携を実現できます。そのような活用を推進するには、さまざまなことを考慮して横断的に検討する素養が必要となります。

そのような俯瞰的な視点を持ち、高度なインテグレーションを実現するためのスキルを持つのがアーキテクトです。

 Salesforceが目指しているのは「カスタマーサクセス」、つまりお客さまのビジネスが成功することであり、製品を売ることやサポートすることだけではありません。 それは、私たちJSOLとしても同じ考えです。

 JSOLの強みは、Salesforceの提案から運用までを一気通貫でできること。その強みを生かすには、お客さまに寄り添ってお客さまのビジネスを理解する「人間力」が欠かせません。今後もお客さまに対してプロアクティブな提案を続けるために注力しているのが、導入や構築、そして定着化支援です。

 お客さまをカスタマーサクセスへ導くため支援をするには、私たち自身にも経験や知識の蓄積、共有が必要となります。JSOLの社内向けコミュニティーとしては「Salesforce Online」を設けています。その中でSalesforce関連の情報、社内向けのナレッジ、セミナー情報、パートナーとして意識しておくべきことなどの情報共有を進めています。

 また「よろず相談」というチャネルも設けて、相談も受け付けています。以前は、担当者との個別のやり取りをしていたのですが、その内容は全社員で共有し、かつ質問を受け付ける側の負担を減らすことを目的によろず相談というチャネルを開設し活用しています 。

 また社外のコミュニティーにも関わっています。Salesforceではコミュニティー活動にも力を入れており、 特定の製品をベースに情報共有するようなコミュニティーだけでなく、東京、大阪などの地域ごとといったように、多くのコミュニティーが作られています。その一つにSalesforceアーキテクトグループでは、Salesforceのアーキテクトを目指す仲間が集い、広範な技術要素についての情報交換や、資格試験の対策を行っています。東京に続いて、大阪チームでも作りました。その大阪チームの運営主幹の1人が私です。

 参加者は全員高いモチベーションを持って活動しているので、私にとっても多くの刺激を受けています。情報が溢れているなかで、コミュニティーのメンバーがそれぞれウォッチしている情報を聞いたり、自分からも情報を発信したりすることで1次フィルターとなり 、面白いことや新しいことをいち早く知ることができますし、それをJSOLにフィードバックできるというメリットもあります。最近は「大阪のコミュニティに飯田がいる」と認知されてきたことも私のモチベーションになっています。

 基本的には知識と経験の積み重ねが自分の気づきにつながるのですが、コミュニティーのなかで自分が体験できない話を聞くことで、自分の気づきのもとにでき、アーキテクトとしての仕事の品質を高めることにつながっているという手応えも感じています。

学生時代に取り組んだ内容、興味のあった領域について

ボーイスカウトでのアウトドアの経験から、自信を持って行動することの重要性を意識

 私が初めてコンピューターを知ったのは、小学生時代に見たNHKのマイコン入門の番組でした。番組ではNECのPC-8001でプログラミングを行っていたのですが、それを見て「コンピューターは、何かのソフトウエアを作れば、思うように動くんだ」「魔法の箱みたいで面白い」と感じたことを覚えています。そのころから「コンピューター技術者になりたい」という思いを持ち始めました。
 
 大学では工学部に入り、生産システムの研究に取り組みました。そこでは、コンピューターやネットワークに関することだけでなく、実務的な開発、多品種少量生産におけるジョブショップ型生産スケジューリング、制約理論(TOC)など、業務全体のプロセスを取り扱っていたのですが、私は「理論」を学ぶことよりも、コンピューターで作ったシミュレーターを用いて、「ある理論に沿ってジョブを投入してみたらどうなるか」などの実験にのめり込んでいました。

 今でも工場見学に行くと、その工場の機械だけではなくて、「このシステムはどうやって管理しているのだろう」というところに目が行ってしまいます。

 学生時代、プライベートではボランティアグループに参加していました。奈良県大和郡山市が私の地元ですが、そこで子ども向けにレクリエーションや野外活動 をするグループです。そのなかで私が得意としていたのはキャンプで、特に火を起こす技には自信を持っていました。今もアウトドアで料理をしたり燻製を作ることは好きです。

 ボランティアグループでの活動に自信を持って取り組めたのは、少年時代のボーイスカウトの経験があったからこそだと思っています。ボーイスカウトで印象に残っているのが、雪山のキャンプです。そのときは、雪を掘り出してテントを張ったのですが、冷やすと固まるゼリー状のデザートをテントの外に置くと一瞬で固まりました。そういう面白い体験は忘れられません。

 これらの経験を踏まえて考えると、やはりどのような分野でも、自分なりの得意なことを作り、自信を持って取り組むことが大事だと思います。ビジネスにおいても同じことがいえます。目的を達成するためには、いろいろな経験をすることで自信を持ち、蓄えた知識から類推できるかどうかが重要になります。

 学生時代にいろいろな資格を取ることも将来役立つと思います。よく「資格を持っているからといって、仕事ができるわけじゃない」と言われることもありますが、資格を持ってないとできない仕事もあります。資格マニアになれと言っているのではなく、自分がやりたいことを実現するためにも、必要な資格を取ることで能力を証明することは、大事な足がかりになります。

 2016年からは子ども向けのIT教室として小学校での出前授業も行っています。スクラッチというWebベースのツールを用いて、小学生にプログラミングを体験してもらっているのですが、子どもたちの発想力には驚かされます。スクラッチでは、プログラムで猫のキャラクターを操作するのですが、子どもたちは教科書通りに動かすのではなく、猫を画面いっぱいに散らばせたり高速に走り回らせたり、驚かされます。そういうところでも、私の経験を生かしたいと考えています。

JSOL認定プロフェッショナルとして今後取り組んでいきたいこと

変革の時代に向けて、新たな挑戦に取り組むための支援を

 これからのICTは、顧客中心にデータ活用をする流れになるといわれています。しかしそれだけでなく、変革とスピードを重視し、それに対応できる製品をコンサルティングしたり、システムを構築したり、あるいはお客さまのビジネス全体を俯瞰した上で支援できるような仕事をしたいと考えているところです。

 そして、それを実現するための道具としてSalesforceやAWSなどのクラウドサービスをうまく 活用できるような手段を提供していきたいと思います。

 ビジネスITを推進する上では、変革のスピードに追従していくため意識がますます求められるのではないでしょうか。Salesforceなどのクラウドのプラットフォームや、サブスクリプションのような必要な時期だけお金を支払って利用する仕組みをうまく活用することで、スピード感を持って、チャレンジ できるのではないかと感じています。クラウドやサブスクリプションのようなサービスは、そういうスピード感を実現するのにも適しています。

 チャレンジには、不安や恐れが伴うかもしれませんが、早く問題点を見つけて修正ができれば、自分だけが持つ知見になります。プラットフォームのクラウド化は、そのためにも意味があると感じています。もしオンプレミスのシステムを構築していたら、「資産が残るので、うまくいかなくても途中でやめられない」という理由で、その後の展開に影響を及ぼす可能性も考えられます。

 しかし今はクラウドの時代です。そういう負の資産を気にすることなく、チャレンジして、素早く成否を見極めて、次のチャレンジへと進む。そういうスピード感を実現することで、変革の時代に対応できる強さをお客さまが持つことが重要と感じています。悩んでいるうちに時代は変わってしまいますので、フットワークの軽さが今後ますます求められます。そのなかで私たちは、ICT面からサポートする側として仕事をしていきたいと考えています。

 ビジネスITだからといって、導入したもののすべてが成功するわけではありません。新しい挑戦に踏み出したときに何のツールが使えるのか、どこに向いているかを常に意識し、私たちはいろいろなところで情報をキャッチアップしようとしているので、さまざまな視点からアドバイスをさせていただけると思っています。

 JSOLに入社してからの20年を振り返ると、さまざまな分野を経験できたことは、私にとって運が良かったと感じています。はじめはデータベース、ネットワーク、Webシステムなどインフラなどの 分野を担当し、ICTにおける技術の基本的な知識やノウハウ、仕組みの理解をえることができました。続いて、顧客要件など上流工程、設計開発、運用の経験を積み、お客さまのビジネスに役立つための仕事という視点を持つことができました。このようないろいろな経験を順序だてて積むことができたのも、JSOLにいたからこそと言えます。

 これからの目標としては、日本で10数人しかいないSalesforce認定テクニカルアーキテクトの取得を目指したり、JSOL社内におけるSalesforceアーキテクト人材やコンポーネント開発技術者の育成に力を入れていきたいという目標を持っています。

 そして、これまでの知識経験から全体を俯瞰して、新規の領域、今後出てくる新しいソリューションにも興味を持って取り組み、活動を広げていきたいと考えています。近年はSalesforce事業を中心に担当していますが、 他のサービスにも目を向けて、本当にお客さまのビジネスに役立つものであれば、私自身もチャレンジしていきたい。そういう心構えで社外のパートナー、お客さまのコミュニティーやつながりも大切に仕事をしていったら、自分にとっても良いこと、新しいことが生まれるのではないかと期待もしています。

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