(2021年10月現在)
世界有数の自動車メーカーをはじめ、さまざまな製造業の開発、設計における電磁界解析に用いられているJMAG。その営業とマーケティングの両部門を統括しているマーケット・リプリゼンタティブの鈴木雄作が、JMAGのマーケティングや海外展開について語ります。

JSOL認定プロフェッショナル
マーケットリプリゼンタティブ
鈴木 雄作
自身の専門分野とマーケット・リプリゼンタティブの活動について
「営業の私」「マーケターとしての私」の矛盾を受け入れて、広い視点で新たな挑戦へ
電磁界解析に用いられる「JMAG」の開発、販売、サポートを行っているJMAGビジネスカンパニー。ここでは、JMAGというプロダクトを中心に据えて、各部門が取り囲むような形で連携しながら、それぞれの役割を果たしています。
この「プロダクト主導組織」のなかで、私は営業部門とマーケティング部門を統括する立場に就いています。そこでの活動を経て取得したのが、JSOLのマーケット・リプリゼンタティブでした。これは、マーケターとしてのスキル、経験を持った人間が認定されるものです。
とはいえ、最初からマーケターとしての道を歩んでいたわけではありません。そもそも私がJSOLへの入社時に任された仕事は、開発とコーディングでした。しかし、国内の大手自動車メーカーに対する技術支援業務を経て、営業やマーケティングに移ることになったのです。
その途中では、さまざまな経験をしました。2010年から3年半の間は、英語が話せないにも関わらず、北米に駐在して大手自動車メーカー向けに営業活動を。また、JSOLを2年半ほど離れたときには、技術責任者としてドイツ企業に在籍したこともあります。その後、2018年にJSOLに戻り、マーケティング部門、そして営業部門の統括をすることになったのです。
この二部門が取り組む業務内容は、時として相反することもあります。年度ごとの売上向上が主なミッションである営業部門に対して、マーケティング部門は中長期的な観点でビジネスを展開しています。そのため、両者を統括している立場としては、自己矛盾に陥ってしまうこともあるのです。
しかし、「営業」と「マーケター」という異なる視点を両立しつつ、数多くの事業に取り組んできたことによって、以前よりも広い視野で戦略を立てられるようになったと感じています。
例えば、パッケージ・ソフトウェアであるJMAGは、お客さまからいただいたご要望を反映させながら機能を強化してきました。しかし、お客さまの業種業態はそれぞれ異なるため、すべてのリクエストを反映させていたら、矛盾や破綻が生じるリスクにつながるかもしれません。
そのようなときに重要なのが、一つのことにとらわれず、「パッケージ・ソフトウェアとして何ができるのか」「多くのお客さまに貢献できる機能とは何か」について、腑に落ちるまで考えつくすこと。このプロセスを経るうえで、これまでに培ってきた経験や立場、視点が大いに役立っていると感じています。
ただ慎重に検討を重ねているだけではビジネスは動きません。私が仕事を進めるうえで大切にしているのは「Make noise(音を立てる)」という姿勢です。北米で仕事をしたときに強く感じたのですが、消極的なスタンスでは人の印象に残らないのです。
海外では、発言しないとミーティングに参加していたことすらも覚えてもらえません。むしろ「あいつはうるさい」といわれるくらいが、私には向いているように感じます。積極的に私から話すようにすれば、「誰でも気軽に話しやすい雰囲気」が作れますし、自分にできる仕事も増えていきます。
私自身の強みは、気後れすることなく新しい挑戦に走りだせることにあると思っています。走りだす前に考えすぎると、最初の一歩が踏み出せなくなるという話はよく耳にしますが、それでは何事も始まりません。走りながらでもじっくり考えたり、人から意見をもらったり、軌道修正したりすることもできます。
現在の課題や注力している取り組みについて
モデルベース開発にJMAGを活用し、仮想環境でのシミュレーションを
自動車業界は、「CASE」を中心とする大きな技術革新、パラダイムシフトを迎えています。ガソリンエンジンから電気自動車向けの駆動用モーターへ変わっていこうとするなかで、私たちJSOLも、JMAGを使ったモーター制御向けのモデルベース開発ソリューションの提案を進めてきました。
モデルベース開発とは、コンピューター上に仮想的なモデルを作り、それをもとにしてシミュレーションを繰り返しながら開発していく手法です。実物の試作機を作る前に、仮想環境で評価、検証できるため、開発設計のリードタイム短縮が可能になります。お客さまからもJMAGによって、「試作品の数を1回で済ませた、あるいはゼロにできた」「仮想環境での評価、検証の精度が上がったので、後工程からの手戻りがなくなった」などのご評価をいただいています。
また、「テスト環境の構築」も、JMAGの得意分野といえます。自動車の開発には、市街地や高速道路での走行だけでなく、砂漠地帯や北極、南極のような過酷な場所でのスペック確認も必要とされます。その検証を実機でやろうとすると、砂漠や氷の世界の環境から用意しないといけません。しかし仮想環境であれば、パラメーターに値を入れるだけで100度、マイナス100度の設定も簡単です。
モデルベース開発の利点はリードタイムの短縮よりも、「短期間で数多くのシミュレーションができた」「検証する項目を倍に増やせたといった」といったメリットのほうが大きいかもしれません。
近年、自動車の電動化に向けてかじを切る企業が増えてきました。国内外でも、多くの自動車メーカーがCASEのE(電動化)である電気自動車の開発を急ピッチで進めています。その動きを支援するために、JMAGは材料やメッシュに関するモデリング技術の高精度化、トポロジー最適化の機能強化などを進めています。
また、JMAGは機能の強化だけでなく、コストパフォーマンスの面でも改善を重ねています。実機ベースからシミュレーションベースの開発へ移行すると、試行錯誤の回数も増えます。検証したいことを全部調べつくそうとすると、計算量、モデル数も増えます。JMAGの営業としては、利益も上がるのでありがたい話なのですが、お客さまから見るとコストが多くかかることになります。
そこでライセンス体系に少し変更を加えました。以前であればライセンスが100倍になれば費用も100倍になりましたが、利用が100倍になっても費用は20倍程度に抑えるような形にして、お客さまにとっても費用対効果が上げやすいライセンスの提案を始めました。
私たちはさらに、利便性も追及しています。かつてのJMAGは、ユーザーのパソコンにインストールして使うケースが主流でした。試作機の完成前後にシミュレーションする程度であれば、そのような環境でも十分でしたが、モデルベース開発のようにすべてを調べつくそうとすると、100倍、多い場合は1万倍もの試行錯誤を繰り返すことになります。
そうなると、手元のパソコンだけではやりきれません。そこで採用されるのが、クラスター環境です。クラスター環境には、許可された人なら誰でもアクセスできますので、利用者数を増やすきっかけ作りにもなります。そこで同時に100、10,000のケースを安定して流すための機能を追加しています。
このような開発、機能追加を通して、お客さまとの関わり方にも変化が現れてきたと感じています。以前は、エンジニアの方からJMAGの使い方についての問い合わせをいただくことが多かったのですが、最近はものづくり、設計そのものに関する問い合わせへと変わってきているのです。
例えば、以前から構造解析や流体解析の分野では実務的に利用されていたトポロジー最適化の機能を搭載した結果、お客さまから「一緒にデザインレビューしてほしい」という相談を受けるようになりました。また、モーターの制御に携わる部門から「このようなことはできませんか」「他の業界で、こういう制御に取り組んだ例はありませんか」という声もいただくようになってきました。
このようなものづくりのプロセスを変えていく改革に、ビジネスパートナーとして参加させていただける、このことにはとてもやりがいを感じています。
学生時代に取り組んだ内容、興味のあった領域について
先生にしかられた出来事をきっかけにトポロジー最適化の道へ

学生時代は、システム工学部の機械制御システム学科に入りました。修士は、機械工学の専攻で、論文のテーマとして、機械構造物のトポロジー最適化に取り組みました。最適化の方法としては、大きく分けて「寸法最適化」「形状最適化」、そして「トポロジー最適化」が挙げられます。実際に設計をする際には、トポロジー最適化を行い、形状最適化に移り、最終的に寸法最適化を実行するという流れになります。
最適化のシミュレーションのおもしろいところは、全部自分でルールを決められる点です。プログラムを組む際に、最初に「これを最適とする」と条件を決め、その条件に向けて物の形やサイズが変わっていくプロセスを見ているのが、非常に楽しかったことを覚えています。
トポロジー最適化を選んだのは、学部のときに受けた授業がきっかけでした。車の構造を描く課題が出たときに、多くの学生は専門書を参考にしている横で、私だけがファッション誌に載っていた車の写真をモデルに選んだのです。それを見つけた先生が「授業を受けずに、ファッション誌を見ている」と思ってしかってきたのですが、そのときのやりとり、コミュニケーションに、工学部ではあまり見かけることのない人間味を感じました。そこで、研究室を決めるときに先生のところにお邪魔したところ、そのときに扱っていたのがトポロジー最適化だったのです。
20年以上前の話になりますが、研究室の周辺には、AI、ニューラルネットワーク、ファジーなどを研究している人もいました。そのころの研究が、今になって自動車の自動運転技術に応用されていると思うと、感慨深い気持ちになります。
趣味としてはモーグルスキーを大学のサークルでやっていました。父が北海道出身でしたので、もともとスキーにはなじみがあったのですが、凸凹の雪面を躍動しながら滑るビデオを見て「こんなスキーがあったのか」と衝撃を受けたのです。
冬休みの間は、長野のスキー場に住み込んで練習をしていました。大会出場に向けて練習していたとき、人生MAXのスピードを達成したのは良かったものの、そのまま雪に突っ込んでけがをしてしまい、大会に出られなかったということも、「良い思い出」とはいえませんが、思い出の一つではあります。
モーグルスキーもシミュレーションも、山や谷があるなかで、一番高いところや低いところを探し出して最適なルート、最適な答えを見つけるという共通点があります。外国語もできないのにアメリカに行ったりドイツ企業に転職したりという挑戦もしていますし、そういう凸凹な道を行くのが好きな性分なのかもしれません。
振り返るとチャレンジの多かった人生だったと感じています。苦労したり失敗したりという挫折を乗り越えながら、「何かを成し遂げよう、大きな変化を生み出そう」と突き進んできました。
その経験を通して出会った人たちの存在も、大きなものでした。学生時代の恩師や友人たち、社会に出てからの上司や同僚、北米やドイツの友人、そして家族。そういう人たちの支えがあったからこそ、チャレンジし続けることができたと感じています。
プロフェッショナルとして今後取り組んでいきたいこと
海外展開を目指して、パートナー企業や他部門との協力を強化したい
今、自動車メーカーのお客さまは、電動化に向かって進んでいます。その流れは、自動車業界だけでなく、他のさまざまな業界で起こっていますので、電動化に関するご提案やサポートは強化した行きたいと考えています。また、自動車の自動運転をはじめとした自動化も同様です。バイクのような二輪車、船や飛行機なども含めた多種多様なモビリティー分野のものづくりにおける電動化、自動化に注目しています。
私がこれから特に強化していきたいと考えているのは、海外展開です。今までもJMAGの海外展開に関わってきていますが、今後は、他部門、他部署で扱っている製品やソリューションについても、海外展開の機会があれば支援していきたいと思っています。
海外展開で難しいのは、海外の代理店、パートナーを通した提案になる点です。日本と同じようなレベルの提案、支援をリモートで行うのは困難なこと。ただ、私自身の北米での経験から、「ちゃんと取り組めば、アメリカでも十分に展開できる力はある」という手応えは感じています。
海外展開、また国内事業の発展のために、パートナーとの協力体制は不可欠です。高精度なシミュレーションを実行するには材料のモデリングも必要になりますから、鉄鋼や磁石を扱っているメーカーとの連携は重要です。また、国内、海外の大学などの研究パートナーも欠かせません。
さらにJMAGは電磁界解析に特化したパッケージですから、熱などに関する他の解析ツールのベンダーと組んで、トータルソリューションとして価値を提供できるようにもしていきたい。そういうさまざまなパートナーと一緒に、現実的、実務的に歩んでいける仕組み作りは進めていきたいと考えています。
これまでの活動を振り返ると、経験してきたさまざまなことが、点がつながって線になってきていることを実感しています。そこは非常に良いことで、自分としてやれることが増えてきたと思っています。その一方で、視野が広くなったぶん、フォーカスが弱くなることがないように、もう一度、自分自身が変わらなくてはいけないステージに来ている時期に来ていると感じているところです。
JMAGは「このように使ってほしい」という思いを込めて、こだわりを持って開発しています。それは日々ご利用いただいているユーザーの皆さんにも感じていただけているのではないでしょうか。そういう思いに共感していただけるユーザーの皆さんのおかげで、日本国内でも、そして海外でも少しずつ利用が増えているという手応えを得ています。
仕事以外では、最近は地域のコミュニティーに対して貢献したいという気持ちが高まってきました。子どものつながりで始めた学童野球チームのコーチをはじめまして、新しい人たちとの出会いがありました。それもまた非常に良い体験になっています。今後、良いタイミングがあれば、そういう新しい挑戦も続けていきたいと思います。
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