(2023年05月現在)

ものづくりの現場からの要望を取り入れながら成長を続けてきたJMAG。現場で生まれる要望を生かすには、お客さまとの対話を通して業界のニーズや課題を探り、うまく活用できるよう支援をしたり、開発部門と連携して機能拡充に寄与する技術営業の存在が欠かせません。今回はJMAG ビジネスカンパニーのマーケット・リプリゼンタティブの服部 哲弥が、お客さまに選ばれるためのJMAGの魅力づくりについて解説します。

JSOL認定プロフェッショナル マーケット・リプリゼンタティブ 服部 哲弥

JSOL認定プロフェッショナル
マーケット・リプリゼンタティブ
服部 哲弥

自身の専門分野とプロフェッショナル職の活動について

JMAG初のサポート専門メンバーから初の技術営業へ。入社以来お客さまのフロントとして尽力

 JMAGビジネスカンパニーは、電磁界解析を実行するパッケージソフトウエア「JMAG」ひとつを専門に扱うという点で、JSOLの他部門とは異なる特徴を持っています。またシミュレーションソフトウエアというものは、一般のアプリケーションと異なる特殊な面を持っているため、電磁界解析やシミュレーションに関するスキルを習得していないユーザーがしばしば戸惑うこともあります。だからこそ、JMAGを有効に活用していただくためにユーザーへの支援が重要になるのです。

 2002年の入社以来、私はJMAGに携わり続けてきました。最初に任されたのは、お客さまから寄せられた質問に電話やメールで回答するサポート係でしたが、実は開発業務を担当せず、このサポート業務の専任となったのは私が初めてでした。

 というのも、当時はJMAGの部署自体が小規模で、「開発もサポートもみんなでやるのが当たり前」という体制だったためです。ところが、私が入社してまもなく、「分業しよう」という流れが生まれました。

 JMAGの部署は2017年にJMAGビジネスカンパニーとして独立性の高い部門となり、新たに技術営業(当時はテクニカルマーケティングと呼んでいました)のチームも作られました。このとき私もそれまで専任してきたサポート業務から技術営業へと移ることになったのです。

 技術営業の仕事は、営業と連携を取りながらお客さまのもとを訪問し、JMAGをビジネスにうまく活用していただけるよう、技術面から支援する営業活動です。特に「今までとは違う新しいシミュレーションをやってみよう」「新しい設計プロセスのフローに挑戦してみよう」などと、新たな挑戦に積極的に取り組んでいる企業には技術的な支援が不可欠なのです。

 2019年にはドイツにも頻繁に通いました。ドイツには世界的な自動車メーカーが集中しており、製造業をより強化していく動きがありました。現地にもJMAGを販売する代理店があったので、私は現地のメンバーとともにさまざまな場所へ足を運び、ドイツでの基盤構築に尽力しました。

 しかし2020年、新型コロナウイルス感染症の影響で社会が大きく変わり、海外との往来が困難になったため、主軸を国内に移すことになりました。そのタイミングで、私は技術営業部門のリーダーとなり、今に至ります。

 サポート、技術営業に共通するのは「お客さまのフロント」という立ち位置です。その経験を通して強く感じるのは、「JMAGはお客さまとともに成長してきたソフトウエアだ」ということです。

 技術営業の業務は、お客さまの悩みごとや困りごとのお伺いや解決手段の提案だけではありません。開発部門と連携し「どうすれば課題解決に役立てるのか」「今のJMAGが持っていない新しい機能が必要ではないか」などお客さまの立場に寄り添った発想で、ときには新機能の開発、実装につなげることもあります。
 
 そのようなやりとりを一つひとつ積み重ねてきたことで、「JMAGはお客さまに育てていただいた」と感じるのです。

 さらに最近は、お客さまのご要望を伺うだけでなく、お客さまの課題をしっかり理解し、JMAGを使った新しいものづくり、ソリューションを積極的に提案しています。例えば、「シミュレーションベース設計」。従来の設計は、これまでの設計経験と試作した実機での特性評価で設計していきます。ただ、最近では要求レベルがどんどんと上がっていき、さらに開発にかけられる工期も短くなってきているため、従来の設計方法に疑問や限界を感じている方も少なくありません。

 そういった方に、実機を使わず、シミュレーションで特性を評価して、新しい設計案を見つけていくシミュレーションベース設計を提案します。これまでの「経験で絞り込んだ設計案を試作機での測定結果を使って検証していく方法」から、「シミュレーションで絞り込んだ設計案をシミュレーションで評価、確認する方法」への変更です。設計経験ではなくシミュレーションで絞り込んでいくため、従来の方法では見つからなかった厳しい要求を満たす画期的な設計案を短い時間で見つけることも可能となります。

現在の課題や注力している取り組みについて

JMAGがお客さまにとって魅力あるソフトであり続けるために

  ものづくりの現場で実際に設計や開発を行うのはお客さま自身であり、私たちは設計や開発時に使用するシミュレーションソフトウエアを提供するベンダーに過ぎません。そのため現場をもっともよく知っているお客さまから学ぶことはたくさんあるのです。例えば「こういう課題をシミュレーションで解決できないか」とご相談いただいた際には、「なぜ、そのような現象がどうやって起こるのか」というような現象についてもあわせて教えていただくことで、課題の本質を深く理解できるようになります。

 そのうえで、設計現場で生まれる課題を生む現象をJMAGで再現させ、解決方法を提案します。つまり、課題やその背景を教えていただければ、私たちはJMAGを用いた課題解決の方法を提案できます。このようにお客さまと一緒にお客さまの課題を解決してくことで、私もしくはJMAGがパートナーとしての信頼を得られたのだと思います。

 「新しいフローを構築したいという熱意のあるお客さまとの出会い」も私が大切にしていることのひとつです。私たちの提案に価値を感じていただける方、一緒に課題を解決していこうと思っていただける方との出会いを求めながら、新しいフローを提案していきます。もちろん熱意のある方と出会えればいいわけではなく、その方の課題を解決するソリューションでなければ提案にはなりません。その方とコミュニケーションすることで、課題を正確に理解し、価値ある提案が実現できます。課題を理解できたとしても、それを解決するためには、JMAG ビジネスカンパニーの助けが必要で、ときにはJMAG ビジネスカンパニー全体でソリューションを作ることもあります。提案中は課題が解決できるかどうかもわからず、順調に進展しないこともあり、大変苦しい時間もありますが、お客さまの課題が解決できる道筋が経ち、喜ばれたときの達成感はそれまでの苦労を忘れさせてくれます。

 もちろん、従来型の「長年の経験に基づく設計方法によるものづくり」を否定しているつもりはありません。従来型にも良いところがたくさんあります。しかし、社会やものづくりが大きく変容していくなかで、品質の高いものをスピーディーに開発していくためには、シミュレーションの力を活用することが大きなメリットになるはずです。

またこれまでの経験にとらわれず広範囲を探索できるシミュレーションベース設計を実践しようとすれば、広範囲を探索することで計算量が膨大になります。しかし計算量が増えてもパフォーマンスを落とさないように維持する必要があり、私たちの挑戦するところでもあります。

お客さまが今後実施するであろう解析の内容をJMAG ビジネスカンパニーの中で事前にいち早く解析事例として作り上げ、お客さまが行いたい解析内容が問題なく実施できるかをいかに早く確認できるかが大事だと思います。この解析事例を作るための情報を提供できるのは、お客さまの状況を理解している技術営業だと思います。

解析事例を全てのパターンで作れればいいのですが、事例として作り上げるのに時間がかかりますし、事例化に必要な情報が揃わない場合もあり、解析事例が間に合わない場合も少なくありません。そのため私は技術営業のリーダーとして「チーム内での情報共有」を意識しています。

 特に重視しているのは「○○の課題に対して、△△の提案をしたところ、□□という効果が見えた」というような実績に基づくノウハウです。もちろんそのまま別の会社に応用するわけにもいかないのですが、「優れた結果に結びついた」という実績は参考にできます。なにより成功実績があると、私たちがお客さまに対して提案する際に自信を持ってお勧めできるようになります。

 そうやってJMAGビジネスカンパニーが、お客さまにとって信頼できるパートナーとして認められ、JMAGが魅力あるシミュレーションソフトウエアであり続けられるように、今後も尽力していきたいと考えています。

学生時代に取り組んだ内容、興味のあった領域について

大学での研究とインターンで感じた、「完成させるための努力」の大切さ

 もともと宇宙に興味を持っていたこともあり、大学、大学院では物理科学科に進みました。そして宇宙線が地球大気通過時に生じる素粒子「ミューオン(ミュー粒子)」をテーマに選びました。

 私が研究したのは、荷電粒子であるミューオンの地球磁気圏内での軌道を「シミュレーション」でとらえるというものでした。地上で観測されるミューオンは、いくつかの過程の後に生成されるもので宇宙から直接到達するわけではありません。ミューオンは比較的エネルギーが高いこともあり、地球上のいくつかの地点で多方向にミューオンを測定することで、宇宙線の入射方向を解析することができます。
 
 私の所属していた研究室では、日本、オーストラリア、ブラジルにも測定機器を設置しており、さらに他の大学や研究機関のデータも利用させてもらいました。太陽から吹き付ける太陽風の乱れは地球磁場が乱れる磁気嵐の原因になります。太陽活動による地球への影響を予測する「宇宙天気予報」も目的の一つでした。今になって思うと、学生時代から電磁気とシミュレーションに関わってきたことになります。

 実はJMAGとの出会いも大学院時代のインターンでした。JSOLの母体となる日本総研のインターンに参加したところ、配属されたのがJMAGの部門だったのです。シミュレーションを使って、見えないものをコンピューター上で可視化するところに興味を持って参加したのですが、実際に開発現場を見てみると、シミュレーションソフトを作る側にもおもしろさを感じました。

 未完成の機能ですから、動かしてみると停止したり落ちたりすることもよくありました。そこで、落ちる原因を模索し、特定できたりすると、未熟な私でも貢献できることに達成感や「楽しさ」を感じてしまったのかもしれません。

 その後、入社したときに改めてJMAGグループを希望したのですが、インターンで来ていたことをご存知の先輩方からは、「忙しくて大変な部署にあえて志願して入ってくる神経が理解できない」「開発現場を知っているのに入ってくるとは変わり者だ」とあきれられながら、歓迎されたのは印象に残っています。

JSOL認定プロフェッショナルとして今後取り組んでいきたいこと

変化するものづくりの現場の新たなニーズや課題を

JSOL認定プロフェッショナル マーケット・リプリゼンタティブ  服部 哲弥

 JMAGは電動車の駆動用に代表されるモーターや発電機などの回転機の設計や開発に広く使用されています。最近は電動化の動きを受けて、他分野からのモーター市場への参入も増えてきています。しかし他分野の会社が未経験の市場に参入する場合、先行している会社に比べてノウハウが足りません。そうした場合に、足りない力を補い、先行するライバルと戦うための競争力を身に付ける手段として、シミュレーションを活用しようというニーズが増えてきています。

 また、誘導加熱(IH)など、モーター以外の市場でもJMAGを用いたシミュレーションが広がっています。誘導加熱というのは、巻いたコイルに交流電気を与えることで渦電流を発生させ加熱するもので、一般的にはIH調理器などに用いられているのが有名です。

 これは昔から使われている技術ですが、この誘導加熱を「製品の表面加工」に用いようという企業も増えてきました。誘導加熱は急速加熱が得意であり、生産ラインに組み込みやすいという利点もありますが、最近は省エネ、CO2排出量削減につながるという理由で検討を始めるところも少なくないと感じています。

 このように電磁界解析によるシミュレーションは、目的や使い方次第でまだまだ機能が広がる可能性を持っています。特に新しい分野でのお客さまの課題は簡単ではなく、すぐに解決できないケースも多いことでしょう。そのような状況においては、お客さまの課題や要求、状況を正確に理解、分析し、確実に進展させるための適切なゴール設定と確実な業務遂行力が大切になってきます。

 私もしくはJMAGが今後もパートナーとしての信頼を得ていくためには、課題解決もしくはゴール達成に向けて進展させることを大切にしたいと考えています。これまでは私やJMAGをパートナーと認めていただけましたが、これはJMAGという製品への期待が大きいからだと思います。JMAGに魅力がなくなってしまってはこの関係はなりたちません。いかにJMAGを良い製品に持っていけるかが今後はさらに大切になります。

 JMAGには至らない点も多々あったと思われますが、これまで一緒に課題解決にまい進していただいたお客さまに感謝の気持ちでいっぱいです。JMAGだけでなく、私自身の成長もお客さまに導いていただきました。今後も、お客さまの課題を解決し、お客さまと一緒に成長していけるJMAGを提供していきたいと思います。


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