(2024年06月現在)

複数の国や地域でビジネスを展開する際には、システムの統一化を図る一方で、各国の事情に合わせた最適化も必要となります。この相反するテーマを両立するにはどのような対策が有効なのでしょうか。今回は、JSOL認定プロフェッショナルのマーケット・リプリゼンタティブとして、日本企業がグローバル市場に進出、強化する際のITシステム構築を営業面で支援してきた櫻井豪司が、グローバルでのビジネス展開案件について経験した内容をベースに解説します。

JSOL認定プロフェッショナル
マーケット・リプリゼンタティブ
櫻井 豪司

自身の専門分野とプロフェッショナル職の活動について

グローバルでの全体最適化と、各国の事情への適応を両立させる難しさ

 私が所属しているエンタープライズ&ソーシャルビジネス統括本部 法人ビジネスイノベーション事業本部 営業統括部 西日本営業部では、主に関西の製薬・化学・食品、組み立て製造、テレビ局などの業界に対して、ERPの「SAP」、企業の業務プロセスやワークフローなどを一元管理してDXを推進するプラットフォーム「ServiceNow」、ビッグデータを一元管理してデータの利活用を広げる「Snowflake」などのクラウドソリューションの導入を提案、支援しています。

 その中で私が取り組んでいるのが、「日本企業が目指すグローバル化に対して貢献できる営業推進」です。JSOLのお客さまの多くは、日本国内に本社を置いている企業が多いため、以前はJSOLも国内市場という枠の中で、IT支援、営業活動に力を入れてきました。しかしグローバル化の著しい昨今、ビジネスを拡大させるためには、海外市場への展開は大きなテーマと言えます。

 特に関西には海外展開を強化しようという思いを持つ企業が多く、司令部となる本社を東京に移すことなく、関西に本社を置きながら、直接海外に飛び出していくことも珍しくありません。私もそのような企業を応援したいと考えています。

 ITの面から見ると、グローバル化で重要となるポイントは「グローバルでのシステム全体最適化」と「各国単位での必要最低限の個別最適化」です。海外でビジネスを展開するには、当然ITシステムが欠かせません。しかし、国ごとに言語が違うだけでなく、商習慣や税制などのレギュレーションも異なります。やみくもにグローバル進出を行っても、「国ごとにシステムやルールをバラバラにせざるを得ない」「せっかくのデータを有効活用できない」「ガバナンスを効かせにくい」という状況に陥りかねません。

 では、どのような対策を取れば、グローバル化を進めながらガバナンスを効かせられるのでしょうか。

 私は、日本企業の場合、国内の本社を中心に展開していくことが有効であると考えています。例えば、日本側で選定したクラウドサービスを各国に展開し、共通化できる部分はそのまま利用していく。そのうえで、各国特有の税制、商習慣、言語などの部分にカスタマイズを施し、個別のテンプレートを用意するといった形です。

 そうすれば、日本本社からグローバルのデータを分析、利活用しやすくなりますし、各国でも業務をスムーズに実行できます。つまり、「グローバルでのシステム全体最適化」と「各国単位での必要最低限の個別最適化」の両立が図れるわけです。

 ただ、これを実現しようとしたときに難しいのが、各国特有の税制、商習慣などの情報を理解することです。JSOLの人材は、ITには長けていても、すべての国や地域の商習慣、業界ルールに精通しているわけではありません。お客さま自身も、進出しようとする国や地域のことは当然調べているわけですが、それだけでは足りないこともあります。そこで私たちは、その不足する要素を補うために、各国の事情を熟知し、かつITの知識を持った人材、パートナー企業を探し出し、協力を仰いでいます。

 そのようにして当社では、グループ企業やパートナー企業とのコミュニケーションを通してプロジェクトに適切な人物をアサインし、効果的なグローバル化の提案、支援を行ってきました。

現在の課題や注力している取り組みについて

グローバルビジネスならではの難しさを、コネクションの力で解決へ導く

 グローバル化におけるガバナンスの問題は、一度解決すれば終わるのではなく、未来永劫続いていくものです。各国の商習慣や法律、その業界の特徴も、時勢に応じて変わっていくからです。

 JSOLはNTT DATAの一員である利点を生かし、グループの海外拠点やグローバルパートナーと協力して、必要な能力を持つ人材、パートナー企業を探してアサインするという方法も取っています。そのコネクションを強めるために、営業部では週に一回、情報の共有、フィードバックを目的とした場を設けています。情報やノウハウをシェアし合うことで、お互いがカバーできる領域を把握でき、より良いサービスの提案が可能になるのです。

 とはいえ、現場が本当に求めている人材を見つけることは簡単ではありません。ある案件で、アメリカ、ヨーロッパ、東アジアなどに拠点を持つ日本の製薬企業が、グローバルでのITシステムの構築を計画しており、JSOLもそのプロジェクトに参画することになりました。私もそのメンバーの一人でした。

 JSOLは、それぞれの国ごとに適したパートナー企業に声をかけて、協力体制を作っていきました。ところが、アメリカ、ヨーロッパについてはNTT DATAの伝手を当たってパートナー企業を探し出し体制を作ったものの、「東アジアの某国の製薬事情に詳しい適任者」が簡単には見つからなかったのです。
 
 しかし諦めずに、私がいろいろな人に相談していると、「製薬業界でグローバルに活躍しつつ、ERPの知識も持っている現地出身の方」という、うってつけの人材を紹介していただけました。私は、その方と対話や食事を通して人となりを把握した後に協力を依頼しました。いまでは、その方が現地の拠点と母国語でやり取りをしつつ、現場の意見をキャッチアップする形で協力してもらっています。

 このようにプロジェクトごとに最適な体制を構築し、「グローバルでのシステム全体の最適化」と「各国単位での必要最低限の個別最適化」が両立できるよう、全体がうまく回るようにコーディネートするのが、営業としての私の仕事です。

 そしてこれまでの経験から、私は情報の「Give and Take」の大切さを実感することとなりました。単に「こんな人、知りませんか?」ではそもそも紹介してもらえませんし、相手が仕事に参加したくなるような気持ちを持ってもらうには、メリットを伝えるためのGiveが必要なのです。

 関係を築いた後も、積極的に自分からGiveしていくと、次の仕事を発注していただけることもありますし、新しいお客さまに紹介していただけることもあります。

 仕事に関することだけではありません。お客さまから「○○に注目しておいて」とアドバイスをいただき、そのとおりに実践していると私に足りない力に気づかされ自分自身の成長を促されたという経験もありました。

 営業である私にとって仕事の一番の報酬は「新しい出会い」と「次の仕事」です。仕事を通して多くの人と出会い、深く関わる。そして次の仕事につながって関係が続いていく。それはお金以上に重要なこと。「人は、お会いした人の数だけ賢くなれる」と私は思っているので、たくさんの人と出会えるこの仕事は、私の性分にとても合っているとありがたく感じています。

学生時代に取り組んだ内容、興味のあった領域について

スキージャンプで身についた鈍感力。恐れることなく飛び込んでいくスタンスが、新しい仕事を生み出す源泉に

  大学では、環境地球工学部の衛生学科に所属していました。専攻では大気汚染の研究を選択し、コンピューターを使いながら、ゴミの焼却炉から出る煙がどのように、どこまで分散していくかなどのシミュレーションに取り組んでいました。

 勉強以外で打ち込んだことと言われて最初に思い浮かぶのは、競技スキーです。一口に競技スキーといっても、その種目はさまざま。その中で私が選んだのは、雪山や雪原を走り抜ける「クロスカントリー」と、約35度の急斜面を猛スピードで滑り降り、踏切台からテイクオフして滑空する「ジャンプ」の二種目でした。

 持久力が求められるクロスカントリーに対して、ジャンプに求められる能力は、瞬発力と精神力。それぞれに鍛えるべき筋肉や心構えも異なります。そのため、雪の降らない季節にはランニングや水泳を通してスタミナを養いつつ、地面に敷いたマットに向かって二階から飛び降りたり、長い階段の最上段から最下段をじっと見つめ続けたりなど、同じ部活とは思えないような統一感のないトレーニングを繰り返していました。

 ウインターシーズンを迎えると合宿生活が始まります。吹雪の中、滑ったり飛んだりを繰り返していると、「自分はなぜ雪に埋もれているのだろう」「どうしてこんなつらい思いをしなければならないのだろう」という思いが強まってきます。練習後、宿のテレビに映った、雪のない都会のイルミネーションの輝きは、いまになっても忘れられません。

 しかしそんな生活を毎年続けていると、次第に「もっとスキーを極めてみよう」という思いも強くなっていきました。また部活では会計係を担当していたため、宿の女将さんをはじめとした外部の人とも交流していましたが、いまにして思えば、営業としての原体験だったといえるかもしれません。

 そうして培ったコミュニケーション能力や身体能力、精神力、得られた仲間たちは、一生の財産です。特にジャンプを通して手に入れた恐怖や不条理に対する「鈍感力」は、営業として未知の領域や、新しいお客さまのもとへ踏み込んでいくとき、大いに役立っていると感じています。

 大学卒業後は、JSOLの前身である日本総合研究所に入社し、SAPの開発などに取り組んでいました。あるとき、SEとしてとある企業に常駐することになったのですが、その際のお客さまとのやり取りを見ていた上司から「櫻井は営業に向いている」と判断され、入社から2年後の1999年、営業部へと配属されることになったのです。

 慣れない仕事に戸惑ったこともありましたが、先輩や後輩、営業先での出会いに恵まれた結果、これまでに新規のお客さまを18社も獲得することができました(2024年5月現在)。

 当時のお客さまやパートナー、社内の方々から叱咤激励を受けつつ、仕事に対する姿勢を学ばせてもらった日々が、いまでもITプロフェッショナルとしての自分を支えていただいていると感じています。

プロフェッショナルとして今後取り組んでいきたいこと

JSOLのビジネスそのもののグローバル化も視野に

 クラウドソリューションをベースにしたシステム構築では、業務ノウハウの理解が重要になります。具体的には、「この国の特殊要件、規制、レギュレーションに対応しなくてはいけない」「そのためにこのような対策が必要」という認識を、お客さまだけでなく、JSOLのエンジニアにも共有してもらわなくてはいけません。

 そこで、営業部では円滑な開発を支援するために、エンジニアに背景を説明する場を設けています。お客さまが開発に期待していることを適切に伝えつつ、どのようなお膳立てをしたらエンジニアに120%、150%の力を発揮してもらえるかを検討しながら全体の流れをコーディネートしていくことも、営業が取り組むべき仕事といえます。

 そうしたコーディネート力を高めるために、一日に一度は「担当のお客さまや関係する方々を巻き込んで、何ができるか」について考えています。その一環として実践しているのが、毎朝の通勤時間に書いている「日記」です。

 「その日お会いするお客さま」のことを思い浮かべながら、現行のプロジェクトの課題や取るべき対応をしたためたり、新たな挑戦に必要なメンバーを思案したりすることで、お客さまの要望を改めて理解し、エンジニアやパートナー企業に腹落ちしてもらえる説明が可能になります。日記の文章はすべて英語で書いているので、自分の英語力を高め、ひいてはグローバルパートナーとのランゲージバリアを解消することにもつながっています。

 また、近年では、最新のテクノロジーをお客さまのビジネスに役立てるためのアプローチにも注力しています。AIを医薬品のビジネスに活用しようという動きも活発になってきていますが、各国のレギュレーションを踏まえてAIに何かさせようとするといった用途になると、まだまだ現実的なレベルには達していない状況です。

 とはいえAIの進歩は著しく、使い方によってはビジネスに活用できます。実際に、「臨床試験にAIを活用することで、参加者が少ない場合でも効率的なデータ収集が可能になるのではないか」といった話も入ってきています。JSOLは多くの製薬会社をお客さまとしているので、そのような観点から運営を支えるためのAI活用を提案できればと思っています。

 もう一つ、新たに私自身が模索しているのが、JSOLのビジネスそのもののグローバル化です。これまで私はお客さまのグローバル化を支援する仕事に注力してきましたが、今後は、景気や国際情勢を見つつ、JSOLのメンバーを海外に派遣するなどの取り組みも活発になるべきと考えています。

 ちょうど現在(2024年5月)円安に進んでいます。海外の案件を取りに行くことを考えたとき、海外のベンダーよりも「同じ品質、同じスキルのサービスをより安く提供できる」ので、円安は有利に働くのではないでしょうか。折りしもJSOLに「グローバル推進課」という課もできて、新しい一歩を踏み出したところです。JSOLはこれまで日本国内をメインにビジネスを展開してきましたが、これからは広く海外市場も視野に入れたビジネスを展開していくチャンスなのではないかと期待しています。


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