真のリアルタイム経営の実現に向けたSAPのビッグバン導入で、全事業領域を一斉刷新。プロジェクトを成功に導いたJSOLとのワンチーム体制とは

オーラルケアやファブリックケアなどの日用品をはじめ、スキンケア製品や医薬品など幅広い商品を製造販売しているライオン。だが長年活用してきた基幹システムを使い続けて、社会環境や市場の激しい変化、複雑化したビジネスに対して柔軟、かつ迅速に対応していくことに困難を感じていた。そこで本社、国内グループ会社すべてにわたってERPのビッグバン導入へ取り組み、その推進のために選ばれたパートナーがJSOLだった。

キーワード

業務

業種

課題・解決・効果

課題

  • 社会環境や市場が複雑化する中、迅速に経営判断できるためのプラットフォームが求められていた

  • 事業領域の「端から端まで」をスコープとする、本当の意味での「ビックバン導入」の実現

  • サプライチェーン全体で「同じ数字」を追いかけることができる、情報基盤プラットフォームの構築

解決

  • 販売管理、会計、生産管理、物流、調達購買、事業計画など事業活動すべてにわたってSAP S/4HANAをビッグバン導入

  • 本社、国内グループ会社すべてに一斉導入

  • ライオンとJSOLの混成チームが新しいビジネスモデルを探りながら、約4年間にわたり議論を重ねてプロジェクトを推進

導入効果

  • 販売・需給・生産・調達計画が連動した情報基盤の構築

  • データを駆使し、先見性をもって意思決定をしていくことが可能な基盤の整備

  • 全ての事業領域において、細かい粒度でコストが可視化できるように

インタビュー動画(04:54)

部分最適化から脱却し、業務全体からデータを取得して活用する攻めのITへ

 1891年の創業以来、洗剤や歯磨き粉など、衛生に関わる製品の開発、販売を通して、人々の生活に貢献してきたライオン。近年のビジネスを巡る環境について、取締役兼上席執行役員の小林健二郎氏は「社会環境、経営環境、特に市場が大きく変化し、商品ポートフォリオや販売方法、流通環境などが複雑化してきました」と挙げた。オーラルケア製品や衣類用洗剤、食器用洗剤や医薬品、調理関連品など、商品の多様化が進んでいるほか、デジタルチャネルが成長したことでドラッグストアやスーパーマーケットが中心だった販売網にも大きな変化が見られる。
 「激しい変化に対応していくには、機動性、柔軟性、そして経営の先見性が重要です。そこで、サプライチェーンの高度化、マーケティングの高度化、営業の高度化、経営管理の高度化という4本の柱を立てて改革に取り組みました」(小林氏)
 だが、ライオンが長年使用してきたシステムは、自社開発したシステムを中心に長年にわたりカスタマイズを施し続けてきたものがほとんどだった。「各部門の業務内容、ユーザーの意見を聞いて開発したため、現場社員にとっては使いやすくサービスレベルの高い、ユーザーオリエンテッドなものでした」と評価する反面、小林氏は「各部門に合わせて部分最適化されていたため、機動性、柔軟性に欠けていた」という問題を指摘した。
 「当時の環境は、言うならば守りのITの典型。メリットもありましたが、部門を超えて横断的にデータを活用しようというときや、異なるビジネスモデルを横串で見ようとしたときの足かせにもなっていました。そこで2016年ごろから攻めのITに変えていこうと検討を始めたのです」(小林氏)
 そうして立ち上がったのが、抜本的な基幹システム再構築と業務変革を目指す「Project Regulus」だった。このプロジェクトで重視した点について、小林氏は「ビジネスプロセスを変えること」と説明する。
 「単にシステムを入れ替えるという話ではありません。すべての業務にわたり川上から川下までERPで一気通貫に見ることで、すべての部署でワンデータ、同じ数字を使って会話できるようなプラットフォームを持つべきだろうと考えました。そのため、BPR推進部という新しい部署を立ち上げ、各部門からメンバーを集めて、会社全体を変革していくというコンセプトで臨みました」(小林氏)

左)ライオン株式会社 取締役兼上席執行役員 小林 健二郎氏
右)ライオン株式会社 デジタル戦略部長 (取材当時BPR推進部長)木下 陽児氏

事業活動すべてにわたるビッグバン導入に挑戦

 小林氏とともに、新組織のリーダーとしてプロジェクトを率いたのは、デジタル戦略部長(取材当時BPR推進部長)の木下陽児氏だった。木下氏は今回の取り組みについて「本当の意味でのビッグバン導入」と表現する。
 「一言で『ERP導入』と言ってもその形態は千差万別で、例えば会計に加えて販売(在庫管理と受注・出荷)の領域に対して、単発のプロジェクトで導入するという内容であれば一般的には『ビックバン導入』という表現になります。しかしProject Regulusで取り組んだのは、会計、販売はもちろん、生産管理、物流、購買、事業計画、分析なども含んだ、当社グループの国内事業活動の端から端までのすべてに対し導入するものでした」(木下氏)
 また大掛かりなシステムとなれば何年もの時間をかけて段階的に切り替えていくケースも多いが、ライオンでは本社、国内グループ会社10社を含めて一気に更新することを目指した。このProject Regulusを実現するためのERPとして、SAP S/4HANA®を選定し、ともに歩むパートナーとして選んだのがJSOLだった。
 「Project Regulusは社運をかけた一大プロジェクト。経営のニーズに合わせてビジネスモデルを変えていくには、パートナーに当社の事業や目標を共有してもらう必要があるため、人となりを軽視することはできません。いろいろなSIerと話をする中で、もっとも現場感、肌感が近いと思われたのがJSOLでした。やはり前向きに楽しんで仕事に取り組める関係が構築できれば、作りあげるシステムの品質も上がりますから」(小林氏)
 木下氏が評価したのはJSOLが「幅広い領域に対して、自社のリソースでカバーする」と表明したことだった。
 「さまざまな事業活動を対象としたので、SAPだけでなく、物流現場で使うシステムなどの他のサブシステムも一気に導入することになります。他社からは、SAPの一部領域の開発が国内の他社への委託又は海外でのオフショア開発になる、物流システム導入のプロジェクト管理は行えない、などの提案もありましたが、NTTデータグループとしてのネットワークを駆使し、自分たちで責任を持ってすべてを賄えるとおっしゃっていただけたのはJSOLだけでした」(木下氏)。
 またJSOLが、東京と大阪の2本社体制を持っていた点も魅力的に映った。ライオンは西日本にも工場などの拠点を持っており、全体の導入対象は国内事業所や工場、流通センターや倉庫など多岐に及ぶ。 それらに一気に導入するとなれば2本社体制のほうが各拠点に対して目配りが利く。

カウンターパートと机を並べて行う議論が、プロジェクト成功の鍵に

 プロジェクト推進のために組織したのは両社の混成チームだった。プロジェクトのオーナーにはライオン側からは小林氏が、JSOLからもプロジェクトオーナーを立て、実務リーダーとしてのプロジェクトマネジャーもライオンとJSOLの両方で指名するといった、それぞれに2ヘッドの体制を敷いた。そのうえで領域ごとにライオン、JSOLからなる混成チームを作り、各チーム内にカウンターパートが存在するという体制を編成した。最終的に関わった人数は、ライオン側の専任メンバーが30人強、社外のパートナーを含めると延べ500名近くにも達するという大掛かりな体制となった。
 「机を並べてともに仕事することで、外部ベンダーではなく、一緒にやっていく仲間、ワンチームというマインドが生まれました。そういうマインドは品質に関わってくるので、非常に重要です。例えば、ある問題の解決策がひとつではなく、複数の選択肢があることもあります。そのようなときに活発な議論をして、答えを絞り込んでいく。細かいところに踏み込んで議論できる場を設けることで、生まれる成果は大きく違ってくるのです」(小林氏)

日本の製造業を変えるプラットフォームへ

 JSOLが参画してから35カ月にわたり開発したシステムが稼働に至ったのは、2022年5月。大規模な刷新であったにもかかわらず、商品を製造して運搬、販売し、売り上げを回収するという日々の業務サイクルに対して大きな支障はなく、新システムは無事に稼働した。
 「川上から川下までの事業すべてにわたって、一気通貫したデータで管理できるようになったことで、以前よりも細かい粒度でデータが見えるようになっています」(木下氏)
 例えば、生産コストを分析する際、従来は工場ごとのコストを比較しつつ、もっとも安価な生産方法を検討してきた。しかし、生産と物流を総合的に分析すれば、「消費者に商品を届けるまでのコスト」もわかるようになる。
 新規サービスに進出する場合でも、蓄積されたデータを総合的に分析することで損益の予測に役立てられる可能性も見えてきた。
 「ポートフォリオが複雑化し、売り方、販売チャネルなどのオプションも増えてきています。新しいビジネスを始めるときなどにも詳細な損益の予測を立てて、先見性を持って柔軟、かつ迅速に動ける基盤ができた点が、経営としては大きなポイントです。」(小林氏)
 「稼働以降、データが蓄積されてきたところですが、今後さらにデータが蓄積されれば、いろいろな切り口で分析し、高度な経営判断に生かせるでしょう。このときこそが、このプロジェクトの真価が現れると期待しています」(木下氏)
 小林氏は業界全体を視野に入れ、「会社を超えたサプライチェーンの川上と川下の連携、業界の標準化などを進めていけば、個社の業務革新に止まらずに日本の社会インフラを変えていける大きな可能性も秘めています。多種多様な業界での経験、知見を持っているJSOLには、日本を変えていくという展望を持って取り組んでいただきたいと思いますし、私たちもそのための新しいデファクトスタンダードの確立に協力していきたいと考えています」と総括した。

左から)ライオン株式会社 木下 陽児氏、小林 健二郎氏、JSOL 増田 裕一、宮下 雄介

企業情報

ライオン株式会社様 ロゴ

会社名

ライオン株式会社

本社所在地

〒111-8644 東京都台東区蔵前1-3-28

創業

1891年10月30日

設立

1918年09月

事業内容

ハミガキ、ハブラシ、石けん、洗剤、ヘアケア・スキンケア製品、クッキング用品、薬品等の製造販売、海外現地会社への輸出

WEBサイト

(2023年06月現在)


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