機器の常時監視をリモートで可能に。IoTを駆使した新サービス「EBARAメンテナンスクラウド」をJSOLとともに開発

荏原製作所は、住宅やビル、工業施設などの給排水設備から、エネルギー施設、水道施設での各種循環設備まで、ポンプやファンといった機器の提供や保守を通して、創業以来、110年の長きにわたって人々の暮らしを支えてきた。昨今では、顧客企業の多くが、専門的な機器点検を行える技術者不足という課題に直面している。こうした中、機器の安定運用を支えるためにJSOLとともに昨年開発したのが、「EBARAメンテナンスクラウド」だ。

キーワード

業務

業種

課題・解決・効果

課題

  • 機器に対する顧客のニーズや利用状況を集約、解析し、アフターサービスの充実を図りたい

  • 多くの顧客企業で経験豊富な技術者不足が課題に。適時適切なメンテナンスを可能にしたい

  • 顧客ニーズを反映させやすい、柔軟な開発、運用体制を構築したい

  • 潜在的な顧客ニーズを見つけ出し、新たなビジネスを創出したい

解決

  • IoTセンサーとクラウドを組み合わせ、遠隔で機器の状態を監視する「EBARAメンテナンスクラウド」を開発

  • 荏原製作所がセンサーユニットとアプリ、JSOLがクラウドシステムを担当する柔軟な開発体制を構築

導入効果

  • 機器に取り付けたセンサーが24時間態勢で状態を監視(モニタリング)。異常の兆候を見逃さずに報告

  • 機器の状況を数値化することで、担当者の経験に左右されないサポート体制を実現

  • フェーズを区切りアジャイル的に開発を進め、さまざまな意見を反映させやすい柔軟な開発体制をJSOLと構築

顧客との接点を強化し、より社会に貢献できる機器を創造する

 1912年の創業以来、長年にわたり日本のインフラを支えてきた老舗ポンプメーカー、荏原製作所。「熱と誠」を創業の精神に掲げ、ポンプや送風機、冷凍機、冷却塔まで幅広く取り扱う同社が近年注力しているのが、顧客目線の徹底によるサービスの向上だ。
 ソリューション事業推進部 ソリューションシステム開発課長の山田泰雅氏は、「中期経営計画E-Plan 2025では『顧客の真の課題に真摯に向き合い、潜在的な顧客要求をも把握したソリューションを提供する』ことに注力することにしました」と説明する。

左)株式会社荏原製作所 ソリューション事業推進部 ソリューションシステム開発課長 山田 泰雅氏
右)株式会社荏原製作所 ソリューション事業推進部 ソリューションシステム開発課 内田 拓馬氏

人材不足の時代、IoTを使った新しいメンテナンスサービスを

 その一環として2022年11月に開始した新たなサービスが、機器を常時監視し、メンテナンスに生かす「EBARAメンテナンスクラウド」である。これは、ポンプや送風機などの機器にセンサーユニットを取り付け、機器の温度や振動を監視し、そのデータをクラウドに収集、蓄積するものだ。これにより、いつでも機器の状態をダッシュボードから確認できるようになる。異常の兆候が確認された際には、利用企業の担当者、および荏原製作所のアフターサポートにメールなどの手段で通知される。
 新サービスの開発の狙いとして山田氏は「当社は創業以来、ポンプなどの機器を販売するメーカーとして事業を展開してきました。これからは、さらなる未来を見据え、お客さまとの接点を強化することで、ビジネス領域をさらに拡充したいと考えたのです。適時適切にメンテナンスの必要性をご提案することができれば、その先にあるお客さまの潜在的なニーズにも近づくことができ、新たなビジネスの創出にもつながります」と語る。
 「EBARAメンテナンスクラウド」を開発した背景には、社会全体の人手不足に伴い、ものづくりに関連する業界全体においても、機器の点検の人手不足という問題も挙げられる。ソリューション事業推進部 ソリューションシステム開発課の内田拓馬氏は「人手が足りないだけではなく、顧客企業は総じて、点検という専門業務に必要な技量や経験を持った技術者を集めることが難しくなっているのが実情です 」と説明する。
 通常、機器点検というと、技術者が定期的に機器のある場所に足を運び、目視で異常がないかを確認したり、手で触れるなどして温度や振動を確認したり、 聴音棒で運転音を聞いて異常を探していたが 、それには担当する技術者の経験と技量が重要になってくる。異常の兆候を見逃せば、突然機器が壊れて動作しなくなり、業務に影響を及ぼしかねない。
 「故障してからの修理、交換となれば、対応に時間がかかってしまいます。しかし、異常の兆候を早めに検知できれば、故障する前に適切なタイミングでの修理や交換が可能となり、業務への影響を最小限に抑えられます。また、故障対応による機会損失も防げます。
 お客さまがお困りになる前に、当社からの適時適切なサポートを可能とする「EBARAメンテナンスクラウド」の普及促進は、当社にとって重要なミッションといえます」(内田氏)

「開発を外注しても、運用保守は自社で行いたい」という要望に応えたJSOL

 「EBARAメンテナンスクラウド」の開発は、試行錯誤の連続だった。
 「当初は、機器にセンサーユニットを取り付け、お客さま自身がスマートフォンアプリから点検するという想定で開発に着手しました。しかし、それだと異常が検知されたら、その内容をお客さまから当社に連絡していただく必要があります。また、お客さまがアラートを見逃してしまう可能性もあります。やはり、当社のスタッフがリモートで監視し、兆候が見られたら当社のほうから速やかにご連絡するという仕組みでなければ、お客さまのメリットにつながらないのではないかと考えたのです。ただし、それを実現するためには、データをクラウド上で管理することが必要でした」(山田氏)
 センサーユニットやスマートフォンアプリは社内やグループ会社での開発が可能だったが、クラウド上でデータを収集、蓄積するシステムについては、この分野のノウハウを持つベンダーの協力が必要と見込まれた。そして、開発協力を依頼したのがJSOLだった。
 「IoT関連技術の進歩は早く、それに追従していくのは大変です。そこで、お客さまの声を聞きながら柔軟にサービスを拡充していけるようにと考えました。しかし、完全外注する請負契約だと、ちょっとした仕様変更をする際にも、新規開発に関する要件の確認、発注、契約などに時間がかかってしまいます。また、センサーユニットは当社の得意分野でもありますし、システムの運用保守は当社でやりたいという考えもありました。そこで、当サービスを導入していただいたお客さまに対して、共同で動いてくれるパートナーのような形でシステム開発をしてくれるところを探したところ、要望にマッチしたのがJSOLでした」(山田氏)
 「Web、クラウドの開発経験の浅い当社には至らないところも多かったと思います。しかしJSOLは『モノではなくサービスを売るという新しい取り組みに挑戦するのですから、一緒に要件を詰めながら、お客さまに喜んでいただける良いものを作っていきましょう』と寄り添ってくれました」(内田氏)
 そして2021年、先行していたセンサーユニットやスマートフォンアプリは荏原製作所、クラウド部分をJSOLが担当するという共同プロジェクトが動き出した。
 「JSOLに依頼したのはデータ収集・蓄積といったクラウド部分ですが、センサーやアプリケーションとも連携するので、単純に切り離せるものではありません。JSOLのメンバーはIoTの経験や知識も豊富で、クラウドとつながるセンサーについても十分に理解したうえで開発を進めていただけたので、頼もしく感じました」(内田氏)
 開発は「プロトタイプを作り確認する」というサイクルを何度も回しながら進めていった。
 「最初の要件定義で決めきれないことが見えていましたので、フェーズを区切って少しずつアジャイル的に進めていきました。実際に取り掛かってみると、フェーズが進む過程で新しい発見や気付きがあり、周囲からの意見も変わってきます。そのような知見を反映させながら、次の一歩へと進めていきました。手探り状態で進める中で、いろいろな意見を柔軟に取り入れることができましたし、JSOLにとっても手戻りが少なく着実に前進できたという点で、双方にWin-Winな形になりました」(山田氏)

システム構成図

システム構成図

トラブルの発生を防ぎつつ、新規の修理受注にもつながる

 2022年11月よりサービスを開始した「EBARAメンテナンスクラウド」は、利用企業からの評価も高い。まず、ポンプなどの利用企業では定期的な巡回を減らせ、機器の点検を行う人材不足の解決につながった。加えて、振動や音という数値に表れるデータを使い、しきい値を超えたときにアラートを表示させる方式に変えたことで技術者の技量の差の問題も解消した。
 また、同じデータを荏原製作所のスタッフが同時にチェックしている点も大きい。顧客企業が見逃していたり、点検の手が回っていないところもチェックし、「そろそろ消耗部品を点検したほうがいいのでは」と連絡を入れたこともある。
 異常を検知した荏原製作所のスタッフが訪問し、工場内にある別の機器を見て「これは点検されていないようですが、監視対象に入れては」と提案したこともあった。
 このような活動を通して、「知らないうちに故障していた」「故障して機器が停止してしまった」ということが減り、故障の兆候が見えた段階で修理や交換の対応をすることで停止時間を最小限に抑えることができる ようになった。荏原製作所にとっても、アフターサービス事業が増えたという効果も表れている。
 「今後は収集したデータを基に稼働状況を分析し、機器の寿命が延びてお客さまの支出が最小限で済むようなメンテナンス計画の提案もできるようになればと考えています。そして、お客さまとの距離がさらに近くなり、より多くのニーズや困りごとをお聞きし、機器の改良、サービスの充実に生かしていきたい」と山田氏は総括した。

左から、株式会社荏原製作所 内田 拓馬氏、山田 泰雅氏、JSOL 後藤 和也、砂子 一徳、矢野 憲作

企業情報

株式会社荏原製作所様 ロゴ

会社名

株式会社荏原製作所

本社所在地

〒144-8510 東京都大田区羽田旭町11-1

創業

1912年(大正元年)11月

設立

1920年(大正9年)5月

事業内容

建築・産業カンパニー、エネルギーカンパニー、インフラカンパニー、環境カンパニー、精密・電子カンパニー

WEBサイト

(2023年09月現在)


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