JSOLの「データ活用アクセラレーションプログラム・データ活用プロフェッショナルサポート」を活用して、レーシングカーの異常検知においてAIを実用化

レーシングカーの開発競争にしのぎを削るモータースポーツ。トヨタカスタマイジング&ディベロップメントでは、レース時の車両の異常検知にAIの利用を検討していたが、自社で構築したAIの評価に確信が持てず、実際のレースでの利用には慎重になっていた。そこでJSOLの「データ活用アクセラレーションプログラム・データ活用プロフェッショナルサポート」を活用し、AIプロフェッショナルのノウハウや知見を活用した。それにより、同社は自社で構築したAIに確信を持つことができ、実際のレースでのAI利用に踏み切った。

キーワード

業務

業種

課題・解決・効果

課題

  • レース時には大量のセンサーデータを確認し、車両の異常箇所をチェックする必要があるが、レースを優位に進めるためには異常箇所のチェックを効率化・時間短縮する必要があった

  • 効率よく短時間で異常箇所をチェックするため、社内のメンバーで異常検知のためのAIの構築を行ったが、AIの専門家ではないため構築したAIの品質に確信が持てなかった

解決

  • JSOLがデータ分析の専門家として分析・品質評価した結果を提供し、トヨタカスタマイジング&ディベロップメントが構築したAIの品質を保証した

  • 加えて、JSOLがデータ分析に関するノウハウや、高精度、かつ短時間で学習が完了するAIの構築方法を提供した

導入効果

  • 担当者自身が、評価結果に確信を持って業務利用を開始することができた

  • 課題の解決に加え、一部のパーツについては誤検知率が50%程度から数%になった他、複数のパーツにおいて異常の誤検知率を低減することができた。その結果、誤検知への無駄な対応時間を削減し、走行性能の向上にむけた対応時間の創出につながった

レーシングカーに搭載したセンサーのデータ分析にAIの力を

 レーシングカーがサーキットを回りながらスピードを競い合うモータースポーツ。その最前線でパーツ、エンジンの開発や技術サポートなどを行っているのが、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(以下、TCD)だ。
 「レーシングカーの開発には特有の難しさ、そして醍醐味があります」と語るのは、TRD本部 MS開発部 車両開発室 室長の池谷悠氏である。
 「一般車の開発にかける期間が約3年であるのに対し、レーシングカーは1年程度の短期間で完成させるのがほとんどです。その後も月1回のサイクルでレースに参加し、その成績から課題を洗い出し、翌月のレースに向けた改善作業を進めていきます」と池谷氏は車両開発室のミッションについて説明する。
TRD本部 MS開発部 車両開発室 第3開発グループ 上級主任の吉山翔氏は「私たちエンジニアはレースという舞台には立ちませんが、ライバルを上回るパーツやシステムを生み出すことで、裏方としてチーム全体の優位性の向上に寄与しています」と語る。
 高速で走行するレーシングカーは消耗も激しく、万全の状態を保つには最新の車両状態を常に正確に把握する必要がある。その効率化、迅速化を目指して検討を開始したのが「AIの利用」だった。
 「レーシングカーには、各パーツの動作状況や消耗の程度などを把握するために、いくつものセンサーを搭載しています。そのセンサーから取得したデータを分析して問題なく走行できることを確認するのですが、その分析にAIを利用しようと考えました」(池谷氏)
 例えば、レース直前には、車両状態をチェックするために大量のセンサーデータを短時間 で見る必要があり、専門のスキルを持ったエンジニアのマンパワーが求められていた。
 「見落としがあると、最悪の場合リタイアすることにもなりかねませんので、とても重要な作業です。そこでAIを利用すれば、短時間に効率よく異常を見つけられるのではないかと検討したのです」(池谷氏)
谷氏)

左)株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント TRD本部 MS開発部 車両開発室 室長 池谷 悠氏
右)株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント TRD本部 MS開発部 車両開発室 第3開発グループ
  上級主任 吉山 翔氏

AIの専門知識を備えたJSOLとの共同研究を実施。常に「プラスα」を提案する姿勢を高く評価

 当時のTCDには「AIを使ったデータ分析に対するノウハウ、専門性が足りなかった」と吉山氏は振り返る。
 「以前からAIには注目していたので、独学でスキルを蓄積していました。そのため当社でもAIの構築は可能でしたし、得られた予測結果も一定の精度を得られていました。しかし私たちはあくまで、ものづくりのエンジニアであり、AIの専門家ではありません。ここから先に進み、実際のサーキットで利用するには、分析の正しさを客観的な視点からも担保すること、例えばAIを熟知した専門家から見ても正しいと太鼓判を押されるような分析を行う必要があったのです」(吉山氏)
 そのような悩みを抱えていた時に、TCD社内の他部門から紹介されたのがJSOLの「データ活用アクセラレーションプログラム・データ活用プロフェッショナルサポート」だった。JSOLは、AIエンジニア、データサイエンティスト、データコンサルタントなどから成るデータサイエンスチームを持っている。「データ活用アクセラレーションプログラム・データ活用プロフェッショナルサポート」とは、このチームが持つノウハウを使ってAIのデータ分析・活用を支援するというものである。
 この出会いをきっかけに2021年冬ごろからJSOLとの試験的な共同研究が始まった。第1弾として「ステアリング油圧の異常検知」の分析をJSOLに依頼した。TCDは自分たちで行った手法や結果を伝えず、JSOLは独自に分析を行ったが、JSOLの出した結果はTCD内部のものと近かった。
 これを受けて吉山氏は「異なるアプローチで同様の結果が出たことで、私たちの分析手法が間違っていなかったという確信が持てました。そこでJSOLと共に次の段階へ踏み出そうと決め、2022年に正式にサービスを契約しました」と説明する。
 前段の試験的な共同研究では2種類のセンサーデータを用いたが、正式契約後は、タイヤへの荷重、車高、ダンパーの減衰など、多種多様なセンサーデータを対象として分析し、異常検知の高度化、解釈性の実現に向けた取り組みを始めた。
 そしてTCDとJSOLの間で定期的なミーティングを開催し、より最適な分析の手法、解釈性などの検討を重ねていった。例えばAIには機械学習、深層学習などいくつかの手法があるが、「最適な手法は?」「短時間で処理が終わる手法は?」などを検証、議論していく。手法の違いにより、処理時間が10分の1にまで短縮できるケースもあった。
これらのやりとりを通して、「ミーティングに参加する人だけでなく、その裏側でJSOLの多くの専門家が関与していることが感じられました」と吉山氏は語る。
 TCD社内でも関わる担当者が増え、開発部門だけでなく、レースの現場でAI分析ツールを利用する担当者や、サーキットにおける走行のスピードアップに取り組んでいる担当者もこの取り組みに参加するようになった。
 「JSOLは常にこちらの課題に寄り添った『プラスα』の提案をしてくれました。私たちだけでは思い至らなかったことを提案してくれることで、『この技術を使っていけば、異常検知以外にも用途は広がっていくのではないか』という期待を抱けました」(吉山氏)

誤検知率やモデル構築時間、処理時間を大幅に低減。レースにおける安全性とスピードアップへ

 取り組みを進めていくにつれ、誤検知率やAI構築時間の低減という効果も見えてきた。センサーの種類によっては当初50%程度の誤検知が発生していたが、JSOLと改修を進めるうちに数%にまで低減した。
 さらにはレーシングカーのスピードアップへの貢献にも期待が寄せられている。
 「AI利用には二つの目的があります。一つは現在取り組んでいるクルマが安全に機能しているか、正常に走行できるかを判断すること。もう一つはクルマを速く走らせるための判断材料としてセンサーデータを活用することです」(池谷氏)
 「これまでは膨大なセンサーデータを人間の目でチェックしていましたが、AIを使えば自動的、かつ短時間で異常をピックアップできます。その分、人間はクルマのスピードアップに意識を向けられます」(吉山氏)
 また現在は車両に装着したセンサーを中心にAI利用を深めているが、エンジン、あるいは工場内の設備における異常検知にも広げられるのではないかと、AIのさらなる可能性に期待しているという。
 「AIに関するノウハウや知見が蓄えられ、いろいろな処理、モデルの構築が簡単かつ短時間にできるようになると、他のメンバー、他の部門でも利用しやすくなります。いずれはAIに関する知識をそれほど習得していない現場の担当者でもAIを構築できるようになるはずです」(吉山氏)
 このようにJSOLと共にAI利用に向けた取り組みを着実に進めていく中で、TCDはJSOLのオープン・フラット・フェアな姿勢を高く評価している。
 吉山氏は「データサイエンスの分野では、オープンな情報開示、フラットでフェアな形での議論、スキルや知見の多寡に関係なく意見を言い合える関係が非常に大事だと思っています。JSOLは資料や報告が丁寧であり、ディスカッションしている中でも、フェアに話を聞いてくれます。こちらが間違ったことを言っている時でも忖度なく指摘してくれます」とJSOLへの信頼を述べ、「モータースポーツの面白さは、厳しさと表裏一体。その最先端のテクノロジーを活用しながら共に進んでいくパートナーとして、JSOLには今後とも期待しています」と語った。

左から、株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント 池谷 悠氏 吉山 翔氏、JSOL 鈴木 俊輔、木村 尚登

企業情報

株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント様 ロゴ

会社名

株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント

所在地

〒222-0002 神奈川県横浜市港北区師岡町800番地

設立

2018年(平成30年)4月1日

業務内容

国内・海外向け特装車両、モータースポーツ車両、輸出用日本生産車への用品架装・特装に関わる企画・開発・生産・販売等

WEBサイト

(2023年12月現在)


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