電帳法対応サービスからDX基盤へと進化する「 PATPOST 」。サービスを停止させない段階的なシステム全面刷新で品質と開発アジリティー、拡張性を向上
オリックスは2023年、新規事業としてAI-OCRを活用した法人向けの文書管理サービス「PATPOST」をリリースした。当初は改正電子帳簿保存法への迅速な対応を重視し、開発スケジュール最優先で取り組んだという事情もあり、サービス基盤のアーキテクチャーなどに改善の余地を残していた。そこで同社は、PATPOSTのさらなる発展に向けてJSOLを新たな開発パートナーに迎え、サービスを稼働させたまま段階的にシステムを全面刷新する大規模なプロジェクトを敢行。クラウドのベストプラクティスを取り入れたリアーキテクティングにより、開発アジリティーと品質の劇的な向上を実現し、さらなる事業成長に向けた強固な基盤を確立した。
課題・解決・効果
課題
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スピード優先の初期開発により、オブザーバビリティー(可観測性)の観点で改善の余地を残していた
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将来的な事業拡大を見据え、クラウドインフラのコスト最適化を検討していた
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より迅速な機能拡張を実現するための環境や仕組みづくりが必要だった
解決
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サービスを停止させることなく、保守・運用を行いながら裏側のシステムを段階的に刷新していく、難易度の高いリアーキテクティングのアプローチを採用した
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最新クラウドサービスのベストプラクティスを取り入れ、特定のベンダー技術へのロックインを排除したオープンな技術構成へ移行した
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高い技術力とマネジメント力を持つJSOLをパートナーに迎え、受注者と発注者の壁を取り払った「ワンチーム」としてプロジェクトを推進した
導入効果
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AI-OCRエンジンやフロントエンドの刷新によりUI/UXを改善し、ユーザーの利便性が大きく向上した
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将来的な機能拡張を見据えた高い開発アジリティーを獲得した
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営業現場の要望を数カ月で実装できる体制が整い、PATPOSTの商品力強化や顧客との関係強化につながった
電帳法対応のスケジュールを重視した結果、システム基盤の品質に課題が
法人金融や不動産、事業投資、環境エネルギーなど幅広い分野を展開しているオリックスは、祖業であるリース事業を出発点として、継続的に事業領域を拡大してきた。新しい価値の創出に注力する姿勢は現在も変わっておらず、近年立ち上げた注目のサービスの一つに、法人向けの文書管理サービス「PATPOST」がある。スキャンしたアナログ文書などをAI-OCRや生成AIによりデータ化できるほか、社内システムとのAPI連携などによりさまざまなデータをセキュアな環境で一元的に保管し、必要な情報を抽出・検索して容易に活用できる点が大きな特徴だ。
PATPOSTは着実にユーザー企業数が増加していたものの、事業が拡大するにつれ、さらなる成長に向けた改善の必要性も浮き彫りとなった。PATPOSTの成長をドライブすべく、リリース後にプロジェクトに加わったテクノロジー戦略チーム 主任の牧野 友 氏は、当時の状況を次のように説明する。
「2023年にサービスをローンチした当初は、改正電子帳簿保存法(2022年1月施行、2023年末の宥恕措置終了に伴う電子取引データの保存義務化など)への対応を支援するツールとしての価値を訴求していました。そのため、スケジュールを優先しスピード重視で作り上げた部分が多く、本番運用のためのオブザーバビリティー(可観測性)という視点では改善の余地がありました。加えて、将来的な事業拡大を見据えたAWSのコスト最適化や、より迅速な機能拡張を実現するためのアーキテクチャーのアップデートも検討事項となっていました」
そこで同社は、PATPOSTのサービス提供は継続しつつも、新たな開発パートナーと共にシステム基盤や運用・拡張開発の体制を抜本的に構築し直すという決断をした。

左)オリックス株式会社 法人営業本部 デジタル戦略推進室 テクノロジー戦略チーム長 坪内 亮 氏
中)オリックス株式会社 法人営業本部 デジタル戦略推進室 テクノロジー戦略チーム 主任 牧野 友 氏
右)オリックス株式会社 法人営業本部 デジタル戦略推進室 テクノロジー戦略チーム 主任 木村 晃基 氏
初期段階から課題を深く共有し「大変さを楽しめる」パートナーシップを構築
新たな開発パートナーの選定に当たっては、複数のベンダーにRFP(Request For Proposalの略=提案依頼書)を提示。最終的にJSOLを選定した。テクノロジー戦略チーム 主任の木村晃基氏は「JSOLの提案は、AWSのベストプラクティスを取り入れた具体的なアーキテクチャーが提示されていましたし、担当者のクラウドに関する知見の深さも他社と比べて群を抜いていました。私たちが抱える課題に対する解像度が非常に高く、提案してくれた解決策は納得感があるものでした」と語る。
また、オリックスはRFPで、アーキテクチャーを根本から見直しPATPOSTに必要な機能を横断してマネジメントできる「テックリード」の確保や、プロジェクトマネジメント面の能力も重視していた。この点でもJSOLの評価は高かったという。「JSOLはAWSのソリューションアーキテクトなど、この要望に応えられる優秀な人材や開発リソースをしっかりと提示してくれましたし、開発マネジメントの能力や実績も十分だと判断しました」
こうして、JSOLを新たなパートナーとして、PATPOSTの既存サービスを一切停止させることなく裏側のシステム基盤を段階的に作り変えていくという難易度の高いリアーキテクティングプロジェクトが2024年にスタートした。まずはJSOLが保守業務から参画して、新体制による「現状のキャッチアップ」を開始。その後、JSOL側の開発メンバーを徐々に増員し、既存ベンダーからの引き継ぎを行い、開発体制を段階的に移行した。
システムのリアーキテクティングについては、開発体制の移行と並行して、まずは既存ベンダーの独自技術を使っていたAI-OCRエンジンをオープンな最新技術に刷新。続けて2025年には、フロントエンドの全面改修に取り組んだ。
これらのプロセスをスムーズに進められた最大の要因は、オリックスとJSOLの強固なパートナーシップだ。テクノロジー戦略チーム長の坪内 亮 氏は「受発注に基づく立場の壁をなくし、一つのチームとして動くことを心がけました。JSOLも、『要件の背景を理解したい』と事業サイドとの打ち合わせを積極的に求めてくれるなど、前のめりで応えてくれました」と評価する。牧野氏も、「大変なプロジェクトですが、初期段階から課題を深く共有し、同じ方向を見て、大変さを楽しめる関係性が築けていたと感じます」と振り返る。
UI/UXの劇的改善と、ビジネスの成長を加速させる開発体制の確立
段階的なシステム刷新の成果は着実に現れている。特に直近のフロントエンドの全面改修は、UI/UXの劇的な向上につながった。牧野氏は「一般的なWebアプリケーションとしてのルーティング(URL設計)やコンポーネントの標準化などに取り組んだことで、サービスの使いやすさは格段に上がりましたし、今後の機能拡張に耐え得るアジリティーの高い基盤が完成した手ごたえがあります」と力を込める。高いアジリティーを備えた新たなシステム基盤を生かし、外部システムとのAPI連携や柔軟な料金プランへの対応など、事業のスケールに必要な機能も既に実装済みだ。
システム基盤が健全化したことで、PATPOSTのビジネス面でも好循環が生まれている。「オリックスの営業担当者が、商談でお客さまから聞いた要望を開発側にフィードバックし、数カ月後には新機能として実装できる体制になりました。こうした体制をアピールできるのは営業活動における大きな武器ですし、PATPOSTの商品力強化につながっています」と木村氏は語る。現在、PATPOSTの利用企業は約2200社に達しており、顧客基盤の拡大が加速している。
オリックスとJSOLはシステム開発の枠を超えたビジネスパートナーへ
当初は電帳法対応を支援するツールとしてスタートしたPATPOSTだが、「現在はお客さまの多様な業務データを蓄積し、次の業務プロセスへとつなげる『コンテンツレイク』のようなDX基盤を目指して機能拡充を進めています」と坪内氏は話す。その基礎をより盤石にすべく、2026年以降、データモデルの根本的な見直しを含むデータベースの全面改修へと歩みを進める計画だ。
JSOLとの連携は、システム開発の枠を超え、ビジネス領域にも広がっている。「JSOLにはPATPOSTの販売パートナーとしても積極的に活動してもらっており、同社が強みを持つEDIのお客さまに対して、FAXや手書き伝票の処理をPATPOSTで自動化するクロスセルの提案なども進んでいます。特定の業務課題に深く刺さるソリューションの共同開発も検討しており、今後もJSOLには我々の事業領域にどんどん踏み込んできてほしいと考えています」と坪内氏は期待を込める。牧野氏も「今後は最新の技術トレンドを取り入れた『尖った提案』で、私たちがブレーキをかけたくなるくらいアクセルを踏んでほしい」と熱く語る。PATPOSTのさらなる飛躍に向け、両社の共創はますます活発化しそうだ。

左から、オリックス株式会社 木村 晃基 氏、牧野 友 氏、坪内 亮 氏、JSOL 織裳 慎一郎、桝井 武史、五十嵐 翔平
企業情報

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会社名
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オリックス株式会社
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所在地
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東京本社 〒105-5135 東京都港区浜松町二丁目4番1号 世界貿易センタービル南館
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設立
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1964年4月
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事業内容
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多角的金融サービス業
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WEBサイト
(2026年05月現在)
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