株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 川島 祐治)と株式会社JSOL(本社:東京都中央区、代表取締役社長 前川 雅俊)は、国立研究開発法人情報通信研究機構(東京都小金井市、理事長 徳田 英幸)、国立大学法人大阪大学(大阪府吹田市、総長 西尾 章治郎)と共同で、ニューロフィードバック(注1)技術を応用した英語学習支援サービス開発(以下、本研究開発)を開始しました。
 本研究開発では、「学習者が自ら気づくことができない脳情報を本人にフィードバックし、適切な方向に変化させることにより、英語の音素を聞き分ける能力を向上させることができる」という情報通信研究機構と大阪大学が研究開発している基礎技術(注2)等に基づき、実際の英語学習サービスに、脳活動計測とそのフィードバックを導入することを目指します。2017年10月より英語学習者(ビジネスパーソン)を対象に、その有効性の検証やアプリケーション開発を行っていきます。
 この技術を活用し、「脳」そのものへのアプローチすることによって、これまで日本人学習者にとっては困難かつ挫折しがちな「リスニング能力の向上」に関して従来の学習方法ではなし得なかった学習成果が期待できます。 2018年4月以降、JSOLを主体としたNTTデータグループにて、科学的エビデンスに基づいたニューロフィードバックによる英語学習支援のサービスをトライアル提供していく予定です。
 なお、本研究の一部は、大阪大学COIプログラム(注3)の支援を受けて行います。

背景・活動の経緯

 グローバル化の流れの中で、小学校における英語必修化など英語教育への注目を集まっています。一方で、日本人の英語力の低さの中でもリスニング能力に関しては課題が指摘されています。(TOEFL リスニングスコア(30点満点、アジア36ヶ国中の順位):韓国21点(8位)、中国19点(19位)、日本17点(27位)(注4))。リスニング力の基礎になると考えられる音素の聞き取りに関しても、日本の大学生を対象とした研究ではLとRの違いを聞き取れるのが42%(注5)と低く、「母国語にない周波数の音素を聞き取る」というリスニングの第一段階で躓いている人が多いのが現状です。
 そこで、注目されているのがニューロフィードバックと呼ばれる脳活動の情報を本人にフィードバックすることによるトレーニング方法です。2017年6月に、情報通信研究機構と大阪大学が実証した「RとLの音の違いに反応する脳活動をニューロフィードバックで強化する技術」を用いることで、日本人が不得意とするRとLの聴き分け能力が向上することが示されました。
 本研究開発では、当該技術が実験室外の実環境かつ、実際の学習者(ビジネスパーソン等)を対象にした際にも有効であるか検証します。さらに、対象とする音素のバリエーションを増やすなど、現実的な英語学習の広範なニーズに対応した教材プログラムとしての開発を進めて行きます。こうしたニューロフィードバックを活用したトレーニングが実用化できれば、短期間で語学基礎力習得が求められる場面などにおいて、簡易かつ効率的な学習法となることが期待されます。

  • 本研究開発はNTTデータ経営研究所が、組成・運営している応用脳科学コンソーシアム(注6)内の「個育研究ワークショップ(2016年度)」をきっかけとして企画された新規事業開発となります。

期待される英語学習へのニューロフィードバック利用による利点

  • 意識的に音素の聞き分けができていない状態でも脳情報を利用することでリスニング能力を向上させることができる

  • 短期間、短時間で効果が得られる(本研究開発で検証)

  • 脳情報をフィードバックする手法にゲーミフィケーションを取り入れ、楽しく英語学習をすることができる(今後検証)

  • 点数化されない/意識できていない能力向上度合を脳波によって評価し、学習者にフィードバックすることで、モチベーションを維持させる(今後検証)

実証実験の概要

2017年10月以降、下記の検証を実施予定です。

検証項目

  • 3日間程度のニューロフィードバック学習で英語リスニング能力向上が見られるかどうか。

  • 実際のオフィスでトレーニング実施が可能かどうか。

  • ビジネスパーソンを対象に効果が見られるかどうか。

実験実施内容

 実際のオフィス環境で、社員を対象として、短期間のニューロフィードバック技術を用いた英語学習トレーニングによって、英語リスニング能力が向上するかどうかの実証実験を行います。(図)

ニューロフィードバック学習のイメージ

トライアルサービスについて

 上記実証実験の成果として効果が実証されれば、2018年4月以降、実際のソリューションとしてトライアルサービス事業を展開していく予定です。英語教育の義務化が叫ばれている現状ですが、その恩恵を受けていない現在のビジネスパーソンの中には、英語のリスニング力に問題を抱える人は多いと推測されます。また、そのようなビジネスパーソンは、簡易かつ効率的に英語を学習できる本サービスのメリットを最も享受するものと考えます。ビジネスで英語を使用しなければならないが、学習する時間がない、などの悩みを抱えるビジネスパーソンをまずは対象としてトライアルサービスを展開し、将来的には、学校や学習塾等で学生も対象としていく予定です。

今後について

 本サービスは、JSOLが主導して開発を進め、2018年度より本格的な商用化を目指します。また、ニューロフィードバック学習におけるフィードバック方法にゲーミフィケーションを取り入れ、学習者がより楽しんでトレーニングできるように改良する予定です。さらには、聴き分けの程度だけではなく、英語理解度についても脳波で評価し、これまで可視化できていなかった英語能力向上度合を学習者にフィードバックすることでモチベーションを維持できるように、サービスの改良を目指します。
 最先端の脳情報通信技術を応用することで、日本人が苦手とする英語を、苦手であることを意識させることなく、楽しくかつ効率的に学習することができる本サービスは、従来の方法ではなし得なかった効果的かつ画期的な語学学習支援サービスとなると考えます。

(注1)脳波計測等により、現在の脳の状態を、視覚などを通して本人にフィードバックする技術。
(注2)2017年6月15日発表 脳波を利用することで無意識に英語のリスニング能力が向上~RとLの音の違いに反応する脳活動をニューロフィードバックで強化する技術を開発~

(注3)大阪大学COIプログラム

(注4)Test and Score Data Summary for TOEFL iBT Tests January 2016-December 2016 Test Data
(注5)菅野康祐(2004), "日本人 EFL 学習者の英語子音の知覚について", 外国語教育フォーラム,第3号
(注6)応用脳科学コンソーシアム
URL http://www.keieiken.co.jp/can/index.html

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