取引先マスターをJ-MDMに刷新して、データガバナンスの推進へ
見込み顧客と既存顧客を同一マスターで管理し、集計や分析を効果的に

日本古来の技術と最先端のテクノロジーを駆使した建設業に加えて、不動産、新エネルギーなどのエンジニアリング、海洋や宇宙の開発を行うフロンティアといった新しい事業への挑戦など、幅広く事業を展開してきた清水建設。そのビジネスの中核となる建設業のデジタル化に向けての取り組みのひとつとして、マスターデータ管理(MDM)があった。そこに活用したのが、JSOLのマスターデータ管理ソリューション「J-MDM」である。

課題・解決・効果

課題

  • 建設業 のデジタル化に向けて、見込み顧客と既存顧客を同一マスターで管理し、営業活動の段階から受注に至るまでデータの流れを共通コードで管理したい

  • 企業情報データベースを活用することで、データの精度・鮮度のさらなる向上を図りたい

  • 取引先の社名変更や企業統合、通称社名と正式社名混同などの修正作業の負荷を軽減したい

解決

  • JSOLのマスターデータ管理ソリューションJ-MDMの導入

  • 新マスター管理業務に向けた運用体制の整備

導入効果

  • データ品質の向上
    -企業情報データベースとのAPI連携により、入力ミスが防止され、データ不整合が発生する頻度が大幅に軽減された

  • 管理業務の効率化と早期定着化を実現
    -業務システムとの連携により 、システム利用者 による企業コードの申請が簡略化
    -マスターデータのクレンジング機能により、取引先の住所変更なども自動で対応可能に
    -利用部門の業務見直しを推進

建設業のデジタル化推進に向けて、マスターデータ管理の刷新を

 人々が暮らす居住空間 から、高速道路などの交通インフラまで、建築事業や土木事業を通して日本社会を支えている清水建設。同社が推進しているのが、「ものづくり(匠)の心を持ったデジタルゼネコン」と掲げた中期デジタル戦略2020 「Shimz デジタルゼネコン」だ。そのコンセプトのひとつである「ものづくりを支えるデジタル」では、さまざまなデータを蓄積して活用するデータマネジメント基盤や、日常業務に活用する業務システム基盤などによる、ものづくりを支援する環境の提供を目指している。

 清水建設では、建築物、建物用途、得意先、支払先、住所、業種などをそれぞれマスターとして管理し、さまざまな業務システムで活用してきた。例えば、顧客企業を管理する場合、マスターで企業ごとに固有番号(コード)を割り当てることで、同じ社名の別会社があっても識別できるようにする。
「さまざまな業務データの基礎としてマスターが存在します。マスターは、各種業務システムの中で血液のように流れていくもの。正しく整備しておかないといくらシステムを整備し、業務データをきれいにしても、どこかで不整合を招いてしまいます」とデジタル戦略推進室 情報システム部 事務系システム開発グループの坂口 優太氏は説明する。
 刷新に向けて最初に手を付けたのは、得意先や支払先に関する取引先マスターだった。従来は受注した段階でコード発番していたために、取引が始まっていない見込み顧客は登録されていなかった。デジタル戦略推進室 情報システム部 事務系システム開発グループ グループ長の川田 彰信氏は「見込み顧客、既存顧客を統合した集計や分析、データ活用が難しいという問題を抱えていました。それをひとつのマスターとして管理、活用できれば、ビジネスが円滑になるだけでなく、情報資産としての価値を高められるようにもなります」と語る。
 また、マスターの正確性の維持や、そのためのメンテナンスにも課題を抱えていた。長期にわたる取引の過程では、取引先が企業名を変更したり、拠点を移転することもある。さらに通称社名が広まっている企業の場合、正式社名と通称社名とで二重登録されるケースもあり、同じ会社が異なる会社として登録されることもあった。それらを担当者が人力で修正していた ため、マスターデータの品質が低下していた。

 ものづくりを支えるデジタルの要件を満たすMDMには、「見込み顧客と既存顧客を統合できるしくみ」「正確性の維持」「メンテナンス」といった課題をすべて解決する機能が求められていたのである。

左)清水建設株式会社 デジタル戦略推進室 情報システム部 事務系システム開発グループ グループ長 川田 彰信氏
中)清水建設株式会社 デジタル戦略推進室 情報システム部 事務系システム開発グループ 坂口 優太氏
右)清水建設株式会社 デジタル戦略推進室 情報システム部 事務系システム開発グループ 太田 麻美氏

必要な機能を備え、スピーディーに開発できるパッケージ型のJ-MDM

 MDMの検討の際に候補に挙がったのが、JSOLのマスターデータ管理ソリューション「J-MDM」だった。J-MDMとは、マスターを登録、管理し、他の業務システムと連携させて活用するパッケージだ。
 坂口氏は「当初は海外製品やスクラッチのMDMも検討していました」と当時の状況を説明する。しかし、マスターデータ管理は、清水建設 独自の業務というよりも、一般的な業務のため、「スクラッチで開発するより、必要な機能がパッケージとして提供されている製品のほうが安定しているうえに、工期とコストを抑えられると思いました。中でもJ-MDMは、カスタマイズやアドオンがしやすく、他の業務システムとも柔軟に連携できる点が長所に映りました。また日本企業であるJSOL自らSIを提供してくれることから、きめ細かく柔軟に対応してもらえそうだという期待を感じました」と選定理由を語った。
 また、JSOLが川田氏、坂口氏へ 開発エンジニアを交えての製品デモを行ったことも、「J-MDMに対する信頼が高まった要因」という。
 「パッケージに合わせて業務を変えるとなると利用部門が抵抗を感じることも予想されましたが、『J-MDMなら利用部門の要望にも柔軟に応えられそうだ』という手応えを感じました。また実際に開発を担当するエンジニアが、デモの場で技術的な説明をしてくれたことで、『この人たちなら任せられる』という安心と、技術力、信頼を感じることもできました」(川田氏)

J-MDM概念図

J-MDM概念図

企業情報データベース(=法人企業データベース「LBC」、提供:株式会社ランドスケイプ)

企業情報データベースとの連携で、使い勝手と正確性を向上

 導入、開発時にはJ-MDMにいくつかの工夫が施された。まずは、すでにサービスとして活用していた企業情報データベースとのAPI連携だ。これにより正式な企業名や住所などは企業情報データベース を参照し、候補をリストアップして自動的に入力できるようになった。この連携について坂口氏は、「データの品質維持にも役立っている。会社名を通称社名で入力してもデータベース側で通称社名 と正式社名が紐づいた辞書をもっており、正式 社名 がリストアップされるので、異なる社名での二重登録も避けられるようになった」と説明する。
 顧客管理、営業案件管理といった社内の業務システムと連携するAPIも組み込んだ。普段使っている業務システムから検索し、コードが登録されていない企業であれば、J-MDMの登録申請画面を呼び出して申請できるようにしたのである。
 さらに定期的なクレンジング機能も組み込んでいる。取引先の社名や住所の変更 などがあれば夜間に企業情報データベース を参照して自動的に最新データへと更新するようにした。
 あわせて清水建設では業務の見直しも行ったが、そこで役立ったのがJ-MDMの強みでもあるワークフロー機能だ。例えば「案件登録の時点でマスターにコードがなければ、新規に申請する」という業務フローを新たに作ったが、全国に約1000人以上もの営業担当がいるため、それぞれが申請を始めると混乱が生じることも予想された。そこで営業担当とマスター管理者の間に「 各拠点の営業企画の担当」 を置き、申請を承認するというチェック業務も新設した。これらの新しい業務フローに対する対応も、ワークフロー機能が充実しているJ-MDMではスピーディーに開発できた。
 本番稼働後も、利用部門からの要望を受けて、J-MDMに改良が加えられている。デジタル戦略推進室 情報システム部 事務系システム開発グループの太田 麻美氏は、「国際支店からは、コード申請画面の項目名などを英語表記 にしてほしいという声が届きましたが、そういった要望にも迅速に、スムーズに対応できました」と柔軟性の高さを述べた。
 「入力画面というUIだけではなく、バリデーション(入力内容のチェック機能)もすぐに実装できたのもパッケージであるJ-MDMの強みです。前述したワークフロー機能を含めて一から作ろうとしたらきっと大がかりになっていたと思います」(坂口氏)

業務の見直しからデータ活用に向けて

 2020年度下期からJ-MDMは本番稼働を始めているが、現在はまだ過渡期と呼べる状況にある。取引先マスターが直接接続しているのは三つの基幹システムだが、従来のマスターを使用しているシステムの数は小さなものを含め70にも及ぶ。 そのため、従来のコード体系とその仕組みを廃止してJ-MDMへ切り替えた場合、既存の業務システムに問題が生じるリスクも懸念された。そこで、従来のコード体系を維持しながら、J-MDMによる新たなコード体系と関連付けさせることで、システムごとに影響を確認しながら段階的にコードを置き換えていき、最終的にはJ-MDMに統一する方針だ。

 坂口氏は今回のプロジェクトについて「業務部門にも全面的に協力してもらいました。この取り組みをきっかけに長年にわたり続けてきた業務自体を見直すという意識が生まれたことは、私たちが推進するDXにもつながっていくと感じています。データ活用の主体となるのは私たちデジタル戦略推進室ではなく、業務を遂行するメンバーの一人ひとりです。すべての従業員が『ものづくりのためのデジタル』を意識できる環境を整えることで、当社のデータ活用はさらに進み、その先に当社のDXが実現できると考えています」と総括した。
 続けて川田氏も「今回は営業部門で利用されているシステムでの取引先に関するコード化と管理業務の見直しが進みましたが、今後は他のマスター、システム、部門へと広げていくことも想定しています。新規事業が生まれれば、それに応じてまったく新しいマスターも必要となるはず。JSOLには、他のマスター、重要なデータ管理やしくみ、データドリブンについての知見などに力を貸してもらえたらと思います」と抱負とJSOLへの期待を語った。

左から、JSOL 有澤 太、前田 洋、清水建設株式会社 太田 麻美氏、川田 彰信氏、坂口 優太氏

企業情報

清水建設株式会社様 ロゴ

会社名

清水建設株式会社

本社所在地

〒104-8370 東京都中央区京橋二丁目16番1号

設立

1804(文化元)年

事業内容

建築・土木等建設工事の請負(総合建設業)

WEBサイト

(2022年02月現在)


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